The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PB(01-83)

ポスター発表 PB(01-83)

Sat. Oct 7, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PB47] 運動部員の部活動への適応感における部の連帯性と顧問教師の育成指導との関係

吉村斉 (高知学園短期大学)

Keywords:適応感, 部活動, 連帯性

 部活動における積極性や満足感(以下,適応感)は,主将のリーダーシップや部員の社会性のあり方に規定されることが示唆されてきた(吉村, 2005など)。また,吉村(2015)では,部員だけでなく顧問教師による育成指導のあり方も重要であることが示唆された。部員同士の検討では,いずれも部のまとまり(以下,部の連帯性)につながる関係性の重要性が推察されている。そこで,本研究では,中学運動部員を対象に,部活動への適応感が部の連帯性と顧問教師の育成指導とのあり方に応じてどのように異なるのかを検討する。
方   法
調査対象者
 運動部員については4つの中学校の運動部員2年生510名(主将を除く)を,顧問教師については510名の運動部員が所属する学校の運動部顧問教師65名を対象とした。その上で,育成指導に関する回答が得られた教師が顧問をしている部に所属する運動部員449名(男子265名,女子184名)を分析の対象とした。なお,本研究は吉村(2015)等で検討したデータの一部を再分析するものである。
調査の内容
 本研究では調査校の承諾を得て以下の調査を行った。回答は6件法であった。
 運動部員への調査 吉村(2013・2015)で用いた連帯性に関する尺度,部活動への適応感に関する部活動への積極的行動,部の雰囲気への満足感,部への所属感の各下位尺度を使用した。
 顧問教師への調査 藤田・松原(1992)で作成された部員育成に関する10項目を用いた。
調査の実施
 調査は,学級担任より部員に対して調査が実施された。また,顧問教師に対しては学校長が調査票を配布し,回答後に各教員が封をして提出した。
結   果
部の連帯性の群化
 各部員の部の連帯性尺度得点が全体の平均値(M=4.04, SD=1.02)より高い場合を連帯性H群(N=230),低い場合を連帯性L群(N=219)とした。
顧問教師の部員育成に基づいた運動部員の群化
 まず,顧問教師による部員育成に関する指導尺度得点について,全体の平均値(M=4.34, SD=0.78)に応じて2群化し,各群を担当する部に所属する部員にあてはめ,育成指導H群(N=237)と育成指導L群(N=212)に分類した。
部活動への適応感における連帯性と育成指導との関係
 部活動への適応感各下位尺度得点を従属変数とした連帯性(2)×育成指導(2)の二要因分散分析(多重比較はTukeyのHSD法)を行った。
 部活動への積極的行動 分散分析の結果,連帯性の主効果が認められた(F(1, 445)=119.66,p<.001,MSe=.90)。多重比較の結果,連帯性H群が連帯性L群より有意に高かった。
 部の雰囲気への満足感 分散分析の結果,連帯性の主効果及び連帯性と育成指導の交互作用が有意であった(F(1, 445)=224.70,p<.001,連帯性H群>連帯性L群;F(1, 445)=4.26,p<.05,MSe=.70)。後者については,単純主効果の検定を行うと,連帯性H群において育成指導H群が育成指導L群より高く,連帯性L群では育成指導による有意差が認められなかった(F(1, 445)=2.95)。
 部への所属感 分散分析の結果,連帯性の主効果が認められた(F(1, 445)=105.58,p<.001,連帯性H群>連帯性L群,MSe=1.17)。
考   察
 本研究で特筆すべき結果は,全般的に連帯性が高い部に所属する部員の適応感が高い状況で,その中でも顧問教師の育成指導が高い部では,部員の部の雰囲気への満足感が一層高いことが示唆されたことである。
 部活動は部員の自主的な活動であるが,そこには顧問教師の適切な指導が前提となっている。部活動の効果を高める上で,部員同士の関係づくりと顧問教師による部員の育成に対する適切な指導が重要であることが確認されたといえる。ただし,顧問教師は必ずしも部活動のために採用されるわけではないことから,役割分担や負担軽減等と関連づけた追究も課題である。