The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PA(01-83)

ポスター発表 PA(01-83)

Sat. Oct 7, 2017 10:00 AM - 12:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 AM - 12:00 PM

[PA04] 絵本の絵の違いが読み聞かせ時の幼児の表情に及ぼす影響

大島みずき, 伊藤ゆりの# (群馬大学)

Keywords:絵本, 読み聞かせ, 幼児

問題と目的
 同じ物語であっても絵の画風の違いで絵本の印象は異なる。中澤・中道・大澤・針谷(2005)は幼児が漫画的で色調の明るい絵の絵本を好み,昔話独特の素朴な味わいを持ち,神秘的で不気味な絵の絵本を好まないことを明らかにした。一方で,若山・表(2011)は幼児が派手さのない写実的な絵本の方が明るく単純な絵柄のアニメ風の絵の絵本よりも共感を抱きやすいことから,物語に入りこみ,共感するためには落ちついた絵であることも重要であるとしている。では絵本における絵の違いは,読み聞かせをしている時の子どもの姿にどのように影響するのだろうか。本研究ではわかりやすく漫画的な画風(アニメ)と昔話独特で神秘的な画風(抽象)という2つの画風と,派手さに関わる色彩(カラー・モノクロ)という絵の違いが子どもの読み聞かせを聞く姿にどのように影響するかを検討することを目的とする。
方   法
調査対象児 年長児 52 名(男児26名,女児26名,平均年齢6歳5ヵ月)  調査方法 月齢に偏りがない4名の集団に読み聞かせを行った。画風(抽象,アニメ)×色(カラー・モノクロ)の異なる4種類の「カチカチ山」の絵本からランダムにグループに読み聞かせ,子どもたちの表情をビデオカメラで記録した。その後,個別面接調査でPVT-R,絵本の楽しさ,絵本を知っていたか注1,内容の理解(4問),想像力注2についての質問を行なった(注1,2については本発表では取り上げない)。
結果と考察
(1)PVT-R 語彙年齢について画風(2)×色(2)の2要因分散分析を行なった。有意な主効果及び交互作用は見られず,4群間に語彙力の差はなかった。
2)楽しさ・物語理解 絵本の楽しさ,物語の理解について,それぞれ画風(2)×色(2)の2要因の分散分析を行なった(table1)。楽しさ,理解力それぞれで有意な主効果及び交互作用は見られなかった。両得点とも高く,全群の幼児が読み聞かせを楽しみ,内容を理解していたことが示された。
(3)表情分析 対象児の絵本の読み聞かせ時の表情をシーンごとに2名の調査者がPos(肯定的)・Neu(中立)・Neg(否定的)に分類し表情得点を算出した(table2)。表情 (3)×画風(2)×色(2)の3要因分散分析を行なった結果,表情 (F(1.05)=285.37, p<.01,ηp2=.86),及び表情×画風(F(1.05)=4.97, p<.05, ηp2=.09)に有意な主効果及び交互作用が見られた。単純主効果の検定の結果,両画風で,Neu>Pos>Negの順で出現が多かった。また,Posは抽象的な絵よりもアニメ風の絵で多く見られ,Neuはアニメ風よりも抽象的な絵で多く見られた(Bonferroni, ps<.05)。Negについては差は見られなかった。アニメ風の絵はわかりやすく,読み聞かせに楽しく参加できたことからポジティブな表情が多くなり,抽象的な絵は内容を絵から理解することが難しく, ニュートラルな表情が多くなったのだろう。
(4)集中力 (3)と同様に集中力得点を算出し画風(2)×色(2)の2要因の分散分析を行なった(table2)。その結果,色の主効果に有意傾向が示された(F(1)=15.50, p<.10, ηp2=.07)。多重比較を行なった結果,モノクロの方がカラーよりも得点が高いことが示され(Bonferroni, p<.10),モノクロの方が,幼児は集中して物語に入り込める可能性が示唆された。