10:00 AM - 12:00 PM
[PA47] 大学新入生の社会的能力と友人関係特徴
Keywords:大学新入生, 友人関係, 社会的能力
問 題
大学への進学は,新たなキャンパス環境および人間関係への適応という課題に直面する場面でもある。特に良好な友人関係の構築は大学生活全般への適応と深く関連するが,この構築には個々の学生の社会的能力の違いが影響すると考えられる。本報告では,大学新入生の社会的能力(ここでは社会人基礎力を用いる)の違いと友人関係特徴との関係性について検討する。
方 法
2017年4月にF市内の短期大学にて集合調査を行った。調査参加者は1年生131名で全員女性である。質問紙は入学動機に関する質問に続いて,渡辺(2014)の大学生活適応感に関する分析結果から選定した大学生活尺度10項目,満野・今城(2016)の因子分析結果から選定した友人関係尺度12項目,牧野(2012)の同性友人に対するコミュニケーション・スキル尺度から選定した友人とのコミュニケーション尺度10項目,北島ら(2011)が作成した社会人基礎力に関する36項目より12の能力要素から各1項目を選定した社会的能力尺度12項目の計44項目で構成され,「まったく当てはまらない(1)」~「とても当てはまる(6)」の6段階評定で実施した。なお,本報告ではこのうち社会的能力と友人関係特徴および友人とのコミュニケーション特徴のデータに基づいた結果を報告する。
結果と考察
■社会的能力尺度の因子分析
社会的能力尺度12項目について因子分析(主成分法,バリマックス回転)を行った結果,第1因子は「課題の解決に向けた複数のプロセスを明確にし,‘その中で最善のものは何か’と検討し,それに向け
た準備をする」など6項目で「積極的働きかけ」
の因子(α=.867),第2因子は「状況に応じて,社会のルールにのっとって,自らの発言や行動を適
節に律する」など6項目で「柔軟な調整力」の
因子(α=.803)と名付けた。もともと社会人基礎力には3つの能力が想定されているが,ここでは2因子が見出された。
■友人関係尺度に関する因子分析
12項目について因子分析(主成分分析,バリマックス回転)を行った結果,満野・今城(2016)と同じ4因子構造が得られた。第1因子「親密」(α=.817),第2因子「楽しさ志向」(α=.828),第3因子「気づかい」(α=.721),第4因子「距離感」(α=.733),各々3項目で構成された。
■友人とのコミュニケーション尺度に関する因子分析
10項目について因子分析(主成分分析,バリマックス回転)を行った結果,第1因子は「自分の考えを伝えたいとき,きちんと表現できる」など6項目で「自他調整力」の因子(α=.849),第2因子は「あまりよく知らない友人とでも,すぐに会話が始められる」など4項目で「会話力」の因子と名付けた(α=.815)。
■社会的能力と友人関係特徴との関係
社会的能力の因子分析で得られた2因子の各評定平均値を基準としてHi,Loに分け,2因子の組み合わせで4群を設けた。この4群間の違いを検討するために,友人関係尺度および友人とのコミュニケーション尺度の下位尺度の平均得点に対して1要因の分散分析を行った。結果をTable1に示す(積:積極的働きかけ;柔:柔軟な調整力を表す)。これによると,HiHi群はLoLo群に比べて友人と深い内容の話をする一方,友人に甘えすぎないなど相手との距離感にも気を配っていた。気づかいや楽しさ志向に4群間の差はなかった。また,友人とのコミュニケーションの会話力はHiHi群がLoLo群に比べて高かったが,自他調整力に関しては,社会的能力の「柔軟な調整力」因子が影響することが示された。これらより,社会的能力によって友人関係のあり方に違いがあることが示唆されたため,今後,他の指標も含めて詳細な検討を行いたい。
大学への進学は,新たなキャンパス環境および人間関係への適応という課題に直面する場面でもある。特に良好な友人関係の構築は大学生活全般への適応と深く関連するが,この構築には個々の学生の社会的能力の違いが影響すると考えられる。本報告では,大学新入生の社会的能力(ここでは社会人基礎力を用いる)の違いと友人関係特徴との関係性について検討する。
方 法
2017年4月にF市内の短期大学にて集合調査を行った。調査参加者は1年生131名で全員女性である。質問紙は入学動機に関する質問に続いて,渡辺(2014)の大学生活適応感に関する分析結果から選定した大学生活尺度10項目,満野・今城(2016)の因子分析結果から選定した友人関係尺度12項目,牧野(2012)の同性友人に対するコミュニケーション・スキル尺度から選定した友人とのコミュニケーション尺度10項目,北島ら(2011)が作成した社会人基礎力に関する36項目より12の能力要素から各1項目を選定した社会的能力尺度12項目の計44項目で構成され,「まったく当てはまらない(1)」~「とても当てはまる(6)」の6段階評定で実施した。なお,本報告ではこのうち社会的能力と友人関係特徴および友人とのコミュニケーション特徴のデータに基づいた結果を報告する。
結果と考察
■社会的能力尺度の因子分析
社会的能力尺度12項目について因子分析(主成分法,バリマックス回転)を行った結果,第1因子は「課題の解決に向けた複数のプロセスを明確にし,‘その中で最善のものは何か’と検討し,それに向け
た準備をする」など6項目で「積極的働きかけ」
の因子(α=.867),第2因子は「状況に応じて,社会のルールにのっとって,自らの発言や行動を適
節に律する」など6項目で「柔軟な調整力」の
因子(α=.803)と名付けた。もともと社会人基礎力には3つの能力が想定されているが,ここでは2因子が見出された。
■友人関係尺度に関する因子分析
12項目について因子分析(主成分分析,バリマックス回転)を行った結果,満野・今城(2016)と同じ4因子構造が得られた。第1因子「親密」(α=.817),第2因子「楽しさ志向」(α=.828),第3因子「気づかい」(α=.721),第4因子「距離感」(α=.733),各々3項目で構成された。
■友人とのコミュニケーション尺度に関する因子分析
10項目について因子分析(主成分分析,バリマックス回転)を行った結果,第1因子は「自分の考えを伝えたいとき,きちんと表現できる」など6項目で「自他調整力」の因子(α=.849),第2因子は「あまりよく知らない友人とでも,すぐに会話が始められる」など4項目で「会話力」の因子と名付けた(α=.815)。
■社会的能力と友人関係特徴との関係
社会的能力の因子分析で得られた2因子の各評定平均値を基準としてHi,Loに分け,2因子の組み合わせで4群を設けた。この4群間の違いを検討するために,友人関係尺度および友人とのコミュニケーション尺度の下位尺度の平均得点に対して1要因の分散分析を行った。結果をTable1に示す(積:積極的働きかけ;柔:柔軟な調整力を表す)。これによると,HiHi群はLoLo群に比べて友人と深い内容の話をする一方,友人に甘えすぎないなど相手との距離感にも気を配っていた。気づかいや楽しさ志向に4群間の差はなかった。また,友人とのコミュニケーションの会話力はHiHi群がLoLo群に比べて高かったが,自他調整力に関しては,社会的能力の「柔軟な調整力」因子が影響することが示された。これらより,社会的能力によって友人関係のあり方に違いがあることが示唆されたため,今後,他の指標も含めて詳細な検討を行いたい。