The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PB(01-83)

ポスター発表 PB(01-83)

Sat. Oct 7, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PB78] ロールレタリングを導入した教育実習支援に関する研究

岡本泰弘 (金沢星稜大学)

Keywords:教育実習, ロールレタリング, エゴクラム

目   的
 教育実習は,教育職員免許状を取得するための必要要件であり,教職を目指す学生にとって,その決意を固める教職活動の貴重な実施学習の場である。
 伊藤(1998)の教育実習の前後での職業志向に関する調査では,教育実習後に教職志向が強まる「教職志向の変化」と教職志向が弱まる「非教職志向の変化」があり,橘川・小林(2013)は,教育実習のストレスにより,教員志望の強さが減少し,自尊感情が低下するとし,教育実習期間中に自己開示可能な環境を設定することで自尊感情が回復することを明らかにしている。
 ロールレタリングとは,1984年に春口徳雄が日本交流分析学会において,初めて提唱した心理療法である。自分自らが自己と他者の両者の視点に立ち,役割交換を行いながら,双方から交互に手紙で訴えるものである。自己の問題を自ら解決することで自尊感情の高揚や他者の立場に立って他者の気持ちを理解することで共感性の向上,ありのままの感情と思考の表現で自己開示することでストレスの軽減が期待できる心理療法である。
そこで,これまでの研究報告から得られた知見をもとに,教育実習生を対象に,ロールレタリングを教育実習に導入し,教育実習支援について究明していくことを目的とし,研究を行った。

方   法
 本研究の対象は,地方のA大学の中学教職課程の教育実習生の大学4年生(実験群)18名(男性11名,女性7名)とB大学の中学教職課程の教育実習生の大学4年生(統制群)16名(男性8名,女性8名)とした。実験群の教育実習生には,教育実習の事前,事中,事後にロールレタリングを各1回ずつ計3回実施した。すべての被験者には当研究の趣旨を書面にて説明し,同意後施行した。
施行前の調査は教育実習前に実施した。自尊感情尺度とエゴグラムの測定を行った。施行後の調査は教育実習期間(2週間)後,ロールレタリングを1回15分間,3往復,計3回行ったところで実施した。施行前と同様に,自尊感情尺度とエゴグラムの測定を行った。さらに,3往復,計6回のロールレタリングの記述内容やロールレタリングの内省報告から効果を検証することにした。なお,3往復,計6回のロールレタリングのテーマは「教育実習のクラスの生徒」とし,生徒理解を図りながら,自分自身や学校現場で生じる様々な問題や課題について考えさせるものとした。

結   果
 自尊感情尺度の得点の変化については,実験×時期の交互作用には有意差は認められなかったものの上昇傾向にあった(F=3.37,df1/32, p<.10)。エゴグラムの得点の変化については,NPにおいては,実験群における時期の主効果は有意に上昇した(F=7.15,df1/32,p<.05)。CP,A,FC,ACにおいては,実験×時期の交互作用は有意ではなかった。ロールレタリングの記述内容については,教育実習生A(女性)は,教育実習のクラスの生徒に対して,往信では「クラスのみんなが先生として,慕ってくれてとても嬉しいです。みんなの元気が先生を勇気づけてくれています」とし,その返信では,「先生の教え方はわかりやすいです。僕たちのためのことを思って,きっと一生懸命に授業の準備をしているのだと思います。実習が終わっても,ぜひ,良い先生になってください」と記述していた。ロールレタリング後の内省報告については,教育実習生B(男性)は「ロールレタリングをすることで,不思議と生徒が何を考えているかがわかるようになったし,常に生徒の視点で考える習慣が付いた」としていた。

結   論
 本研究では,教育実習生にロールレタリングという心理技法を教育実習に導入することで,エゴグラムのNPの自我状態の上昇,ロールレタリングの記述内容やロールレタリング後の内省報告による様々な気づきという結果から,教育実習生に対するロールレタリングの一定の効果を示すものとなった。
 なお,本研究の課題として,同一大学による統制群の設定ができなかったことから他大学を統制群と設定したことやロールレタリングを統一テーマで行ったため,実験群と統制群の同一校での設定と,ロールレタリング実施者の自尊感情に働きかける個々のロールレタリングのテーマ工夫の検討が必要である。