The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表 PB(01-83)

ポスター発表 PB(01-83)

Sat. Oct 7, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PB58] 青年期の機能的ヘルス・リテラシー尺度の開発

functional health literacy scale for adolescents / young adults (funHLS-A/YA)

椿田貴史1, 川副延生#2, 市川真帆子#3 (1.名古屋商科大学, 2.名古屋商科大学, 3.名古屋商科大学)

Keywords:ヘルス・リテラシー, 健康に関する知識, 項目反応理論

近年,ヘルス・リテラシー(以下,HLと略)という考え方は健康増進や疾病防止,医療政策等を扱う健康科学分野において,重要性を増している。NutbeamはHLを1)保健医療の利用に際して求められる読み書き,耳にした語句の理解に関わる機能的なリテラシー,2)健康や疾病に関連するコミュニカティブ・リテラシー,3)得た情報や知識を判断する批判的リテラシーの3領域に分けている。HL研究の多くはNutbeamのモデルに基づいている。本研究では,青年期の発達段階に応じたHLの尺度を開発した上で,対象となった青年のHLの実態を把握する。この調査の分析結果を踏まえて,リテラシーの低い領域に対して,介入的な教育を行うことが目的である。ここでは,中学生・高校生版の機能的HL尺度(functional health literacy scale for adolescent; 以下funHLS-A)を項目反応理論に基づいて開発したので報告する。

方   法
尺度開発:保健師,臨床心理士,医療問題の専門家から構成されるメンバーで青年期に知っておくことが望ましい疾患や症状,体の仕組み,栄養,医療機関の利用等に関する知識24項目を選定した。客観的に知識の有無が測定できるように,以下のような形式とした。
 例)「統合失調症」に最も強く関連する言葉を一つ選んでください。わからない場合には「わからない」を選んでください。
  選択肢:「脱臼」「妄想」「下痢」「わからない」
調査対象:X県の中高一貫校に依頼し,全校生徒を調査対象とした。

結果と考察
一因子性の確認:確認的因子分析の結果,データに対する適合度が高いことが確認された(CFI = 0.963, TLI = 0.959, RMSEA = 0.031).Polyserial相関係数を確認したところ,1項目が0.2を下回っていたため,以降の分析から削除した。
予備的項目母数の推定:2パラメータモデルで困難度母数と識別母数を推定した。その結果,2項目において識別母数の異常値が検出されたため削除した。
最終の項目母数の推定:21項目を対象として項目母数を改めて推定した。その結果,すべての項目が許容範囲に収まった。困難度母数のレンジは-1.66から1.91,識別母数のレンジは0.43から1.23であった。
尺度の内的信頼性:McDonaldのω係数は0.85であった。
尺度の基準関連妥当性:本尺度の特徴は,客観的なHLを測定しようとする点にある。主観的なHLを測定する他の尺度と単純な相関関係があるとは考えられない。そこで,主観的なHLを測定するHLS-14(14-Item Health Literacy Scale for Japanese Adults modified for adolescents in Japan)の三次元の合計得点と本尺度の能力母数について潜在クラス分析をし,少なくとも1つのクラスが機能的HLと本尺度の能力母数との関連を示すことを妥当性の条件とした。その結果,1つのクラスが関連を示した(図1のClass2,一番上の三角折れ線グラフ。図内の能力母数は実際の数値の10倍とした)。
HLの先行要因:独立変数として,学年,性別,睡眠時間,朝食の頻度,各種相互作用項を強制的に投入した重回帰分析を実施した。一連の分析の結果,睡眠時間の長さはHLの能力母数に負の影響,朝食の頻度の多さは正の影響があることが判明し,両者の相互作用も認められた。
 以上の結果から,一定の信頼性と妥当性を有する尺度であることが確認された。また,各種先行する変数に影響を受けて,能力母数が上下することが明らかとなった。
限界:本尺度は提示した用語について読めることを前提に測定している。今後は,漢字の読みや数値の読み取り等を問う多面的な項目をプールして運用してゆきたい。