The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PA(01-83)

ポスター発表 PA(01-83)

Sat. Oct 7, 2017 10:00 AM - 12:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 AM - 12:00 PM

[PA21] 小学生の家庭学習に関する教師および保護者による支援

学びへの動機づけと学習方略の視点から

橋本巌1, 杉本奈月2 (1.愛媛大学, 2.広島市立宇品東小学校)

Keywords:家庭学習, 動機づけ, 教師・保護者の支援

問題と目的
 児童の学習意欲や学習習慣の育成される場としては,学校だけでなく家庭も挙げられる。では,「家で勉強する」ということは子どもにとってどのようなことなのだろうか。家庭には学校のように学習をリードする教師はおらず,学習面だけではなく,生活面においても,時間割等の決められたタイムスケジュールに集団的に従うことの少ない中で行動する場である。全くひとりになって勉強する機会も家庭では存在し,そのような状況で児童は学習をいわば「自己調整」する必要がある。そのためには,児童の学習動機づけと学習の方略の獲得が重要であろう。
 一方で,従来,学習動機づけの内面化や学習方略獲得においては,教師や保護者による支援が影響すると示唆されているが,家庭学習に着目した心理学的研究はまだ少ないと思われる。橋本・杉本(2011)は,小学生の家庭学習の方略と,学習動機づけとの関連を探索的に検討し,自律的(内発,同一化)動機づけをもつ児童は,学習方略(特にメタ認知的方略)をより頻繁に使用する等が見出された。本報告では,その取り組みの一環で行われた調査結果を報告し,児童の家庭学習に関して小学校教師や保護者がどのような支援を行い,それらが学習動機づけと学習方略にどのような影響を及ぼすかを検討する。
方   法
1.調査参加者と手続き:松山市内のA小学校と広島市内のB小学校4,5,6年生計898名。有効回答者679名(有効回答率76.9%),うち4年229名,5年220名,6年生230名。男子331名,女子348名。担任教師に無記名式の質問紙を各学級の児童に配布し,回答に関する注意事項と,倫理的事項の説明に従って実施してもらうよう依頼。
2.質問紙の内容 (1)学習動機づけ尺度:伊藤(2000)による,「内発的」「同一化的」「取り入れ的」「外的」の4因子各3項目を想定した計12項目の尺度。4件法。(2)家庭学習における学習方略尺度:橋本・杉本(2011)で探索的に作成された17項目4因子を使用(伊藤(2009),橋本・西村(2004)等を参考)。4件法。「メタ認知的(α=.84)」「準備・プランニング(α=.67)」「満足の遅延(α=.58)」「外的リソース(α=.57)」の各方略。(3)教師による支援尺度:速水(1995)において児童の学習動機づけと高い相関のあった項目,シャンクら(2007),草野ら(2006)による実践事例の他,現職教員へのインタビューから作成。18項目。4件法。(4)保護者による支援尺度:速水(1995),秋田(2003)を参考に14項目を作成。4件法。
結果および考察
1.学習動機づけと方略使用の関係 学習動機づけを説明変数,学習方略を目的変数とした重回帰分析の結果,児童全体では「内発的動機づけ」「同一化的動機づけ」「取り入れ的動機づけ」は全ての学習方略に正の影響を及ぼし,特に「内発的動機づけ」と「同一化的動機づけ」は「メタ認知的方略」に対して最も強く影響を及ぼしていた。
2.支援の各尺度の因子分析(主因子法,Promax回転)(1)教師による支援尺度 以下の3因子を抽出:「情報提供・アドバイス(α=.82)」「宿題の工夫(α=.72)」「個別的配慮(α=.69)。
(2)保護者による支援尺度 以下の3因子を抽出:「自立性支援・価値づけ(α=.77)」「実際的援助(α=.70)」「受容的態度(α=.56)」。
3.教師による支援が動機づけおよび学習方略に及ぼす影響(重回帰分析) (1)動機づけへの影響:児童全体では,教師による支援の3因子全てが,内発的および同一化的動機づけに正の影響を及ぼした。「宿題の工夫」は内発又は同一化動機づけを各学年で促進し,5,6年では,個別的配慮が内発的動機づけに影響した。(2)学習方略への影響:教師による「宿題の工夫」は,児童全体において,全ての学習方略に正の影響を及ぼした。特にメタ認知的方略と準備・プランニング方略は,どの学年でも,教師の全体への支援(情報提供・アドバイスや宿題の工夫)により促進されていた。
4.保護者による支援が動機づけおよび学習方略に及ぼす影響(重回帰分析)(1)動機づけへの影響:児童全体では,保護者による支援全ての因子が,内発的および同一化的動機づけに正の影響を及ぼした。「自律性支援・価値づけ」と「実際的支援」は各学年別でも,いずれかの自律的動機づけに影響していた。(2)学習方略への影響:児童全体では,「実際的援助」(保護者が児童と一緒に学習や準備を行い助言すること)が全ての学習方略使用を促進していた。学年別でも同様であった。また満足の遅延,外的リソース活用に対しては,一部自律性支援の影響も見られたが,保護者の「実際的援助」が主であった。