日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PB(01-83)

ポスター発表 PB(01-83)

2017年10月7日(土) 13:00 〜 15:00 白鳥ホールB (4号館1階)

13:00 〜 15:00

[PB41] 講義資料への書き込みおよび資料参照による授業内容理解への影響

魚崎祐子 (玉川大学)

キーワード:講義資料, 書き込み, 資料参照

はじめに
 授業中のノートテイキングは多くの学習者によってとられる行動であり,符号化機能と外部貯蔵機能からその役割が説明されてきた(Di Vesta and Gray, 1972)が,講義資料への書き込みにも同様の役割があると考えられる。
 これまで筆者は主に符号化機能の観点から講義場面における配付資料への書き込みと授業内容理解との関係について検討してきた(魚崎,2016など)が,本研究では外部貯蔵機能としての役割から探ることとし,資料参照の有無による影響もふまえた書き込みの影響を検討することとした。
方   法
対象者
 関東地方の大学で同じ内容について扱う2つのクラスを用いて実験を行うこととし,「教育心理学」の受講生を対象とした。該当授業を受講する学生のうち,分析対象となることに同意しなかった学生およびノートなど別のものに授業内容の記録をしている学生を省き,当日の配付資料および授業後課題をともに提出した学生を対象としたところ, 173名であった。このうち資料参照あり群のクラスは55名,資料参照なし群のクラスは118名であった。また,それぞれのクラスにおいて,配付資料の該当部分に何らかの書き込みを行ったかどうかによって書き込み有無による群分けをした。
手続き
 通常の講義を約1時間おこなった後,各群ともに授業内容に関する確認課題を行うことを告げ,資料を見直す時間を与えた。ただし,授業で扱った話題の中でどの内容について確認するのかは伝えておらず,学生たちはその日の授業内容を全体的に見直していた。また,講義場面や見直し場面における態度は統制できておらず,すべての学生が真剣に取り組んだとはいえない。見直しの後,両クラスとも同一の課題を与えて答えてもらった。課題の内容は概念や提唱者の名前を答えるもの3問と概念の内容を説明するもの2問から成るものであった。概念や提唱者の名前については1点満点,内容説明については2点満点で得点化した。
分析
 課題の得点について,資料内の該当箇所への何らかの書き込みの有無と課題に答える際の資料参照有無による2要因分散分析を行った。
結果と考察
 概念および提唱者名に関する課題と説明課題とに分け,書き込みの有無および資料参照の有無による2要因分散分析を行った。表1~4に示す通り,概念・提唱者名についての課題(F(1,515) =117.81, p<.01),説明課題(F(1,342)=7.77, p<.01)ともに書き込み有無による主効果,資料参照の有無による主効果ともに有意であった。
 これらの結果より,資料からそのままの情報を探し出すような課題だけでなく,説明文を作成するような課題であっても,資料を参照することにより必要な情報をつなぎあわせることにつながっているのと同時に,参照する資料に十分な情報が書かれているのかどうかによって効果が変わることが示された。