The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PB(01-83)

ポスター発表 PB(01-83)

Sat. Oct 7, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PB40] 地域の伝統的工芸品を活用したキャリア教育における外部との連携

城間祥子 (上越教育大学)

Keywords:小学校, 地域との連携, まちづくり

問題と目的
 キャリア教育の推進にあたっては,学校が保護者や地域,外部団体と連携することの重要性が指摘されている(国立教育政策研究所,2013)。外部との連携には,児童生徒一人ひとりのキャリア発達を促すために地域の教育資源を有効活用するという側面と同時に,地域の将来を担う人材を育成するという側面もある。例えば,新潟県は,地域に根ざし自立した子どもを育てる「新潟っ子をはぐくむキャリア教育」を推進している(新潟県教育委員会,2011)。地域の発展にとっても,学校と地域が連携してキャリア教育に取り組むことが必要だと言える。本研究では,地域の一員としてのアイデンティティ形成や産業振興,まちづくりにつながると考えられることから,地場産業を活用したキャリア教育に着目する。具体的には,地域の伝統的工芸品(陶器)を活用した小学校のキャリア教育の事例を取り上げ,学習内容や実施体制について分析を行う。
方   法
 那覇市立壺屋小学校において2015年11月及び2016年11月に行われたキャリア教育の実践を参観した。壺屋小は市の中心部に位置し,学区内に壺屋焼の本拠地である壺屋地区が含まれる。2006年からは壺屋小校庭を会場として陶器まつりが開催されている(以前は別の場所で開催されていた)。4日間のまつり期間中に,陶器の展示即売,陶器作り体験,移動博物館などの企画が行われ,「壺屋小児童キャリア教育」も陶器まつりの一環と位置付けられていた。まつり当日の学習活動の様子をフィールドメモと映像により記録するとともに,小学校の管理職,陶器組合所属の陶工,焼物博物館の元館長ら,関係者へのインタビューを行った。
実践の概要
 陶器まつりというリソースを活用し,1年生から6年生までの各学年において,発達段階に応じた学習活動が展開されていた。例えば,2015年度の実践では,1-2年生は街角ガイドや保護者と一緒に町探検を行い,伝統工芸館,商店街,焼物通り,大きな焼物(シーサー)のオブジェ,昔の登り窯などを見学した。3-4年生は,学校近くの大通りで手作りのチラシを配り陶器まつりへの来場を呼び掛ける活動のほか,3年生は移動博物館,4年生は来場者や陶工さんへのインタビューを行った。5年生は各窯元のブースでの売り子体験,6年生は自作の焼物(コースターやマグネット)の展示即売を行った。
実践の成果
(1)発達段階に応じた学習活動
 低学年では,地域に親しみを持ち,伝統・文化を含む地域のよさに気付くことに重点が置かれていた。中学年になると,地域の焼物の特徴について理解を深め,作り手や使い手の思いに気付くことで,地域に誇りを持つ学習が行われていた。高学年は,「本物の実践」に参加し,働くことの喜びや大変さを実感する学びとなっていた。特に,6年生の活動は商品づくりから販売までの一連の過程を経験できるように工夫されていた。
(2)外部との多様な交換関係の成立
 どの学年も学校の外とつながる学習活動を行っていた。特に,陶工,来場者,街角ガイド,学芸員など,多様な人との関わりが子どもたちの学びを豊かにしていた。陶器まつりは,実行委員会(壺屋小,地元自治会,焼物博物館,NPO法人などで構成)と陶器事業協同組合の主催で開催されている。学校が陶器まつりに積極的に参画することで,学校と外部の連携・協働が生まれていると考えられる。また,陶器まつりにおける連携・協働は,商品交換に限定されない多様な交換関係により成立していた(例えば,学校側はまつり会場を提供し,外部人材の支援を得て特色あるキャリア教育を実践できる。一方,陶器組合は陶器まつりを地元で開催してまちづくりに貢献するとともに,焼物の町をアピールできる)。
まとめと今後の課題
 地域の伝統的工芸品を活用することで,全学年で発達段階に応じた学習活動が展開されていた。また,陶器まつりの一環として学習活動を行うことで,多様な人々との関わりが生まれ,地域の「本物の実践」に参加するキャリア教育が実現していた。今後は,このような学習活動が子どもたちの地域に対する思いや自己概念にどのように影響しているのか詳しく分析する必要がある。
引用文献
国立教育政策研究所(2013)『キャリア教育・進路指導に関する総合的実態調査第一次報告書』
新潟県教育委員会(2011)『新潟っ子をはぐくむキャリア教育のすすめ』