10:00 AM - 12:00 PM
[PA58] 日本版SWPBIS(学校環境におけるポジティブな行動介入及び行動支援)の導入と効果に関する実践研究
日本版「Good Behaviorチケット」の開発と活用を通して
Keywords:生徒指導・教育相談, SWPBIS学校環境におけるポジティブな行動介入及び行動支援, 応用行動分析的アプローチ
問題と目的
日本において,障がいのある児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じて教育的支援を行うべきであるとされ(文部科学省,2003),アメリカでは,IDEA(Individuals with Disabilities Education Act ; 個別障がい者教育法)の改訂やNCLB(No Child Left Behind Act ; 落ちこぼれ防止法)の施行をきっかけに, SWPBIS (School-Wide Positive Behavioral Interventions and Supports ; 学校環境におけるポジティブな行動介入及び行動支援) が取り組まれている(バーンズ, 2013)。SWPBISとは,すべての児童生徒の学業や社会的能力,安全の促進に向けて,児童生徒が見通しをもってうまく活動ができ,一貫した結果が得られる学校環境を形成し,それによって問題行動を予防しようとするアプローチである(Horner et al., 2005;平澤・小笠原,2010)。具体的には,問題行動に対し,通常「注意」というネガティブな介入がなされてきたが,SWPBISにおいては,先行して,ポジティブな行動規範を示し,その行動がなされたときに,ポジティブな行動介入及び行動支援を行う。アメリカにおいては,すでにSWPBIS により効果を上げている(枝廣・松山,2015a;枝廣・松山,2015b;平澤,2015)
本研究では,日本版「Good Behaviorチケット」の開発と活用を通して,日本版SWPBISを導入し,その効果に関して,実践的に検証することを目的とした。
方 法
実践および調査協力校 A市立B中学校
参加者 中学生(800名程度(調査終了時))
教職員(50名程度(調査終了時))
実践および調査時期 2014年4月~2016年3月
手続き
1.管理職の下,B中学校の教育相談担当C教員と第一筆者が協働で,B中学校のニーズや理想とする生徒像などを丁寧に聞き取り,B中学校に対応した日本版SWPBISの構想を立てた。
2.第一筆者がB中学校のすべての教職員に対して日本版SWPBISに関する研修を実施した。
3.すべての教職員の合意の下,上記に基づき,「価値」およびそれに対応する「行動」をまとめた「期待される行動マトリックス」を作成した。
4.ポジティブなフィードバックを行うツールとして,B中学校のニーズ等に合わせた,第一筆者が日本版「Good Behaviorチケット」(Figure 1)を開発し,活用方法について,すべての教職員とともに協議し,実践を開始した。
5.各学期末に,データに基づき,実践を修正改良した。
調査方法
1.データの収集 教職員や生徒に対する負担を最低限にするために日常的に記録している「行動記録」や不登校生徒数などをデータとして収集した。
2.質問紙 学校適応感の変化を測定するため,山田・米沢(2011)の学校適応感尺度を用いた。また,規範行動の変化を測定するため,山田他(2013)の小中学生用規範行動自己評定尺度を用いた。
倫理的配慮 実践・調査前に,関係各位にインフォームド・コンセントを行い,同意を得た。
結果と考察
「行動記録」について,B中学校がニーズとしてあげていたネガティブな「行動」や不登校生徒数などの減少が認められた。また,学校適応感の教師サポート,規範行動の向上が認められた。これらの結果から,日本版SWPBISの導入について効果を支持するものと推察された。本実践および研究をもとに,他の小中学校での実践研究を展開し,その効果検証を行う必要がある。すでに,筆者らを含む,初等中等学校教諭・専門家等の研究チームにより,他校でも実践研究を進めている。
日本において,障がいのある児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じて教育的支援を行うべきであるとされ(文部科学省,2003),アメリカでは,IDEA(Individuals with Disabilities Education Act ; 個別障がい者教育法)の改訂やNCLB(No Child Left Behind Act ; 落ちこぼれ防止法)の施行をきっかけに, SWPBIS (School-Wide Positive Behavioral Interventions and Supports ; 学校環境におけるポジティブな行動介入及び行動支援) が取り組まれている(バーンズ, 2013)。SWPBISとは,すべての児童生徒の学業や社会的能力,安全の促進に向けて,児童生徒が見通しをもってうまく活動ができ,一貫した結果が得られる学校環境を形成し,それによって問題行動を予防しようとするアプローチである(Horner et al., 2005;平澤・小笠原,2010)。具体的には,問題行動に対し,通常「注意」というネガティブな介入がなされてきたが,SWPBISにおいては,先行して,ポジティブな行動規範を示し,その行動がなされたときに,ポジティブな行動介入及び行動支援を行う。アメリカにおいては,すでにSWPBIS により効果を上げている(枝廣・松山,2015a;枝廣・松山,2015b;平澤,2015)
本研究では,日本版「Good Behaviorチケット」の開発と活用を通して,日本版SWPBISを導入し,その効果に関して,実践的に検証することを目的とした。
方 法
実践および調査協力校 A市立B中学校
参加者 中学生(800名程度(調査終了時))
教職員(50名程度(調査終了時))
実践および調査時期 2014年4月~2016年3月
手続き
1.管理職の下,B中学校の教育相談担当C教員と第一筆者が協働で,B中学校のニーズや理想とする生徒像などを丁寧に聞き取り,B中学校に対応した日本版SWPBISの構想を立てた。
2.第一筆者がB中学校のすべての教職員に対して日本版SWPBISに関する研修を実施した。
3.すべての教職員の合意の下,上記に基づき,「価値」およびそれに対応する「行動」をまとめた「期待される行動マトリックス」を作成した。
4.ポジティブなフィードバックを行うツールとして,B中学校のニーズ等に合わせた,第一筆者が日本版「Good Behaviorチケット」(Figure 1)を開発し,活用方法について,すべての教職員とともに協議し,実践を開始した。
5.各学期末に,データに基づき,実践を修正改良した。
調査方法
1.データの収集 教職員や生徒に対する負担を最低限にするために日常的に記録している「行動記録」や不登校生徒数などをデータとして収集した。
2.質問紙 学校適応感の変化を測定するため,山田・米沢(2011)の学校適応感尺度を用いた。また,規範行動の変化を測定するため,山田他(2013)の小中学生用規範行動自己評定尺度を用いた。
倫理的配慮 実践・調査前に,関係各位にインフォームド・コンセントを行い,同意を得た。
結果と考察
「行動記録」について,B中学校がニーズとしてあげていたネガティブな「行動」や不登校生徒数などの減少が認められた。また,学校適応感の教師サポート,規範行動の向上が認められた。これらの結果から,日本版SWPBISの導入について効果を支持するものと推察された。本実践および研究をもとに,他の小中学校での実践研究を展開し,その効果検証を行う必要がある。すでに,筆者らを含む,初等中等学校教諭・専門家等の研究チームにより,他校でも実践研究を進めている。