[PF052] キャリア教育・発達に関する研究(19)
自由記述に見る進路・職業選択に影響を与えた要因
キーワード:進路・職業選択, 職場体験, 重要な他者
1.問題と目的
進路決定の際,職場体験の有無が影響している(松下ら2010)。医療系の場合,文系からも理系からも選択可能であるため,他の専門職に比べ選択のパターンが多様にある。そこで本稿では,どの時期の経験が,まただれのアドバイスが進路選択や職業選択に影響を及ぼしているかについて自由記述をもとに明らかにすることを目的とする。
2.方法
2.1.調査対象および調査時期
医療系3年制専門学校で学ぶ2年生女子52名を対象に2015年3月に行った。
2.2.手続き
「中学・高校での職場体験」や「現在の進路選択」,「選択の際の重要な他者およびその影響」について職業意識の発達に関して作成されたレポートを中心に複数で検討した。
3.結果と考察
3.1.中学・高校の職場体験によるケース
・高校は繊維科だったため,繊維工場に就職する予定で繊維工場に職場体験に行ったが,向いていないとわかり,進路変更を考えた。
・職場体験で接客業を体験し,人と関わる仕事をしたいと思い,高校を選んだ。また,進路を決める際には,高校2年から通い始めた病院の方の勧めと高校の担任の先生に影響を受けた。
・中学のときは図書館司書に憧れ,図書館で職場体験を行い,職場関係の人だけではなく,外の人とも接点を持ちたいと思った。進路を決める時期に母親に今の仕事を勧められた。
3.2.高校の進路選択時における親・教師の影響
3.2.1.薬剤師,看護師から変更したケース
・高校で文系か理系かを選択しなければならないときに,文系が苦手だったため理系を選択した。その後,薬剤師を目指して勉強していたけれど,大学を決める際に,母親と相談し,薬剤師の道がなくなったため,今の職業に進路変更した。
・小学生の時に病気になった経験から薬剤師に憧れていたが,高校の進路選択の時期に母親に相談し,資格があり,再就職しやすい今の職業を勧められた。
・母親が看護師をしており,高校1年時より目指していたが,数学や化学が苦手なためあきらめた。母親がこの職業があることを教えてくれた。
・高校が人間福祉コースだったため,看護師を目指していたが,悩んでいるときに母親から小さいころの様子や体験などから今の仕事を勧められた。
なお,父親の影響を受けたものは1名だった。
3.2.2.美容師,保育士から変更したケース
・小学生のときに今の仕事をしたいと思ったけれど,中学生のときに友だちと同じ道の美容師になりたいと思った。しかし,高校で進路を決めるときに母親から人を支えてあげて,人を笑顔にさせる。そして,あなたが一番お世話になり,自分の体験談を話せる職業のほうがいいと勧められ,また今の仕事を目指すようになった。
3.2.3.工業高校から医療系へ変更したケース
・親から今,大学に行ったからと言ってよい就職先があるとは限らないので,資格があるといいよと言われた。
3.2.4.商業高校から医療系へ変更したケース
・商業高校で学び,資格取得が大きな自信になると感じていた。加えて,姉二人が二人とも国家資格の仕事に就いている。中学のときは医療事務に就きたいと考えていたが,資格の有無でモチベーションも全く違うと知り,今の仕事に決めた。
・進路を決める際,ポスターを見て直感的に決めたが,高校の担任が勧めてくれた体験に行ったことで,同じ目標を持っている人がいることで意識も高まった。また,先生が応援してくれていることも感じられたことはいい影響だった。
3.3.自己決定したケース
・高校時代は医療に憧れを持っていたが,進路を決める時期に,人の死が恐いために,人の死とは頻繁に出会うことはない今の仕事を選択した。
・高校の担任に接客業に付きたいことを伝えると店員を勧めてきたが,納得がいかず断った。そのとき,自分の中で「技術のある接客」を目指していたからだ。
4.まとめ
本研究でも職場体験に影響を受けたものが多かった。希望した仕事が理想とは異なっていたのでちがう職業を探すことにした生徒や体験した職場から将来の職業のヒントを得た生徒が多く,中学・高校時代の職場体験は有効だと評価している。
また,高校の進路選択時に担任に相談し,その影響を受けた生徒もいるものの,母親の影響を受けている生徒のほうが多かった。したがって,高校の進路選択時には身近な親も子どもの進路についての情報を得ておく必要がある。
進路決定の際,職場体験の有無が影響している(松下ら2010)。医療系の場合,文系からも理系からも選択可能であるため,他の専門職に比べ選択のパターンが多様にある。そこで本稿では,どの時期の経験が,まただれのアドバイスが進路選択や職業選択に影響を及ぼしているかについて自由記述をもとに明らかにすることを目的とする。
2.方法
2.1.調査対象および調査時期
医療系3年制専門学校で学ぶ2年生女子52名を対象に2015年3月に行った。
2.2.手続き
「中学・高校での職場体験」や「現在の進路選択」,「選択の際の重要な他者およびその影響」について職業意識の発達に関して作成されたレポートを中心に複数で検討した。
3.結果と考察
3.1.中学・高校の職場体験によるケース
・高校は繊維科だったため,繊維工場に就職する予定で繊維工場に職場体験に行ったが,向いていないとわかり,進路変更を考えた。
・職場体験で接客業を体験し,人と関わる仕事をしたいと思い,高校を選んだ。また,進路を決める際には,高校2年から通い始めた病院の方の勧めと高校の担任の先生に影響を受けた。
・中学のときは図書館司書に憧れ,図書館で職場体験を行い,職場関係の人だけではなく,外の人とも接点を持ちたいと思った。進路を決める時期に母親に今の仕事を勧められた。
3.2.高校の進路選択時における親・教師の影響
3.2.1.薬剤師,看護師から変更したケース
・高校で文系か理系かを選択しなければならないときに,文系が苦手だったため理系を選択した。その後,薬剤師を目指して勉強していたけれど,大学を決める際に,母親と相談し,薬剤師の道がなくなったため,今の職業に進路変更した。
・小学生の時に病気になった経験から薬剤師に憧れていたが,高校の進路選択の時期に母親に相談し,資格があり,再就職しやすい今の職業を勧められた。
・母親が看護師をしており,高校1年時より目指していたが,数学や化学が苦手なためあきらめた。母親がこの職業があることを教えてくれた。
・高校が人間福祉コースだったため,看護師を目指していたが,悩んでいるときに母親から小さいころの様子や体験などから今の仕事を勧められた。
なお,父親の影響を受けたものは1名だった。
3.2.2.美容師,保育士から変更したケース
・小学生のときに今の仕事をしたいと思ったけれど,中学生のときに友だちと同じ道の美容師になりたいと思った。しかし,高校で進路を決めるときに母親から人を支えてあげて,人を笑顔にさせる。そして,あなたが一番お世話になり,自分の体験談を話せる職業のほうがいいと勧められ,また今の仕事を目指すようになった。
3.2.3.工業高校から医療系へ変更したケース
・親から今,大学に行ったからと言ってよい就職先があるとは限らないので,資格があるといいよと言われた。
3.2.4.商業高校から医療系へ変更したケース
・商業高校で学び,資格取得が大きな自信になると感じていた。加えて,姉二人が二人とも国家資格の仕事に就いている。中学のときは医療事務に就きたいと考えていたが,資格の有無でモチベーションも全く違うと知り,今の仕事に決めた。
・進路を決める際,ポスターを見て直感的に決めたが,高校の担任が勧めてくれた体験に行ったことで,同じ目標を持っている人がいることで意識も高まった。また,先生が応援してくれていることも感じられたことはいい影響だった。
3.3.自己決定したケース
・高校時代は医療に憧れを持っていたが,進路を決める時期に,人の死が恐いために,人の死とは頻繁に出会うことはない今の仕事を選択した。
・高校の担任に接客業に付きたいことを伝えると店員を勧めてきたが,納得がいかず断った。そのとき,自分の中で「技術のある接客」を目指していたからだ。
4.まとめ
本研究でも職場体験に影響を受けたものが多かった。希望した仕事が理想とは異なっていたのでちがう職業を探すことにした生徒や体験した職場から将来の職業のヒントを得た生徒が多く,中学・高校時代の職場体験は有効だと評価している。
また,高校の進路選択時に担任に相談し,その影響を受けた生徒もいるものの,母親の影響を受けている生徒のほうが多かった。したがって,高校の進路選択時には身近な親も子どもの進路についての情報を得ておく必要がある。