The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表 PA(01-83)

ポスター発表 PA(01-83)

Sat. Oct 7, 2017 10:00 AM - 12:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 AM - 12:00 PM

[PA17] フィードバックが洋楽器非熟達者の弦名譜の読譜習得過程に及ぼす効果

映像・音響および印教示の比較

後藤靖宏 (北星学園大学)

Keywords:箏, 弦名譜, フィードバック

 箏では弦名譜と呼ばれる楽譜が用いられている。弦名譜は縦書きで漢字で記すというように,一般的な五線譜とは異なる特徴を持っている。
 本研究では,弦名譜の読譜を習得するためにはどのようはフィードバックが有効なのかということを検討するために,洋楽器非熟達者に対して箏を演奏させる際,視覚的フィードバック,聴覚的フィードバック,および直接的なフィードバックの条件を設定し,その効果を検証した。
方   法
 被験者 洋楽器非熟達者45名(男性17名,女性28名,平均年齢19.8歳)であった。全員,学校における音楽教育以外に楽器を演奏したことがないか,あるいは過去の楽器の演奏経験が1年未満の者であった。被験者は,後述するフィードバック方法の各条件15名ずつに振り分けた。
 実験計画 2要因の混合計画を用いた。第1要因はフィードバック要因であり,演奏している手元の“模範”映像を見せる映像条件,“模範”音響のみを聴かせる音響条件,および1試行前のミスをした箇所に印をつけた楽譜を見ながら演奏を行わせる印教示条件の3水準であった。フィードバック要因は被験者間要因とした。第2要因は試行回数要因であり,箏で1曲を繰り返し演奏する回数を1回から6回までの6水準とした。試行回数要因は被験者内要因であった。
 装置 箏を一面使用した。また,演奏している被験者の手元を録画するためにHDDビデオカメラを使用した。
 材料 1分程度の単純な未知曲5曲であった。
 手続き 実験は1名ずつ,防音設備の整った部屋で行った。練習試行の後,1分休憩を挟みながら6回連続で同じ曲を演奏させた。映像条件には演奏の間に“模範”映像を再生すること,音響条件には“模範”音響を流すこと,印教示条件には,実験者が被験者の演奏を聴いて,間違えた箇所に○,間違えに気づき弾き直すことができた箇所には△で印をつけ,次の試行ではその楽譜を見ながら演奏するという手順を説明した。1回弾き終わるごとにフィードバックを挟みながら,6回連続で演奏させた。
結   果
 ミス回数を従属変数として分散分析を行った結果,各要因の主効果,および両要因の交互作用がが認められた(図1,検定結果は省略)。
考   察
 実験の結果,種類の異なるフィードバックを繰り返すことにより弦名譜の読譜習得への効果が変わることは,原則としてミス回数,および演奏にかかった時間といった直接的要素において確認された。具体的には,印教示によるフィードバックが有効であること,音響あるいは印の教示といった単独の情報のみに集中する方が効果的であること等の結果が得られた。音楽的要素においても試行回数間で上達度に差が見られる箇所があった。
 今後は練習する際のテンポを徐々に上げていくことや,フィードバックを与えるタイミングを変えること,あるいは1曲を区切って聴かせるなどといったように,フィードバック方法の改善を図ることにより,読譜取得に対してより効果的な方法を模索する必要があろう。本研究は北村友香(2014年卒業)との共同による。