1:00 PM - 3:00 PM
[PB76] いじめられる側にも問題があるって本当ですか? その9
被害・加害経験および自己関連づけが被害者への有責性認知に及ぼす影響
Keywords:いじめ, 被害者への有責性認知, 自己関連づけ
問題と目的
いじめは,学校現場において困難な課題の一つである。解決を妨げている要因の中には,「いじめられる側にも問題がある」という被害者への有責性認知(竹川, 2002, 2010)が挙げられる。小山・福井(2014a)は,大学生にいじめ被害者と加害者の責任の比率を尋ねた結果,被害者にも20%弱の有責性を認知していること,いじめ加害経験のある男性で特に高くなることを明らかにした。また,小山・福井(2014b, 2015)は,その背後に罪悪感の低下があり,加害経験のある男性では特に低いことを見出した。さらに,被害・加害経験が正当世界信念(小山・福井, 2016a)や罪悪感(小山・福井, 2016b),統制の位置(小山・福井, 2017a)と交絡して,いじめ被害者への有責性認知に及ぼす影響を報告しているが,その他にも被害・加害経験の影響を調整する変数の存在が推測される。
自己関連づけは,出来事を被害妄想的に自分に関連づける傾向であるが,過度に自身に責任を負わせているとも考えられるため,被害者への有責性認知とも関連する可能性がある。小山・福井(2017)は,いじめ被害経験者は未経験の者に比べて,自己関連づけ得点が高いことを報告している。
そこで,本研究では,いじめ被害・加害経験と自己関連づけがいじめ被害者への有責性認知に及ぼす影響について検討した。
方 法
調査対象者:平均年齢19.77歳(SD =1.72)の大学生468名(女性257名,男性211名)の協力を得た。
尺度構成:いじめ被害・加害経験について聴取した。また,いじめ被害者と加害者の責任の比率を合計で100%になるように回答させた。また,自己関係づけの度合いを測定するために,自己関係づけ尺度(金子, 2000)を用いて合計得点を得た。用いたデータのうち,被害・加害経験や被害者責任の割合は,小山・福井(2014a, b, c, 2016a, b, c, 2017)や福井・小山(2015, 2016, 2017a,b)と同じものである。
結 果
性別といじめ被害・加害経験(ダミー変数化),自己関連づけを独立変数,さらにそれらの交互作用項を投入し,いじめ被害者への有責性認知(角変換済)を従属変数とした重回帰分析を行った。その結果,自己関連づけの主効果や,自己関連づけを含む一次の交互作用は有意ではなかったが,性別×加害経験×自己関連づけと被害経験×加害経験×自己関連づけの二次の交互作用が有意となった。そこで,それぞれについて単純交互作用や単純主効果の検定を実施した。その結果,男性で加害経験を有する群(β =-.384, p <.01)と,被害・加害経験をどちらも有する群(β =-.327, p <.01)において自己関連づけの負の主効果がそれぞれ有意となった。いずれの群においても,自己関連づけが低い場合にいじめ被害者への有責性認知が最も高くなった。角変換前の値を用いて,Figure 1に図示した。なお,既に一連の研究で報告済の有意な主効果(加害経験)や一次の交互作用(性別×加害経験)については,本稿では言及しない。
考 察
本研究の目的は,いじめ被害・加害経験と自己関連づけがいじめ被害者への有責性認知に及ぼす影響について検討することであった。その結果,自己関連づけを含む二次の交互作用が見られ,自己関連づけの主効果は,ある条件が揃ったときだけ,有意となることが分かった。
男性で加害経験を有する者は,罪悪感が低いことが分かっており(小山・福井, 2014b, 2015),否定的な出来事を自分のせいにしたりはしないと思われるが,自己関連づけの低さが加わるとその効果が強調されるかもしれない。また,被害経験は単独では有責性認知を減じるが,加害経験が伴い,さらに自己関係づけが低い場合は,逆に被害者への有責性認知が高まっていた。いずれにせよ,こうした群で自己関連づけが低いことは,被害者への有責性認知が高いことと表裏の関係になっていると思われる。こうしたメカニズムの解明が,いじめ問題解決の一助となるかもしれない。
いじめは,学校現場において困難な課題の一つである。解決を妨げている要因の中には,「いじめられる側にも問題がある」という被害者への有責性認知(竹川, 2002, 2010)が挙げられる。小山・福井(2014a)は,大学生にいじめ被害者と加害者の責任の比率を尋ねた結果,被害者にも20%弱の有責性を認知していること,いじめ加害経験のある男性で特に高くなることを明らかにした。また,小山・福井(2014b, 2015)は,その背後に罪悪感の低下があり,加害経験のある男性では特に低いことを見出した。さらに,被害・加害経験が正当世界信念(小山・福井, 2016a)や罪悪感(小山・福井, 2016b),統制の位置(小山・福井, 2017a)と交絡して,いじめ被害者への有責性認知に及ぼす影響を報告しているが,その他にも被害・加害経験の影響を調整する変数の存在が推測される。
自己関連づけは,出来事を被害妄想的に自分に関連づける傾向であるが,過度に自身に責任を負わせているとも考えられるため,被害者への有責性認知とも関連する可能性がある。小山・福井(2017)は,いじめ被害経験者は未経験の者に比べて,自己関連づけ得点が高いことを報告している。
そこで,本研究では,いじめ被害・加害経験と自己関連づけがいじめ被害者への有責性認知に及ぼす影響について検討した。
方 法
調査対象者:平均年齢19.77歳(SD =1.72)の大学生468名(女性257名,男性211名)の協力を得た。
尺度構成:いじめ被害・加害経験について聴取した。また,いじめ被害者と加害者の責任の比率を合計で100%になるように回答させた。また,自己関係づけの度合いを測定するために,自己関係づけ尺度(金子, 2000)を用いて合計得点を得た。用いたデータのうち,被害・加害経験や被害者責任の割合は,小山・福井(2014a, b, c, 2016a, b, c, 2017)や福井・小山(2015, 2016, 2017a,b)と同じものである。
結 果
性別といじめ被害・加害経験(ダミー変数化),自己関連づけを独立変数,さらにそれらの交互作用項を投入し,いじめ被害者への有責性認知(角変換済)を従属変数とした重回帰分析を行った。その結果,自己関連づけの主効果や,自己関連づけを含む一次の交互作用は有意ではなかったが,性別×加害経験×自己関連づけと被害経験×加害経験×自己関連づけの二次の交互作用が有意となった。そこで,それぞれについて単純交互作用や単純主効果の検定を実施した。その結果,男性で加害経験を有する群(β =-.384, p <.01)と,被害・加害経験をどちらも有する群(β =-.327, p <.01)において自己関連づけの負の主効果がそれぞれ有意となった。いずれの群においても,自己関連づけが低い場合にいじめ被害者への有責性認知が最も高くなった。角変換前の値を用いて,Figure 1に図示した。なお,既に一連の研究で報告済の有意な主効果(加害経験)や一次の交互作用(性別×加害経験)については,本稿では言及しない。
考 察
本研究の目的は,いじめ被害・加害経験と自己関連づけがいじめ被害者への有責性認知に及ぼす影響について検討することであった。その結果,自己関連づけを含む二次の交互作用が見られ,自己関連づけの主効果は,ある条件が揃ったときだけ,有意となることが分かった。
男性で加害経験を有する者は,罪悪感が低いことが分かっており(小山・福井, 2014b, 2015),否定的な出来事を自分のせいにしたりはしないと思われるが,自己関連づけの低さが加わるとその効果が強調されるかもしれない。また,被害経験は単独では有責性認知を減じるが,加害経験が伴い,さらに自己関係づけが低い場合は,逆に被害者への有責性認知が高まっていた。いずれにせよ,こうした群で自己関連づけが低いことは,被害者への有責性認知が高いことと表裏の関係になっていると思われる。こうしたメカニズムの解明が,いじめ問題解決の一助となるかもしれない。