1:00 PM - 3:00 PM
[PB15] 親になるための共感性におよぼす性と愛着要因の影響
養育環境とのかかわりにおいて
Keywords:見捨てられ不安, 親密性回避, 親準備性
目 的
核家族化やきょうだい数の減少,地域交流の希薄化により,子どもの世話をしたことや抱くなどの接触体験がないままに親となることで,親性を育む機会がなく未熟な状況下で親となると考えられる。親準備性も自身の乳幼児期から青年期までの体験を通して育成されていき,就学前の親子の愛着スタイルが成人期の愛着スタイルに影響を及ぼし,成人期の愛着スタイルが子どもと育児への好意感情に影響を及ぼすこと(小池, 2013)から,養育環境との関わりで,親になるための共感性に,愛着因子がどのような関わりを持っているかを調べた。
方 法
研究対象:協力を得られた7施設の1396名に配布し,1071名(回収率76.7%)から回答が得た。不良解答されたもの46名を除外した。女性783名,男性241名,未記入1名。研究期間:平成28年6月~7月 質問紙:①養育環境に関する基本属性14項目 ②中尾・加藤(2004)による「愛着スタイル尺度」。③親になるための共感性尺度,cr:幼児への共感的応答性,idk:幼児の発達に関する知識,ap:自分の親への親和性,abp:親になることの肯定性の4カテゴリーからなる26項目。 分析方法:養育環境に関する基本属性を最尤法によるプロマックス回転を伴う因子分析を行い,4因子(n1:きょうだい性,n2:接触性,n3:家族性,n4:社会性)を得た。男女ごとに,Mplus(Ver.8)を用いて,その4因子から,愛着の2因子(fa:見捨てられ不安,ja:親密性回避)を媒介して,親になるための共感性の4カテゴリーへのパス解析を行った。 倫理的配慮:事前に各施設の代表または担任に研究内容と目的,プライバシーの保護について文書及び口頭にて説明し,研究の承諾を得た。
結 果
女性(Fig.1:AIC=3130.417; RMSEA=0.000; CFI=1.000)では,見捨てられ不安に対して,n1きょうだい性から正の有意なβが,n4社会性からは強い負の有意なβが見られ,そこから,abp親になることの肯定性に,負の有意なβが見られた。また,親密性回避に対しては,n1きょうだい性から負の有意なβが,n4社会性からも強い負の有意なβが見られ,逆に,そこから,abp親になることの肯定性に,正の有意なβが見られた。
これに対して,男性(Fig.2:AIC=10598.149; RMSEA=0.077; CFI= 0.994)では,親になるための共感性に愛着因子でかかわっているのは,親密性回避だけであり,cr幼児への共感的応答性とap自分の親への親和性に正の有意なβが見られたが,養育環境からの影響は見られず,あったのは,見捨てられ不安の方で,n1からは正の,n3,n4からは負の有意なβが見られているが,そこから共感性には影響を持っていなかった。
考 察
親になるための準備としての4つの共感性に関して,愛着の2因子の関わり方が,男女で,全く異なっていることが示され,愛着2因子が,出産のための生殖的な関わりで,大きな違いを見せていることが示された。一方で,男女とも接触性や社会性といった養育環境が性に関わらない形で,親になることへの共感性に直接影響を持っていることが示された。こうした違いや共通性を理解することが,子育てを共同で参画していくために重要になっていくであろう。
参考文献
中尾達馬・加藤和生(2004) “一般他者”を想定した愛着スタイル尺度の信頼性と妥当性の検討,九州大学心理学研究,5,19-27.
小池優美 2013青年期女性の親性準備性と就学前及び成人期の愛着スタイルとの関連 日本女子大学人間社会研究科紀要,19,99-113.
核家族化やきょうだい数の減少,地域交流の希薄化により,子どもの世話をしたことや抱くなどの接触体験がないままに親となることで,親性を育む機会がなく未熟な状況下で親となると考えられる。親準備性も自身の乳幼児期から青年期までの体験を通して育成されていき,就学前の親子の愛着スタイルが成人期の愛着スタイルに影響を及ぼし,成人期の愛着スタイルが子どもと育児への好意感情に影響を及ぼすこと(小池, 2013)から,養育環境との関わりで,親になるための共感性に,愛着因子がどのような関わりを持っているかを調べた。
方 法
研究対象:協力を得られた7施設の1396名に配布し,1071名(回収率76.7%)から回答が得た。不良解答されたもの46名を除外した。女性783名,男性241名,未記入1名。研究期間:平成28年6月~7月 質問紙:①養育環境に関する基本属性14項目 ②中尾・加藤(2004)による「愛着スタイル尺度」。③親になるための共感性尺度,cr:幼児への共感的応答性,idk:幼児の発達に関する知識,ap:自分の親への親和性,abp:親になることの肯定性の4カテゴリーからなる26項目。 分析方法:養育環境に関する基本属性を最尤法によるプロマックス回転を伴う因子分析を行い,4因子(n1:きょうだい性,n2:接触性,n3:家族性,n4:社会性)を得た。男女ごとに,Mplus(Ver.8)を用いて,その4因子から,愛着の2因子(fa:見捨てられ不安,ja:親密性回避)を媒介して,親になるための共感性の4カテゴリーへのパス解析を行った。 倫理的配慮:事前に各施設の代表または担任に研究内容と目的,プライバシーの保護について文書及び口頭にて説明し,研究の承諾を得た。
結 果
女性(Fig.1:AIC=3130.417; RMSEA=0.000; CFI=1.000)では,見捨てられ不安に対して,n1きょうだい性から正の有意なβが,n4社会性からは強い負の有意なβが見られ,そこから,abp親になることの肯定性に,負の有意なβが見られた。また,親密性回避に対しては,n1きょうだい性から負の有意なβが,n4社会性からも強い負の有意なβが見られ,逆に,そこから,abp親になることの肯定性に,正の有意なβが見られた。
これに対して,男性(Fig.2:AIC=10598.149; RMSEA=0.077; CFI= 0.994)では,親になるための共感性に愛着因子でかかわっているのは,親密性回避だけであり,cr幼児への共感的応答性とap自分の親への親和性に正の有意なβが見られたが,養育環境からの影響は見られず,あったのは,見捨てられ不安の方で,n1からは正の,n3,n4からは負の有意なβが見られているが,そこから共感性には影響を持っていなかった。
考 察
親になるための準備としての4つの共感性に関して,愛着の2因子の関わり方が,男女で,全く異なっていることが示され,愛着2因子が,出産のための生殖的な関わりで,大きな違いを見せていることが示された。一方で,男女とも接触性や社会性といった養育環境が性に関わらない形で,親になることへの共感性に直接影響を持っていることが示された。こうした違いや共通性を理解することが,子育てを共同で参画していくために重要になっていくであろう。
参考文献
中尾達馬・加藤和生(2004) “一般他者”を想定した愛着スタイル尺度の信頼性と妥当性の検討,九州大学心理学研究,5,19-27.
小池優美 2013青年期女性の親性準備性と就学前及び成人期の愛着スタイルとの関連 日本女子大学人間社会研究科紀要,19,99-113.