3:30 PM - 5:30 PM
[PC09] 児童期の情動発達とその特異性に関する研究4
「気になる」児童の行動特性と情動理解および共感との関連
Keywords:情動発達, 児童, 「気になる」子
問題と目的
本研究は,幼児期・児童期における情動発達のアセスメント・スケールを開発することを目的とした研究の一部である。本報告では,小学生の情動発達とその特異性に関する調査の結果に基づき,「気になる」児童の行動特性と情動理解および共感との関連を明らかにすることを目的とした。
方 法
1.調査対象:研究1に同じ。このうち,本報告では,「気になる」児童1071名(男児848名,女児223名)のデータを分析した。
2.調査時期:研究1に同じ。
3.調査内容:(1)情動発達:研究1に同じ。このうち,〈情動理解〉は「友だちのうれしい気持ちがわかる」「友だちの怒っている気持ちがわかる」「友だちの悲しい気持ちがわかる」の3項目だった。〈共感〉は「友だちのうれしい気持ちを自分のことのように感じる」「友だちの怒っている気持ちを自分のことのように感じる」「友だちの悲しい気持ちを自分のことのように感じる」の3項目だった。(2)行動特性:研究1に同じ。このうち本報告では研究2で抽出された3つの因子(【行動調整の困難さ】【ASD傾向】【学校適応の困難さ】)の項目を用いて,各因子の項目の平均得点が3未満を低群,3以上を高群として群分けを行った。
結果と考察
1.行動調整の困難さの程度と情動理解との関連:〈情動理解〉の得点について,行動調整の困難さの程度(2)×性(2)の2要因の分散分析を行った。その結果,行動調整の困難さの程度の主効果(p<.01)および性の主効果(p<.01)が有意であり,〈情動理解〉の得点は高群よりも低群のほうが高く,男児よりも女児のほうが高かった。
2.行動調整の困難さの程度と共感との関連:〈共感〉の得点について,行動調整の困難さの程度(2)×性(2)の2要因の分散分析を行った。その結果,性の主効果が有意(p<.01)であり,〈共感〉の得点は男児よりも女児のほうが得点が高かった。
3.ASD傾向の程度と情動理解との関連:〈情動理解〉の得点について,ASD傾向の程度(2)×性(2)の2要因の分散分析を行った。その結果,ASD傾向の程度の主効果(p<.01)および性の主効果(p<.01)が有意であり,〈情動理解〉得点は高群よりも低群のほうが高く,男児よりも女児のほうが高かった。
4.ASD傾向の程度と共感との関連:〈共感〉の得点について,ASD傾向の程度(2)×性(2)の2要因の分散分析を行った。その結果,ASD傾向の程度の主効果(p<.01)および性の主効果(p<.01)が有意であり,〈共感〉の得点は高群よりも低群のほうが高く,男児よりも女児のほうが高かった。
5.学校適応の困難さの程度と情動理解との関連:〈情動理解〉の得点について,学校適応の程度(2)×性(2)の2要因の分散分析を行った。その結果学校適応の程度の主効果(p<.01)および性の主効果(p<.01)が有意であり,〈情動理解〉得点は高群よりも低群のほうが高く,男児よりも女児のほうが高かった。
6.学校適応の困難さの程度と共感との関連:〈共感〉の得点について,学校適応の程度(2)×性(2)の2要因の分散分析を行った。その結果,学校適応の程度の主効果(p<.01)および性の主効果(p<.01)が有意であった。また学校適応と性の交互作用も有意(p<.05)であった。単純主効果検定の結果,低群において性差が見られ,女児のほうが共感得点が高かった。また女児において学校適応の困難さの高低に差が見られ,低群の共感得点が高かった。
*なお,本研究は科学研究費補助金(基盤研究B)「幼児期・児童期の情動発達アセスメント・スケールの開発と保育・教育への応用」(研究代表:本郷一夫)の助成を受けて行われた。
本研究は,幼児期・児童期における情動発達のアセスメント・スケールを開発することを目的とした研究の一部である。本報告では,小学生の情動発達とその特異性に関する調査の結果に基づき,「気になる」児童の行動特性と情動理解および共感との関連を明らかにすることを目的とした。
方 法
1.調査対象:研究1に同じ。このうち,本報告では,「気になる」児童1071名(男児848名,女児223名)のデータを分析した。
2.調査時期:研究1に同じ。
3.調査内容:(1)情動発達:研究1に同じ。このうち,〈情動理解〉は「友だちのうれしい気持ちがわかる」「友だちの怒っている気持ちがわかる」「友だちの悲しい気持ちがわかる」の3項目だった。〈共感〉は「友だちのうれしい気持ちを自分のことのように感じる」「友だちの怒っている気持ちを自分のことのように感じる」「友だちの悲しい気持ちを自分のことのように感じる」の3項目だった。(2)行動特性:研究1に同じ。このうち本報告では研究2で抽出された3つの因子(【行動調整の困難さ】【ASD傾向】【学校適応の困難さ】)の項目を用いて,各因子の項目の平均得点が3未満を低群,3以上を高群として群分けを行った。
結果と考察
1.行動調整の困難さの程度と情動理解との関連:〈情動理解〉の得点について,行動調整の困難さの程度(2)×性(2)の2要因の分散分析を行った。その結果,行動調整の困難さの程度の主効果(p<.01)および性の主効果(p<.01)が有意であり,〈情動理解〉の得点は高群よりも低群のほうが高く,男児よりも女児のほうが高かった。
2.行動調整の困難さの程度と共感との関連:〈共感〉の得点について,行動調整の困難さの程度(2)×性(2)の2要因の分散分析を行った。その結果,性の主効果が有意(p<.01)であり,〈共感〉の得点は男児よりも女児のほうが得点が高かった。
3.ASD傾向の程度と情動理解との関連:〈情動理解〉の得点について,ASD傾向の程度(2)×性(2)の2要因の分散分析を行った。その結果,ASD傾向の程度の主効果(p<.01)および性の主効果(p<.01)が有意であり,〈情動理解〉得点は高群よりも低群のほうが高く,男児よりも女児のほうが高かった。
4.ASD傾向の程度と共感との関連:〈共感〉の得点について,ASD傾向の程度(2)×性(2)の2要因の分散分析を行った。その結果,ASD傾向の程度の主効果(p<.01)および性の主効果(p<.01)が有意であり,〈共感〉の得点は高群よりも低群のほうが高く,男児よりも女児のほうが高かった。
5.学校適応の困難さの程度と情動理解との関連:〈情動理解〉の得点について,学校適応の程度(2)×性(2)の2要因の分散分析を行った。その結果学校適応の程度の主効果(p<.01)および性の主効果(p<.01)が有意であり,〈情動理解〉得点は高群よりも低群のほうが高く,男児よりも女児のほうが高かった。
6.学校適応の困難さの程度と共感との関連:〈共感〉の得点について,学校適応の程度(2)×性(2)の2要因の分散分析を行った。その結果,学校適応の程度の主効果(p<.01)および性の主効果(p<.01)が有意であった。また学校適応と性の交互作用も有意(p<.05)であった。単純主効果検定の結果,低群において性差が見られ,女児のほうが共感得点が高かった。また女児において学校適応の困難さの高低に差が見られ,低群の共感得点が高かった。
*なお,本研究は科学研究費補助金(基盤研究B)「幼児期・児童期の情動発達アセスメント・スケールの開発と保育・教育への応用」(研究代表:本郷一夫)の助成を受けて行われた。