The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PB(01-83)

ポスター発表 PB(01-83)

Sat. Oct 7, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PB73] 教師の学級指導行動が児童の心理的欲求の充足に及ぼす影響

教師の学級指導行動尺度の作成

石田靖彦1, 下岡奈央#2 (1.愛知教育大学, 2.岩津小学校)

Keywords:教師の学級指導行動, 心理的欲求の充足, 小学校高学年

問題と目的
 Connell & Wellborn(1991)の基本的心理欲求理論では,社会的文脈としての教師の「方向づけ」「自律性支援」「関わり合い」が,児童の自律性,有能性,関係性といった心理的欲求を満たし,児童の学習行動に影響を及ぼすと仮定されている。
 本研究では,この理論に基づき,児童の自律性,有能性,関係性欲求に関連する,教師の学級での具体的な指導行動を測定する尺度を作成し,教師の学級指導行動が児童の自律性,有能性,関係性欲求の充足に及ぼす影響について検討した。
方   法
1.予備調査:教師の学級指導行動尺度の作成
 小中学校に勤務する教員100名を対象にして,基本的心理欲求理論について解説した上で,小学校高学年児童の自律性欲求,有能性欲求,関係性欲求を満たす教室での指導行動を「授業場面」と「授業以外の場面」に分けて自由に記述してもらった。得られた指導行動をKJ法により分類したところ,授業場面では「発言の促進」(例:先生は,授業でたくさんの子が発表する機会を作ってくれます),「関わり合い場面の設定」(例:先生は,授業で話し合って取り組む場面を作ってくれます),「目標設定と評価」(例:先生は,勉強について自分なりの目標を立てるように言います),「児童の主体性の尊重」(例:先生は,調べ学習などの内容を自分たちで自由に決めさせてくれます),授業以外の場面では「教師と児童の関係づくり」(例:先生は,クラスの一人ひとりに一日一回は声を掛けてくれます),「児童同士の関係づくり」(例:先生は,友達がしてくれて嬉しかったことを発表したり伝えたりする機会を作ってくれます),「児童の主体的な学級運営」(例:先生は,クラスのみんなが役割を持ち,仕事の内容を自分たちで考える機会を作ってくれます)のカテゴリーが生成された。各カテゴリーに4つの指導行動を抽出し,計28項目の「教師の学級指導行動尺度」を作成した。
 次に,各カテゴリーの内容的妥当性を検討するために,上記とは異なる小学校教師49名を対象にして,予備調査で作成された28の指導行動を,いずれのカテゴリーに属する行動かを分類してもらった。その結果,もっとも低い指導行動でも60%以上が想定したカテゴリーに分類され,各カテゴリーの内容的妥当性がある程度確認された。
2.本調査:教師の学級指導行動が児童の3つの心理的欲求の充足に及ぼす影響
調査対象 小学校5,6年生437名(男子205名,女子229名)。2016年10月~11月に実施した。
調査内容
1)教師の学級指導行動:予備調査で作成した教師の学級指導行動尺度28項目を使用した。児童には,担任の教師について「そう思う」~「そう思わない」の4件法で回答を求めた。
2)児童の3つの心理的欲求の充足:西村・櫻井(2015)の「基本的心理欲求充足尺度」を表現を修正して使用した。「そう思う」~「そう思わない」の4件法で回答を求めた。
結果と考察
 教師の7つの学級指導行動と児童の自律性,有能性,関係性の欲求充足との相関係数を算出したところ,r = .28~.44の有意な正の相関が示された。しかし教師の7つの指導行動にはr = .56~.76の内部相関があったため,各指導行動独自の影響を検討するために,ステップワイズ法による重回帰分析を行った(Table1)。その結果,児童の自律性欲求の充足には,「発言の促進」「児童同士の関係づくり」「児童の主体的な学級運営」がプラスの影響を及ぼし,有能性欲求と関係性欲求の充足には,「児童同士の関係づくり」と「児童の主体的な学級運営」がプラスの影響を及ぼしていた。これらの結果から,児童の心理的欲求の充足には,授業場面以外の指導行動が大きな影響を及ぼしており,授業場面以外での学級づくりの重要性が示唆された。