The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PA(01-83)

ポスター発表 PA(01-83)

Sat. Oct 7, 2017 10:00 AM - 12:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 AM - 12:00 PM

[PA14] 攻撃行動を許容する認知の発達

小中学生における関連の異同

関口雄一 (山形大学)

Keywords:歪んだ認知, 攻撃行動, 小中学生

問題と目的
 攻撃行動を規定する認知の歪みのひとつとして,規範的攻撃信念(normative beliefs about aggression)が挙げられる。規範的攻撃信念とは,攻撃行動の許容度に関する認知である(Huesmann & Guerra, 1997)。Huesmannらによれば,規範的信念は行動に影響するだけでなく,一定の成果をあげた攻撃行動の遂行経験の蓄積によって,次第に修正されにくくなるという発達のメカニズムも想定されている。実際,低学年の児童では,攻撃行動が1年後の規範的信念を予測した一方で,高学年の児童においては,規範的信念が1年後の攻撃行動を予測することが示されている(Huesmann & Guerra,1997)。その後,規範的信念は,関係性攻撃や能動的攻撃,反応的攻撃などの細分化された攻撃行動についても検討されるようになった(Bailey & Ostrov,2008; Werner& Nixon,2005)。しかし,細分化された規範的信念の発達のメカニズムは,未だに検討されていない。そこで,本研究では,外顕的攻撃と関係性攻撃の2つの攻撃行動を許容する認知と実際の行動傾向の関連について検討する。特に小学生と中学生における結果を比較し,攻撃行動を許容する認知の発達メカニズムに関する示唆を得ることを目的とする。
方   法
(1)調査対象者 埼玉県,茨城県の小中学生693
名(小学生152名,中学生541名)であった。
(2)調査内容 (a)攻撃行動の捉え方尺度20項目。本研究で独自に作成した外顕的攻撃と関係性攻撃の許容度について問う質問項目で,「正当化」,「頻度・有用性」,「否定的認識」の3下位尺度から構成される。4件法であった。(b)小学生用P-R攻撃性質問紙(坂井・山崎, 2004)から「表出性攻撃」と「関係性攻撃」7項目ずつ計14項目を抜粋した。4件法であった。(c)中学生用攻撃行動尺度(高橋・佐藤・野口・永作・嶋田,2009)より「身体的攻撃」,「言語的攻撃」,「関係性攻撃」3項目ずつ計9項目,5件法であった。中学生のみに回答を求めた。
(3)調査手続き 調査協力の同意を得られた学校にて,1か月の間隔をあけて,2回の調査を実施した。学級ごとに一斉配布で調査を実施した。
(4)倫理的配慮 調査協力の同意における児童生徒の自己決定の権利,個人情報の保護等を質問紙表紙に記載の上,調査時に説明を行った。なお,本研究は著者の所属機関の研究倫理委員会の許可のもと実施された。
(5)調査時期 2016年6月-7月であった。
結果と考察
 まず,中学生に対して小学生用P-R攻撃性質問紙を使用した場合の妥当性を検討するため,中学生用攻撃行動尺度との相関係数・偏相関係数を算出した。その結果,中学生に対しても小学生用P-R攻撃性質問紙の「表出性攻撃」と「関係性攻撃」の2下位尺度を使用可能と判断した。
 Amos24を用いて共分散構造分析を行った。まず,2時点間の認知と行動の双方向性の因果関係を想定したモデルを構成した。続いて,得られたモデルに対する学校段階の調整効果を検討するため,小学生と中学生別にモデルの検証を行った後,多母集団同時分析を実施した。そして,小中学生のパラメータ間で有意な差がみられたパスに等値制約を置いたモデルと,制約を設定しなかったモデルの適合度の比較を行った。その結果,等値制約を設定しなかったモデルが採用された(Figure 1)。最終的なモデルの適合度は,χ2(50)=155.40(p<.001),GFI=.958,AGFI=.907,CFI=.977,RMSEA=.055であった。この結果から,小学生においては行動が認知を予測し,中学生では認知も行動を予測するようになる可能性が示唆された。