The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PB(01-83)

ポスター発表 PB(01-83)

Sat. Oct 7, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PB39] 英語および英語学習に対する信念の構造と自己効力感との関係

島田英昭1, 鈴木俊太郎#2, 田中江扶#3 (1.信州大学, 2.信州大学, 3.信州大学)

Keywords:動機づけ, 期待, 価値

問題と目的
 グローバル化の中で英語教育のニーズが高まっている。英語の上達のためには授業や研究の時間だけでなく,継続的な自習が重要である。
 この中で本研究は,継続的な自習を促すために,動機づけの期待理論に基づき,英語または英語学習に対するどのような種の信念が継続的な自習を促すのか,検討する。
方   法
手続き・参加者
 インターネット調査により,大学生519名(18-23歳,平均20.7歳,男性253名,女性266名)を対象に,以下の質問項目への回答を求めた。
材料
 英語学習の自己効力感尺度 島田他(2016)のデータを参考にして,継続的な英語の自習ができるかどうかの自信を評価する6項目を作成した(例:英語の勉強時間は長い方だ)。
 英語・英語学習に対する信念尺度 動機づけの期待理論に基づき,BALLI等の先行研究および島田他(2016)のデータを参考にして尺度を作成した。下位尺度として努力期待(例:英語の勉強をしっかりすれば,語が実用的に使えるようになる),能力期待(例:英語をいくら勉強しても,才能がなければ上手にならない),動機づけ期待(例:英語はその気になればすぐに習得できるものだ),価値期待(例:英語は日常のさまざまな場面で役立つ)についてそれぞれ6項目,合計24項目を作成した。
結   果
因子構造の特定
 因子分析により因子構造を特定した(最尤法,バリマックス回転,因子負荷量.40以上を基準)。英語学習の自己効力感尺度については,1因子構造を確認した。クロンバックのα係数は.811で十分な内的一貫性が認められた。
 英語・英語学習に対する信念尺度については固有値1以上の4因子が抽出されたが,解釈可能性からその中の3因子を分析対象とした。第1因子は努力期待と動機づけ期待の合計11項目が含まれ,「努力期待」と命名した。第2,3因子は当初の想定通り能力期待および価値期待が6項目ずつ含まれた。α係数は順に.895, .794, .855であり,十分な内的一貫性が認められた。以下,この因子構造で尺度得点を算出し,分析を進めた。
自己効力感に与える影響
 英語学習の自己効力感尺度を従属変数,英語・英語学習に対する信念尺度の下位尺度を独立変数とした重回帰分析行った結果を表1に示す。標準化偏回帰係数(β)をみると,能力期待が最も影響が強く,有意であった。次に,努力期待が強く,有意傾向であった。価値期待の効果はそれほどみられなかった。決定係数はR2=.057(p<.001)であった。
考   察
 能力期待の有意な負の効果が示されたことから,継続的な英語の自習を促すためには,能力期待の信念を修正することが効果的であることが示唆された。また,努力期待についても有意傾向が示されており,努力期待の信念を高めることも,継続的な英語の自習を促すことにつながると考えられる。一方,しばしば社会における英語の重要性が強調されるが,価値期待に働きかける信念修正は,英語学習にそれほど影響がないと考えられる。
 ただし,決定係数がR2=.057と小さかった。この点については,本研究が自己効力感を学習の指標にしていることの妥当性,および英語学習に影響するその他の変数を考慮する必要性があると考えられる。
引用文献
島田英昭・鈴木俊太郎・田中江扶 (2016). 自律的英語学習者が持つ信念と動機づけ 日本教育心理学会第58回総会発表論文集, 262.

 本研究はJSPS科研費JP15K02675の助成を受けたものです。