The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PB(01-83)

ポスター発表 PB(01-83)

Sat. Oct 7, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PB16] 小学校教員の自主・向上性と教師効力感・被援助志向性・教職のやりがい感との関連

森永秀典1, 河村茂雄2 (1.早稲田大学大学院, 2.早稲田大学)

Keywords:小学校教員の自主・向上性, 教師効力感, 教職のやりがい感

問題と目的
 中央教育審議会(2015)は,これからの時代の教員に求められる資質能力として,自律的に学ぶ姿勢を持ち,時代の変化や自らのキャリアステージに応じて求められる資質能力を,生涯にわたって高め,常に探究心や学び続ける意識をもつこととともに,情報を適切に収集し,選択し,活用する能力や深く知識を構造化する力を示している。そのような背景の中,教師の心理発達的社会的側面については様々な研究がなされている。
 教師効力感について,西松(2005)は,自己効力感が高ければ,困難に直面した時に努力をすることができるため,困難な場面に直面することの多い教員にとって自己効力感を高めることは重要なことであること,新規採用教員が今日の厳しい状況下でも適応していくためには一定の「教師効力感」を保ったまま,効果的な教育活動を展開することが必要であることを指摘している。田村・石隈(2001)は,困難に直面した時他者へ援助を求めるかどうかの認知的枠組みを「被援助志向性」という概念で捉え,教師のバーンアウトとの関連を明らかにしている。「被援助志向性」という概念は教員のメンタルヘルスの側面だけではなく,教員の資質能力の向上にも影響を及ぼすと考えられる。河村(2001)は,教師本人の取り組むこと自体の喜び・満足感を得るような要素が重要であるとし,「教職のやりがい尺度」を開発した。「学び続ける教員像」の学びも,本来内発的な学びであることが大切であろう。そこで本研究では,小学校教員を年代別に分け,小学校教員の自主・向上性と教師効力感,被援助志向性,教職のやりがい感との関連を明らかにすることを目的とした。

方   法
調査対象 A県の公立小学校の教員190名(男性85名,女性105名)が対象であった。
調査時期と手続き 教員への調査は2015年7月~8月にかけて実施した。
調査内容 属性を検討するために,性別(男性,女性),年代(20代,30代,40代,50代)を尋ねた。小学校教員の持つ自主・向上心については,河村ら(2014)の「学校組織尺度」の「自主・向上性」因子を用いた。教師効力感については,桜井(1992)の「教師効力感尺度」を用いた。被援助志向性については,田村・石隈(2006)の「状態・特性被援助志向性尺度」を用いた。教職のやりがい感については,河村(2001)の「教職のやりがい尺度」を用いた。

結果と考察
自主・向上性因子と他尺度との関連
 20代の小学校教員では,教師効力感尺度の個人的教授効力感因子,状態被援助志向性の3つの下位尺度,教職のやりがい尺度の職場充実因子と働く内容因子と,自主・向上性因子との間に有意な正の関連が認められた。30代の小学校教員では,教師効力感尺度の一般教育効力感因子,教職のやりがい尺度の職場充実因子,対外的評価因子,働く内容因子と,自主・向上性因子との間に有意な正の関連が認められた。また特性被援助志向性尺度の援助の抵抗感因子との間に負の相関が認められた。40代の小学校教員では,教師効力感尺度の個人的教授効力感因子,一般教育効力感因子,教職のやりがい尺度の職場充実因子,対外的評価因子,働く内容因子と,自主・向上性因子との間に有意な正の関連が認められた。50代の小学校教員では,教職のやりがい尺度の働く内容因子と,自主・向上性因子との間に有意な正の関連が認められた。これらのことから,教員の自主・向上性と教員の心理発達的社会的な側面との関連は,年代ごとに特徴があることが明らかになった。