10:00 AM - 12:00 PM
[PA61] 包括的支援アプローチ適用による断続欠席を呈する中学生への継続登校支援
不安・体力・社会性評価及び主張反応法適用条件の検討
Keywords:不登校, 中学生, 再登校支援
問題と目的
不登校児童生徒に対する行動療法の立場からの再登校支援方法に包括的支援アプローチ (小野, 2010) がある。包括的支援アプローチの課題として,評価の妥当性と信頼性及び技法選択の問題が挙げられる。そこで本研究では,包括的支援アプローチにおける不安,体力,社会性の客観的評価及び主張反応法適用条件に問題回避条件の変容を追加したものを不登校中学生に適用し,その効果と問題を検討した。
方 法
ステップ1支援関係の設定 ステップ2個別支援計画の設定 ステップ3再登校支援計画の作成と実施 (1)不登校状態の行動アセスメントの着眼点:①不登校発現前の行動特性,②不登校発現の経過,③その他,④再登校支援のための評価:体力(シャトルラン),学力,不安(唾液アミラーゼ),社会性(CLISP-dd)検査の実施,(2)行動アセスメントとしての情報統合,(3)個別支援計画の立案:①基礎的アプローチ,②不安障害,登校行動のシェーピング等の技法選択,③登校行動形成プログラムの実施 ステップ4再登校以降の支援計画の設定(1)再登校時及び再登校以降の行動アセスメント,(2)再登校以降の評価,(3)行動アセスメントとしての情報統合及び介入立案 ステップ5登校維持・活性化支援の実施 問題場面回避条件の除去後の主張反応法適用 ステップ6計画的支援の終結 ステップ7追跡調査
倫理的配慮 研究目的,内容の説明と同意形成の手続きが実施され,保護者から学会発表の同意を得た。
事例適用
ステップ1・2 A相談室に週1回程度通所する契約を結び,支援契約書を作成した。主担当が,発表者(以下,T),第2発表者がTの補助を実施した。ステップ3~5 対象:S, 男子, 14歳 (支援開始時,中学2年生) 主訴:断続的な不登校 不登校をめぐる情報:Sは内向的で知識を問う質問は回答可能であるが感想や自分の考えは回答不能であった。中学1年時,学校内の対人トラブル後,年間の出席すべき日数207日の内151日欠席し中2の4月に転校した。その後は週1日,頭痛を理由に欠席し家で静養していた。授業の発表場面を回避していた。Sは主要教科の成績は優秀であった。FIQは130程度(WISC-Ⅳ)であった。家庭をめぐる状況:父親,母親,S,弟2人の5人家族であった。Sが言語反応をすべき場面で母親が代弁する傾向があった。保護者は,Sの曖昧な欠席理由を容認していた。Sの起床は午前7時半,就寝は10時半であった。
シャトルランは,50回で学年相応であった。CLISP-dd実施の結果,「店で言葉を介して買い物ができる」等主張スキルに課題が見られた。唾液アミラーゼ実施の結果,相談室では5kIU/Lと低かった。行動アセスメントとしての情報統合と介入内容:Sの断続不登校行動は主張スキルの欠如が不登校発現前条件,問題場面回避による不安低減が不登校発現・維持条件と考えられた。体力,学力に問題がないことから,問題場面回避条件の消去とSの主張スキルの形成が連続登校維持に必要と考えた。そこで,介入1:Sの主張スキル獲得を目標とした相談室における主張スキルの学習,介入2:Sの学校場面でのスキル実行を目的としたTの保護者へのメールによる休ませ方指導(小野ら,1999),Sのスキル形成と実行支援を実施した。支援経過 介入1(X年9月30日~X+1年1月28日):合計7回,A相談室でセッションを実施した。介入2 (X+1年1月29日~3月24日):2月3日朝にSが体調不良を訴えたためTが保護者にメールにて休み方指導を実施した結果,Sは登校し発表が必要な授業に出席した。また同日にTがSにメールで報告スキルを形成した。ステップ6・7 Sは発表場面での発言可能となり継続登校となったことから相談終結とした(Figure 1)。予後良好であった。
考 察
社会性の欠如による断続的不登校の中学生に対して,包括的支援アプローチを適用し15週の介入で継続登校行動が形成され予後良好であった。主張反応法は対象の体力,学力に問題がないという適用条件があり,本事例は,この2要因の客観的評価を基に技法選択した。さらに,Sの問題場面回避の維持条件除去を実施したことが短期の継続登校形成に有効であった。この問題場面回避条件の除去は,主張反応法適用条件として必要であることが示唆された。今後は,対象生徒の学校場面における不安,社会的スキルの測定,評価が課題である。
不登校児童生徒に対する行動療法の立場からの再登校支援方法に包括的支援アプローチ (小野, 2010) がある。包括的支援アプローチの課題として,評価の妥当性と信頼性及び技法選択の問題が挙げられる。そこで本研究では,包括的支援アプローチにおける不安,体力,社会性の客観的評価及び主張反応法適用条件に問題回避条件の変容を追加したものを不登校中学生に適用し,その効果と問題を検討した。
方 法
ステップ1支援関係の設定 ステップ2個別支援計画の設定 ステップ3再登校支援計画の作成と実施 (1)不登校状態の行動アセスメントの着眼点:①不登校発現前の行動特性,②不登校発現の経過,③その他,④再登校支援のための評価:体力(シャトルラン),学力,不安(唾液アミラーゼ),社会性(CLISP-dd)検査の実施,(2)行動アセスメントとしての情報統合,(3)個別支援計画の立案:①基礎的アプローチ,②不安障害,登校行動のシェーピング等の技法選択,③登校行動形成プログラムの実施 ステップ4再登校以降の支援計画の設定(1)再登校時及び再登校以降の行動アセスメント,(2)再登校以降の評価,(3)行動アセスメントとしての情報統合及び介入立案 ステップ5登校維持・活性化支援の実施 問題場面回避条件の除去後の主張反応法適用 ステップ6計画的支援の終結 ステップ7追跡調査
倫理的配慮 研究目的,内容の説明と同意形成の手続きが実施され,保護者から学会発表の同意を得た。
事例適用
ステップ1・2 A相談室に週1回程度通所する契約を結び,支援契約書を作成した。主担当が,発表者(以下,T),第2発表者がTの補助を実施した。ステップ3~5 対象:S, 男子, 14歳 (支援開始時,中学2年生) 主訴:断続的な不登校 不登校をめぐる情報:Sは内向的で知識を問う質問は回答可能であるが感想や自分の考えは回答不能であった。中学1年時,学校内の対人トラブル後,年間の出席すべき日数207日の内151日欠席し中2の4月に転校した。その後は週1日,頭痛を理由に欠席し家で静養していた。授業の発表場面を回避していた。Sは主要教科の成績は優秀であった。FIQは130程度(WISC-Ⅳ)であった。家庭をめぐる状況:父親,母親,S,弟2人の5人家族であった。Sが言語反応をすべき場面で母親が代弁する傾向があった。保護者は,Sの曖昧な欠席理由を容認していた。Sの起床は午前7時半,就寝は10時半であった。
シャトルランは,50回で学年相応であった。CLISP-dd実施の結果,「店で言葉を介して買い物ができる」等主張スキルに課題が見られた。唾液アミラーゼ実施の結果,相談室では5kIU/Lと低かった。行動アセスメントとしての情報統合と介入内容:Sの断続不登校行動は主張スキルの欠如が不登校発現前条件,問題場面回避による不安低減が不登校発現・維持条件と考えられた。体力,学力に問題がないことから,問題場面回避条件の消去とSの主張スキルの形成が連続登校維持に必要と考えた。そこで,介入1:Sの主張スキル獲得を目標とした相談室における主張スキルの学習,介入2:Sの学校場面でのスキル実行を目的としたTの保護者へのメールによる休ませ方指導(小野ら,1999),Sのスキル形成と実行支援を実施した。支援経過 介入1(X年9月30日~X+1年1月28日):合計7回,A相談室でセッションを実施した。介入2 (X+1年1月29日~3月24日):2月3日朝にSが体調不良を訴えたためTが保護者にメールにて休み方指導を実施した結果,Sは登校し発表が必要な授業に出席した。また同日にTがSにメールで報告スキルを形成した。ステップ6・7 Sは発表場面での発言可能となり継続登校となったことから相談終結とした(Figure 1)。予後良好であった。
考 察
社会性の欠如による断続的不登校の中学生に対して,包括的支援アプローチを適用し15週の介入で継続登校行動が形成され予後良好であった。主張反応法は対象の体力,学力に問題がないという適用条件があり,本事例は,この2要因の客観的評価を基に技法選択した。さらに,Sの問題場面回避の維持条件除去を実施したことが短期の継続登校形成に有効であった。この問題場面回避条件の除去は,主張反応法適用条件として必要であることが示唆された。今後は,対象生徒の学校場面における不安,社会的スキルの測定,評価が課題である。