1:00 PM - 3:00 PM
[PB52] 教師との関係形成における児童の主体性が学級適応感に及ぼす効果についての予備的調査
道具性と情緒性の2機能を考慮して
Keywords:教師-児童関係, 学級適応感, 道具的関係
問題と目的
教師-児童生徒関係研究は,教師による配慮や支援など教師主体の情緒的関係づくりに焦点を当てている。しかし,学習活動の成立と児童生徒の学級適応の上で,児童生徒も主体的に関係づくりに関わる相互依存的関係にあるという(Jenkins, 1951)。相互依存的関係とは何かについて,児童主体の関わりと関係の機能(道具性,情緒性)に注目し,学級適応感への効果から関係性を考察する。
方 法
調査対象と時期 A地域小学校3校4,5,6年生429名(男子200名,女子224名,不明5名),2016年10月。
尺度構成 すべて5件法である。
1.教師-児童関係尺度 項目については,主体性の所在(教師/児童)×主体的関わりの有無×関わりの機能(道具性/情緒性)の組み合わせ計8分類になるよう,先行研究(e.g., 藤田・森口,2015; 越・西條,2004; 弓削・松田,2003)を参考に作成した。専門家4名で項目をチェックし,最終的に6分類計24項目になった。
2.学級適応感尺度 浜名・松本(1993),江村・大久保(2102)の尺度を参考に,最終的に12項目を使用した。
3.担任教師への適応感尺度 4項目作成して評定させた(e.g.,先生といると落ち着く,安心する)。
結 果
1.教師―児童関係尺度の分析 探索的因子分析で得られた4因子構造(Table1参照)の確認的因子分析の結果,適合度は比較的高く(χ2(114) = 269.5, p<.0001, CFI= .96, RMSEA=.06),教師への適応感尺度(1因子)と各因子の相関も全て0.1%水準で有意な正相関であり,妥当性が確認された。
2.学級適応感尺度の分析 第1因子は「安心・充実感」,第2因子は「被信頼・受容感」であった。
3.教師-児童関係が学級適応感に及ぼす効果
学年を集団単位とした多母集団同時分析の結果(Figure1参照) は,モデルの適合度が高いことを示した(χ2(9)=17.8,p<.05,CFI=.99, RMSEA=.08, SRMR =.025)。
考 察
全学年で,教師主体の情緒的関わりは児童主体の関わりとともに学級適応感を高めている。一方,道具的関わりは,4年生では教師が主体となって児童主体の情緒的関わりを介して学級適応感を高めるが,6年生ではその主体は児童に取って代わられる。教師は情緒的関わりの主体のみである。教師から児童への情緒的関わりと児童から教師への道具的関わりによる相互依存的関係の意味を,今後検討する必要がある。
(本研究は科研費基盤C[16K04299]の助成を受けた)
教師-児童生徒関係研究は,教師による配慮や支援など教師主体の情緒的関係づくりに焦点を当てている。しかし,学習活動の成立と児童生徒の学級適応の上で,児童生徒も主体的に関係づくりに関わる相互依存的関係にあるという(Jenkins, 1951)。相互依存的関係とは何かについて,児童主体の関わりと関係の機能(道具性,情緒性)に注目し,学級適応感への効果から関係性を考察する。
方 法
調査対象と時期 A地域小学校3校4,5,6年生429名(男子200名,女子224名,不明5名),2016年10月。
尺度構成 すべて5件法である。
1.教師-児童関係尺度 項目については,主体性の所在(教師/児童)×主体的関わりの有無×関わりの機能(道具性/情緒性)の組み合わせ計8分類になるよう,先行研究(e.g., 藤田・森口,2015; 越・西條,2004; 弓削・松田,2003)を参考に作成した。専門家4名で項目をチェックし,最終的に6分類計24項目になった。
2.学級適応感尺度 浜名・松本(1993),江村・大久保(2102)の尺度を参考に,最終的に12項目を使用した。
3.担任教師への適応感尺度 4項目作成して評定させた(e.g.,先生といると落ち着く,安心する)。
結 果
1.教師―児童関係尺度の分析 探索的因子分析で得られた4因子構造(Table1参照)の確認的因子分析の結果,適合度は比較的高く(χ2(114) = 269.5, p<.0001, CFI= .96, RMSEA=.06),教師への適応感尺度(1因子)と各因子の相関も全て0.1%水準で有意な正相関であり,妥当性が確認された。
2.学級適応感尺度の分析 第1因子は「安心・充実感」,第2因子は「被信頼・受容感」であった。
3.教師-児童関係が学級適応感に及ぼす効果
学年を集団単位とした多母集団同時分析の結果(Figure1参照) は,モデルの適合度が高いことを示した(χ2(9)=17.8,p<.05,CFI=.99, RMSEA=.08, SRMR =.025)。
考 察
全学年で,教師主体の情緒的関わりは児童主体の関わりとともに学級適応感を高めている。一方,道具的関わりは,4年生では教師が主体となって児童主体の情緒的関わりを介して学級適応感を高めるが,6年生ではその主体は児童に取って代わられる。教師は情緒的関わりの主体のみである。教師から児童への情緒的関わりと児童から教師への道具的関わりによる相互依存的関係の意味を,今後検討する必要がある。
(本研究は科研費基盤C[16K04299]の助成を受けた)