The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PB(01-83)

ポスター発表 PB(01-83)

Sat. Oct 7, 2017 1:00 PM - 3:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

1:00 PM - 3:00 PM

[PB83] 中学生の成人力

PIAACとPISAの問題による調査の結果

吉岡亮衛 (国立教育政策研究所)

Keywords:中学生, 成人力, PIAAC

問題と目的
 2013年に公表されたOECD国際成人力調査(PIAAC)の結果では,調査対象の16歳から65歳の成人の読解力と数的思考力において,日本は世界一であった。また,昨年公表されたOECD生徒の学習到達度調査(PISA2015)において,調査対象の15歳児はPIAAC実施国の中では読解力では5位,数学的リテラシーでは1位であった。どちらの調査においても日本は良い成績を示した。このこと次の疑問を呈する。
 1.調査問題が日本人向きの問題であったのではないか。
 2.日本の初等中等教育が優れており,必然的に国際調査で良い結果を残すのではないか。
 1.については国際センターで議論を尽くされ特定の国や言語に有利となる問題ではないことが保証されている。2.については少なくともPIAACの調査対象は16歳から65歳までを対象としており,調査対象者のほとんどは学校教育終了後の生活時間が長く,それゆえ職場や社会での学習の影響は否定できない。同時に行われた背景質問の結果からは,仕事や仕事外でのスキルの利用が読解力や数的思考力に影響を与えていることが示された。ただし,読解力はOECD平均よりも影響力は弱く,数的思考力はOECD平均レベルであった。
 PIAACの結果からは,成人力は20代後半から30歳頃がピークとなるように年齢が上がるに従って上昇しその後はゆるやかに低下することが示された。そこで本研究では,16歳までの年齢段階での成人力を測定することを目的として調査を行いその結果について報告する。
調査問題と調査の実施
 調査問題は,読解力と数的思考力についてPIAAC及びPISAの公開問題の中から習熟度レベルの測定が可能となるよう異なる習熟度レベルから最小の問題数を選択して作成した。調査対象者は,語彙や文章表現が理解できるであろう中学生から高校1年生の12歳から15歳を対象としたが,調査時期の関係で16歳児が若干数含まれた。調査は教室で担当教師の下で一斉に行う形式を取った。調査期間は,2016年1月から4月にかけて,高校1校と中学校2校で調査を実施した。回答者は,延べ939人,調査時期と対象学年の関係で年齢による人数は均等な人数にはなっていない。
調査結果と考察
(1)数的思考力
 PISA問題の結果から今回の調査に参加した15歳児は,ほぼ高校1年生と同レベルの数学的リテラシーを有している。全員の習熟度レベルは3あるいはそれ以上で,年齢を考慮すると今回の生徒は日本の平均よりも幾分成績優秀な生徒であると推測できる。
PIAAC問題について見てみると,全問正答した人数は,112名(23.9%)であった。かつこの問を正解する確率が67%として,16%がレベル4相当となり,これはPIAACでの日本の16歳の割合より高い。次にレベル3以上の割合を推定する。問5~問7の内の1つ以上を不正解または3問すべて正解でかつ問8,9のいずれも不正解をレベル2以下と仮定すると,レベル3以上は212人(45.2%)となる。ただし問7の難易度に若干疑問がもたれるため,問5または問6のどちらかでも不正解か,または両方正解かつ問8,9をともに不正解をレベル2以下と仮定すると,レベル3以上は375人(80.0%)となる。おそらく実際の割合は2つの値の間に存在すると考えられる。日本の成人のレベル3以上の割合は63.7%であり,今回の中学生もほぼ同等の割合を占めていることが予想できる。
(2)読解力
 一方読解力では,PISA問題では習熟レベル4以上の問の正答率については,12~13歳児は日本の平均を下回ったが14歳児は既にほぼ同等の習熟度レベルにあると言える。PIAACの問題は習熟度レベル2までの問しか用意できなかったが,ほぼ全員が正解しており,多くの生徒はレベル3以上にあるものと予想される。また,年齢による差はほとんどなかった。日本の成人のレベル3以上の割合は72.3%であったが,今回の中学生のレベル2以下の割合は30%以下と考えられるので潜在的な習熟度レベルは成人のそれと同等以上であると推定される。
 以上,今回の調査により,12歳から15歳の中学生において,PIAACの成人力に関しては既に一定程度身についていることが分かった。
 ※本研究は科研挑戦的萌芽15K13217の助成を受けて行った。