The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PA(01-83)

ポスター発表 PA(01-83)

Sat. Oct 7, 2017 10:00 AM - 12:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 AM - 12:00 PM

[PA55] なりたい親についての研究ー共感性との関係

櫻井登世子 (法政大学)

Keywords:なりたい親, 共感性, 性差

問題と目的
 櫻井(2003)は,女子大学生を対象として,思春期の頃の母親に対する認識が将来「なりたい親」におよぼす影響について検討し,母親に対してポジティブな認識を抱いていた者は,自分も母親のような親になりたいと考えていることを示した。また,櫻井(2016)は女子大学生および男子大学生がどのような親になりたいと思っているか調査し,女子大学生のほうが子育てに対する思いが強く,従来のように家庭の役割分担として「子育て」は母親が担うものであると認識していることが示唆された。本研究では,「なりたい親」と内的要因との関係について検討する。内的要因として様々な特性があるが,対人関係と深い関わりがある人格的要因の一つである共感性を取り上げる。
方   法
調査協力者:東京都内の大学に通う大学生161名(男子59名,女子102名)。
質問紙:「なりたい親」について,櫻井(2003)が作成した質問紙を使用した。どのような親になりたいかについての質問紙は40項目からなっており,「全くそう思わない」から「非常にそう思う」までの7段階評定とした。
「共感性」について,登張(2003)が作成した質問紙を使用した。質問紙は30項目からなっており,「全くそう思わない」から「非常にそう思う」までの5段階評定となっている。
手続き:授業中に質問紙を配布し,学生の同意のもと集団で実施した。
結果と考察
「なりたい親」についての質問紙は,支配,寛容,均衡,溺愛の4因子構造になっている。尚,櫻井(2003)では第3因子を「放任」と命名していたが,因子を構成する質問項目は,ワークライフバランスに関する内容であるため,本研究では「均衡」と命名した。
 支配因子得点は,女子大学生のほうが男子大学生より高く,「親の言うことを素直に聞く子どもに育てたい」 「子どもが自慢したくなるような親でありたい」という思いが強いことが示された(t(159)=3.78,p<.01)。寛容因子得点についても女子大学生のほうが男子大学生より得点が高く,女子大学生のほうが男子大学生より「子どものこころを大切にしたい」 「子どもの考えをきちんと聞いてあげたい」と思っていることが示された(t(159)=3.67,p<.01)。均衡因子,溺愛因子に関しては,男子大学生と女子大学生の得点に差が見られなかった。この結果は,櫻井(2016)の結果を支持するものであり,現代の大学生は「子育ては女性が中心的役割を担う」と考えている。
 「内的要因」としての「共感性」との関係について,男子大学生は「共感性」の4因子(共感的関心,気持ちの想像,個人的苦痛,ファンタジー)のいずれとも「なりたい親」との間に相関がみられなかった。女子大学生は「共感性」の共感的関心因子と「なりたい親」の支配因子(r=.21,p<.05),寛容因子(r=.37,p<.01),溺愛因子(r=.30,p<.01)との間に有意な正の相関が見られた。また,「共感性」の気持ちの想像因子と「なりたい親」の寛容因子(r=.23,p<.05),溺愛因子(r=.24,p<.05)との間に有意な正の相関が見られた。強い相関関係ではないが,女子大学生は共感的関心が高く,相手の気持ちを想像しやすいほど,「子どもから尊敬され,目標にされ」 「子どものこころを大切にして考えをきちんと聞いてあげ」 「自分の時間を削ってでも子どもにつくし」 「子どもと何でも話せる関係でありたい」と思うことを示唆している。本研究の結果から,「なりたい親」と「共感性」との間には女子大学生のみに関係性があると考えられ,「なりたい親」に及ぼす内的要因についても性差があることが窺われた。「なりたい親」に及ぼす様々な要因について,今後さらなる検討が求められる。