The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PB(01-83)

ポスター発表 PB(01-83)

Sat. Oct 7, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PB05] 幼児の社会道徳的逸脱場面における親の領域調整と関わり方

首藤敏元1, 利根川智子2, 樟本千里3, 上岡紀美#4 (1.埼玉大学, 2.東北福祉大学, 3.岡山県立大学, 4.仙台白百合女子大学)

Keywords:幼児, 道徳発達, しつけ

目   的
 子どもの養育場面においては,親は子どもの逸脱行為に直面した際,多元的な思考を働かせて状況を解釈(領域調整)し,判断し,その状況に関わろうとする(首藤・二宮, 2014)。本研究は,子どもの逸脱行為に対して,親はどのような思考を働かせるのか,そしてその多元的な思考は子どもの行動を制止する関わり方の強さに影響するのかについて調査する。本研究は,逸脱行為として道徳的逸脱と慣習的逸脱を用いた。また,多元的な思考として,道徳(moral),慣習(conventional),自愛の思慮(prudent)という3つの領域概念の要素を観点として提示し,関わり方の判断をする際に, それらの観点をどの程度考慮(領域調整)したかについて評定してもらう方法をとった。さらに,父親と母親の多元的思考と関わり方の差違についても検討した。
方   法
(1)調査参加者 埼玉県内の私立幼稚園に在園する幼児(3歳児~5歳児,平均5歳7ヶ月)の母親122名,父親74名の計196名(対応なし)。
(2)質問紙の構成 次の4つの場面から構成されていた。無礼(お礼を言わない),仲間拒否(仲間に入れない),攻撃(仲間への悪口),行儀悪さ(食事のマナー違反)。各場面は,「逸脱行為-親の指示-子どもの反抗」という簡単なストーリーになっており,話に出てくる登場人物(子どもと親)は自分と自分の子どもであると仮定して回答してもらった。場面ごとに以下の質問が行われた。
A.場面での関わり方を決める際に重要な考え方を領域別観点(道徳1:人を精神的・身体的に傷つけていないか,道徳2:子どもの行為は人の道理に外れていないか,慣習1:生活のきまりを守っているか,慣習2:行儀正しくしているか,自愛1:子どもの行為が後に子ども自身の不利益になって戻ってこないかどうか,自愛2:今後の人間関係で悪い評判がおきないかどうか)として用意し,場面の内容に合わせて文章化されていた。場面ごとに6つのすべての観点について自分の考えに当てはまる程度を3段階(考えない,少し考える,考える)で評価してもらった。B.親に反抗すること自体悪いかどうかを2段階で判断を求めた。C.最終的な子どもへの関わり方として場面ごとに4段階で回答してもらった(強くかかわって親のいうことをきかせる,何度も理由を話し繰り返し言い聞かせる,もう一度注意する,あきらめる)。
(3)手続き 質問紙は調査者が園の行事日に,直接保護者に調査目的等を説明した上で,質問紙を配布し,協力を依頼した。応諾した保護者はその日の降園時までに回答し調査者に提出した。
結   果
A.親の領域調整:仲間拒否と攻撃場面,無礼と行儀悪さの場面の領域別観点評価をそれぞれ3領域ごとに合計した。この合計得点(4~12)について,2(父母)×2(逸脱)×3(観点)のANOVAを行った結果,観点の主効果(F(2,388)=123.20, p<.001)と逸脱×観点の交互作用効果(F(2,388)=425.67, p<001)が有意であった。仲間拒否・攻撃では道徳>慣習>自愛,無礼・行儀悪さでは慣習>自愛>道徳の順で,領域の要素が考慮に入れられていた。B.親権威:2種類の逸脱行動場面ごとに合計した親権威得点(0~2)に関する2(父母)×2(逸脱場面)のANOVAの結果,反抗自体悪いとみなす判断の強さは父>母(F(1,194)=5.05, p<.05),無礼・行儀悪さ>仲間拒否・攻撃(F(1,194)=10.70, p<.01)であった。C.関わり方:逸脱行動場面ごとに合計した関わり方の強さ得点(0~6)に関する2×2のANOVAの結果,より強い関わり方は父>母(F(1,194)=8.15, p<.01),仲間拒否・攻撃>無礼・行儀悪さ(F(1,194)=19.58, p<.001)で見られた。E.関わり方に寄与する領域調整と親権威の影響:2つの逸脱場面ごとに関わり方の程度を目的変数,領域別観点得点と親権威得点を説明変数とする重回帰分析を父母ごとに実施した。その結果,父親の関わり方に関して,仲間拒否・攻撃場面では親権威と道徳的観点が正に,慣習の観点が負に寄与していた。礼儀作法の逸脱場面では親権威が正に寄与する傾向が見られた。ただし,母親の関わり方の結果にはこのような関係は認められなかった。
考   察
 親は子どもの逸脱行動の性質に合った領域概念を強く働かせると同時に,複数の領域にまたがった思考をしていることが分かった。父親の領域調整が直接関わりの強さとして表れるのに対し,母親では関わりの強さではなく内容に表れるのかもしれない。