The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PB(01-83)

ポスター発表 PB(01-83)

Sat. Oct 7, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PB12] 母子遊び場面で観察された母親による発達初期の子どもへの意思決定支援

蓮見元子1, 川嶋健太郎2, 北原靖子3 (1.川村学園女子大学, 2.東海学院大学, 3.川村学園女子大学)

Keywords:幼児, 意思決定支援, 母親

問題・目的
 母親は子どもに対していつ頃から選択場面をつくり,子どもが選択できるように働きかけ,支援をしているのだろうか。子どもが自発的自律的な行動ができるように,能動的にサポートすることを自律性支援というが,母親はたとえ初期段階の子どもであろうとも,意思決定のための選択肢を提供し,自律的支援を行っているのではないだろうか。しかしながら,実際にはどのような形で行っているのか明らかではない。そこで,本研究では母親が発達初期の子どもの意思決定を支援するプロセスを縦断的に検討することとした。
方   法
 調査協力者は10組の母子。1歳, 1歳半, 2歳の3年齢段階。自由遊び場面で見られた母親による意思決定支援(主に発話)を取り上げた。観察は1組ずつで,15分~20分間,所定の遊具が置かれた部屋で母子一緒に遊ぶ場面を設定した。母親には「何種類かのおもちゃがあるので,一つのおもちゃで遊んだら,それを片づけて次のおもちゃで遊ぶようにしてください。それでは,自由に遊んでください」と教示した。VTRをとり,母子の発話及び行動を逐次起こして分析資料とした。
結   果
●12か月 まだ,子どもの発話はほとんどない段階。母親は,子どもの様子を見ながら選択機会を与えているが,子どもの返答や意思決定は期待していない。
・「どのおもちゃであそぼうか?」「何かな。ここに乗せてごらん。なーに?」⇒子どもが好きなおもちゃを見せながら,子どもにおもちゃを選んで,遊ばせようとするが,反応は期待していない。
・「ママ,これないないしちゃおうかな。」⇒自分がすることを説明しながら,子どもの様子を伺う。
・「これなんだ?こっちは?」「ご本あるよ,何があるかな」⇒選ばせるというより,子どもが玩具に飽きてきたので,別のものを誘導,提示する。
●18か月 子どもの発話は少し出てきたが,母親はまだきちんと意思を返答してくれるとは期待していない。子どもの行動を見ながら,選択機会を与えていた。12か月時より,丁寧に子どもの意思を尋ねるようすがみられた。
・「これはいかがでしょう?オープン,開いた」「これはどう?赤ちゃんのときにやった?」「これおもしろくない?」⇒子どもの様子を見ながら,子どもの気持ちを代弁するように,たずねる。
・「これがいいの?そこにおくのね,わかった」「それがいいんだ,これも面白そうなのに,それであそぶんだね」⇒子どもの気持ちを代弁して,したい行動を選択して行うように促す。
「椅子に座って,読む?」⇒意思決定の問いかけになっているが,させたい行動を促すための発話。
●24か月 子どもの意思はだいぶはっきりしてきたが,ことばでの返答はまだ難しい面があり,この時期も子どもの反応を行動で判断し,したい行動を子どもが選択できるようにしながら,遊ぼうとするようすが窺えた。
・「これであそぶ?出してみようか」「こんど,どーれ,ご本?」⇒次に遊ぶのを選択させようとするが,こどもの反応行動が今一つはっきりしないので,様子を見ながら,遊ばせる。
・「うさぎさんだよ,こっちは?そっちがいいの?」⇒新しい遊びに誘うときに尋ね,意思を確認する。
考   察
 母子で自由に遊ぶ場面での,母親の子どもに対する意思決定支援と思われる発話を取り出し,分類,検討した。子どもがたとえ幼くて,言語による返答ができないとしても,意志ある存在であり,一方的に,子どもに指示したり命令することはなく,子どもの意思を逐次尋ね,確認し,子どもが遊びたい行動を主体的に自己決定できるような選択機会を与えていた。