The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PB(01-83)

ポスター発表 PB(01-83)

Sat. Oct 7, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PB37] 中学校ではどのような批判的思考教育が行われているか?

道田泰司 (琉球大学)

Keywords:批判的思考, 中学校, 実践

 批判的思考の教育実践は近年,我が国でも少なからず行われている。その多くは,大学における実践である(道田, 2013教心年報)。
 批判的思考は,たとえば「学校段階等別・教科等別ワーキンググループ等における審議の取りまとめについて」(H28.8.26中教審・教育課程部会)において,複数の教科で言及されるなど,これからの初等・中等教育のなかで,必要な思考の一つと考えられる。しかし,学習指導要領の縛りがあるなかで教育を行わなければいけない点は,初等中等教育は,大学にはない大きな制約がある。
 本研究では,これまでに我が国で行われてきた中学校における批判的思考教育について検討し,それらが,どの教科で,どのような形で行われているのかについて検討する。中学校に焦点を当てるのは,形式的操作期の入り口にあたり,論理的・抽象的な思考を本格的に育てることが可能となる時期であるためである。
方   法
 対象論文 CiNiiでタイトルに「(批判的 & 思考) OR (クリティカル & シンキング)」と入れて出てきた論文から,中学校における実践と思われるものをピックアップした。ただしこのやり方では,中学校対象であることを明示している論文しか拾えない。そこで,2006~2012年に出された批判的思考に関する論文を網羅的に検討した道田(2013)からも,中学校における実践論文を拾った。
 以上得られた論文を対象とした。ただし,批判的思考と銘打たなくても(たとえば,「思考力育成」一般の実践として)通用すると思われる論文,ならびに,ページ数の少ない学会発表論文は検討対象から除外した。その結果,10本の実践論文が抽出された。
結   果
 各実践が,どのような形で批判的思考を扱おうとしているのかについて,方法論に注目して抽象化し,カテゴリーとした。その結果,「枠提示」「練り直し」「価値相対化」という3つのカテゴリーが得られた。
 「枠提示」は,思考のためのフレームワークなどを「枠」としてワークシートに提示することで,論理的に考えることを促す方略である。重永(2015:国語)と徳永ら(2016:理科)は,文章や実験結果を,主張・根拠(証拠)・説明(理由づけ)という観点で検討させている。吉楽(2015:国語)は,二者択一的問題に対して,考察+具体的な事実+反対意見への反論を用いて自分の判断を書かせている。
 「練り直し」は,一度自分なりの考えを持たせた後で,それを再検討させるもので,重永(2015:国語)は,ひとまずの根拠・説明・結論を書かせた後,「友達のあげているいいなと思う根拠」を踏まえて最終的な根拠・説明・結論を書かせている。木下ら(2011:理科)は,いったんワークシートを書いたあとで,教師が示した視点(誤りはないか/結果に影響するか/見落としている原因はないか,など)に沿って,それを修正させている。清水ら(2015:理科)は,小グループ討論時,発表者のほかに評価役(情報の明確化と分析に1名,推論の検討に1名)をおき,発表に対して吟味をさせている。
 「価値相対化」は,対立する複数の価値に触れさせるものである。日下部(2015:社会)は,文化財保護と生活重視という対立する価値について考えさせている。池田(2015:社会)は,同じ一揆という行動が,あるときは是とされあるときは非とされている史実から,その理由を考えさせている。北上田(2011:社会)は,太平洋戦争を学ぶ際に,日本の立場と米国の立場両方に触れる形で学習を進めている。細木(2011:国語)は,CMを,広告制作者の意図という観点から読み解かせている。濱井(2009:社会)は,生徒の「英雄」概念を覆す形で人物学習を行っている。
考   察
 今回検討した10本の実践研究は,国語,社会,理科と教科に偏りが見られた。批判的思考の扱い方としては,考える枠組みを与えるという思考ツール的な方法,とりあえずの考えに対して批判を与えることで思考をバージョンアップさせる方法,複数の価値に触れることで,それまで持っていた価値を相対化したり葛藤を起こさせたりする方法,の3種類が得られた。
 今回見られた教科や方法以外の授業がありうるのかどうかについて検討することが今後の課題といえる。

*本研究はH28-H31科研費(基盤C 16K04306 研究代表者:道田泰司)の助成を受けた。