The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PA(01-83)

ポスター発表 PA(01-83)

Sat. Oct 7, 2017 10:00 AM - 12:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 AM - 12:00 PM

[PA77] 小学校6年生における中学校生活に対する期待と不安

三宅幹子 (岡山大学)

Keywords:学校適応, 移行

 小学校から中学校への移行は,子どもにとって大きな環境の変化を伴うものとなることが多く,中学校生活への期待とともに不安を抱く児童も少なくない。本研究では,地方都市近郊にある1つの中学校区内の小学6年生の児童を対象として,中学校生活に向けての期待と不安の実態を明らかにするとともに,不安の低減を目指して行われた,中学1年生による小学校訪問の取り組みの効果について検討することを目的とする。
方   法
 取り組みとその効果測定に参加した児童 X中学校区内にある3つの公立小学校の6年生97名。内訳は,A小学校55名,B小学校26名,C小学校16名。各小学校の特徴として,A校は3校の中では最も規模が大きく(一学年あたり2クラスの規模),中学校とほぼ隣接していることから他の小学校に比べると普段から中学校の様子を窺い知ることのできる環境にあるといえる。B小学校,C小学校は,一学年あたり1クラスの規模で,中学校からは距離が離れた地域にあった。
 取り組みの実施概要 2015年11月下旬に,X中学校1年生が各小学校を訪問し,各小学校の6年生に向けて,中学校生活についてのプレゼンテーションと児童・生徒の懇談会からなる取り組みを行った。各小学校には当該小学校からの進学者が訪問した。
 効果測定 取り組みの前後に,質問紙による効果測定を行った。事前調査は11月初旬,事後調査は11月下旬に実施した。調査内容は,「中学校生活に対する期待・不安尺度」(小泉,1995)の中から「対人関係・学習での期待」「部活動での期待・不安」「学習での不安」「自由への願望」に属する計25項目,および「中学校生活予期不安尺度」(南・浅川・秋光・西村,2011)の「対人的不安」に属する7項目を使用した。評定はいずれも4段階で求めた。
結果と考察
 中学校生活に対する期待と不安の学校差,性差 事前の各変数について,学校を要因とする分散分析,性差の検定(t検定)を行った結果,学校の効果は,「自由の願望」において有意で,多重比較(Tukey法)の結果,B校>C校, A校であった。「部活での期待」「学習での不安」においては有意傾向で,「部活での期待」はB校が他校より低め,「学習での不安」では,B校とC校がA校より高めの傾向が読み取れる。性差は,「学習での不安」「自由への願望」「対人的不安」において有意でいずれも女児のほうが高かった。
 取り組みの効果 各変数について,測定(2)×学校(3)の分散分析を行った結果,「対人関係・学習での期待」と「学習での不安」において測定の主効果が有意であり,いずれも事前よりも事後では低下していることが示された。事前の段階で,「対人関係・学習での期待」がかなり高いことを考え合わせると,取り組みを通して児童たちは,学習への不安が和らぐとともに,中学校生活の新鮮さが低下したり,中学校生活のイメージがより現実的なものに変化したのではないかと考えられる。

引用文献
小泉令三(1995). 教育心理学研究, 43, 58-67.
南・浅川・秋光・西村(2011). 教育心理学研究, 59, 144-154.