The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PA(01-83)

ポスター発表 PA(01-83)

Sat. Oct 7, 2017 10:00 AM - 12:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 AM - 12:00 PM

[PA08] 中学生を対象とした攻撃性適正化教育の試み

社会的情報処理モデルに基づくアサーティブネスの形成

濱口佳和 (筑波大学)

Keywords:攻撃性, 社会的情報処理, 教育プログラム

目   的
 文部科学省によれば,日本全国の国公私立の小・中・高等学校・特別支援学校での暴力行為の発生件数は5万3千411件,いじめ発生認知件数は22万4千540件であり,いずれも統計を取り始めてから過去最高の水準を維持している。特に小中学校での問題が多く,日本の児童・青年における攻撃性の適正化は我が国の教育界が直面する課題である。本研究では,中学生を対象に,大学教員と大学院生のグループによる短期の攻撃性適正化教育を行い,その効果を検証することを目的として行われた。プログラムは多くの中学生共通の問題であるいじめ問題を取り上げ,その有害性を説く教育講演と,個人の社会的情報処理過程に介入し,攻撃構想を抑制し,アサーティブな行動を産出できる方向への変容を目的とする授業によって構成された。この教育的介入の前後で,生徒の攻撃性がどのように変化するのか,定量的にとらえることとした。
方   法
(1)対象者:埼玉県南部の公立中学校1校の2年生1学級の生徒30名(男,女各15名)
(2)プログラムの構成:a.教育講演「人を傷つけない心をめざして」(45分) 2年生全員を対象に体育館で実施された。著者が演者となり,下記のトピックについてスライド映写をしながら話した。①人を傷つける行動,②いじめによる心の傷,③傷つける人にもやがて悲劇はやってくる,④人を傷つける心(ハラタチ虫とギャング虫),⑤人を傷つける子どもの悲劇,⑥人を傷つけないための方法・アサーション,⑦アサーションを高めるコツ b.授業「さわやか仲間づくりプログラム」45分×2回,中学2年1クラスのみ対象 著者がインストラクター,男女各1名の大学院生がアシスタントで実施。第1回 ①4種類のアサーション(説明),②仲間による挑発場面の反応(架空の挑発場面をイラスト提示し,漫画完成法で各自の応答行動を記述,③4種類の応答行動の解説(攻撃行動,怒り主張,アサーション,内気な行動)④挑発場面の応答行動の分類(②で産出した各自の反応を③に対応づける),④4種類の行動の結果を推測する(けんかになりやすい,気持ちをわかってもらいやすい,謝ってもらいやすい等),⑤4種類の行動の適切性評価 ⑥行動のまとめ 第2回 ①前回の復習,②挑発場面での応答的行動のクラス内の分布の説明,③第5の行動「ゆるし」についての説明,④第2の架空の挑発場面の提示,⑤社会的情報処理ステップの質問(怒り感情,関係維持目標,道具的目標,報復的目標,行動の結果予期(言語的攻撃,アサーション,関係性攻撃),⑥応答的行動(漫画完成課題)の産出と5種類の行動への分類,⑦各自の反応の集計表への転写,⑧攻撃的な思考の流れVSアサーティブな思考の流れ(筑波君の答えVS新座さんの答え),⑨まとめ(4つの教訓) 1回目2回目とも全員分のワークシートを回収し反応を集計。
(3)効果測定:教育講演1週間前と第2回授業1週間後に濱口他(2009)の中学生用能動的・反応的攻撃性尺度と柴橋(2001)の主張性・自己表明尺度の「肯定的自己表明」を対象クラス全員に実施。
結果と考察
(1)学級全員の分析:能動的・反応的攻撃性全下位尺度と肯定的自己表明尺度について35名のデータを対応のあるt検定実施。すべて有意差なし。
(2)攻撃性群ごとの分析:攻撃性と主張性の得点により4群構成。高攻撃群8名(男6,女2:攻撃性2尺度で+1SD以上,主張性-1SD以下)
攻撃傾向群13名(男6,女7,攻撃性1尺度で,+1/2SD≦攻撃性<+1SD かつ-1SD<主張性≦-1/2SD),高主張・低攻撃群6名(男0,女6,+1SD≦主張性 かつ1つ以上の下位尺度で-1SD≦攻撃性 かつ +1/2SD≦攻撃性が皆無),中間群8名(男3,女5, 上記3群に含まれない生徒)。群ごとに事前と事後の得点についてt検定実施。高主張・低攻撃群で外責的認知有意に増加。高攻撃群では有意ではないが,報復意図と欲求固執で1ポイント以上の低下が見られた。