The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PB(01-83)

ポスター発表 PB(01-83)

Sat. Oct 7, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PB01] 幼児期における全体ー部分知覚と自己制御・実行機能との関連性

知覚発達から自己制御はわかるのか?

野田満1, 落合洋子#2 (1.江戸川大学, 2.江戸川大学)

Keywords:自己制御, 全体ー部分知覚, 実行機能

目   的
 前報では,Navon図形を用いた異同判断課題で,幼児期の子ども達の多くが年齢とともに,一様に部分から全体へと知覚発達が進行するのではなく,刺激のあり方により部分から全体へ進む場合もあることが示された(Noda & Ochiai,ICP 2016)。
 また,メンタルローテーションと自己制御との関連性が示され(野田・落合,2017),対象図形の認識に関連するメンタルローテーションの符号化過程において,自己制御能力が大きく関与していると推測される。つまり,符号化という側面が,Navon図形を用いた異同判断課題での全体か部分かの認識と近似するものと考えられる。
 さらに,自己制御能力をEC尺度(大内ら,2008),実行機能をBrief-P尺度(浮穴ら,2008)で測定し探索的因子分析を行ったところ,両者に共通する能力が多く存在することがわかった(野田・落合,日心2015)。実際,注意の焦点化と注意の移行,抑制という共通した内容が認められており(野田・落合,発心2017),EC尺度で測定された自己制御と実行機能とのあいだの類似性を指摘する研究も多い(Zhou,Chen, & Main,2012;清水,2016)。
 実際,幼児期の子どもは与えられた刺激の構造を慎重に認識するためには,注意を適切に制御しなくてはならない。そうした注意や抑制に関する行動レベルでの評定を通して,刺激構造の認識を符号化という側面からとらえようと考えた。本研究では,Navon図形を用いた異同判断課題の成績とEC尺度及びBrief-P尺度との関連性を検討することを目的とする。
方   法
対象:千葉県の保育園児(3歳児:3.6~4.5歳,102名,4歳:4.6-5.5歳,87名,5歳児:5.6~6.7歳,100名),保育士12名。
森か木か課題:Navon図形を幼児に馴染みのある内容で作成した。検査刺激は全部で10種類用意した(練習は2種類)。刺激対どうしは全体か要素のどちらかが共通の形である。個別に検査を行った。
自己制御・実行機能:EC尺度(大内ら,2008)には注意の移行(S),注意の焦点化(F),自己抑制(I),自己主張(A)が含まれている。自己制御が高いと高得点となる。Brief-P尺度(浮穴ら,2008)には,抑制(BI),転換(BS),感情コントロール(E),ワーキングメモリー(WM),計画/組織化(P)が含まれ,得点が高いと実行機能の不十分さが示される指標となっている。両尺度とも,「まったくあてはまらない」から「まったくそのとうりだ」まで7件法で,各担当保育士が評定し,「わからない」場合の評定も設定した。
結   果
 森か木か課題にある刺激対に対する異同反応のあり方から,部分(Part)得点,全体(whole)得点,全体と部分の両方を示した全体部分(PW)得点に分け整理した。練習とダミー検査を除き0~7点の得点幅となる。一方,ECおよびBrief-P尺度の素点から対象児を母集団とする標準化を試み,各児の自己制御・実行機能のz-得点に整理した。
 森か木か課題での3種類の反応のあり方と評定尺度の9変数との相関を検討したところ,EC尺度の全下位変数と部分(Part)反応との間に負の相関,全体(Whole)反応との間に正の相関が認められた。注意の焦点化(F)のみ全体部分反応と負の相関になった。一方,Brief-P尺度の全下位尺度と部分(Part)反応との間に正の相関,全体反応との間に負の相関が認められ,感情コントロール(E)のみ全体部分反応と正の相関が認められた。
 森か木か課題に関して,年齢×反応(部分,全体,全体部分)の分散分析を行ったところ,反応の主効果のみ有意(p < .01)で,全体>部分>全体部分の順に成績が低下した。
考   察
 刺激の構造を捉える上で,自己制御や実行機能が高い幼児ほど部分よりも全体に注目するという結果を得た。森か木か課題での反応には年齢差が確認できなかったので,年齢による区分では捉えられない自己制御・実行機能の個人差が幼児期においては既に存在していると推察される。前報で確認した全体より部分に注意するという発達の側面も更に検討する必要があると考える。