3:30 PM - 5:30 PM
[PC43] 閲覧時の教示方法が後の検索行動に与える影響(2)
サイトの有用性評価に焦点を当てて
Keywords:情報検索, 情報教育, 教育方法
問 題
本研究の目的は,情報検索に習熟していない学生に対して,検索過程の認知的な情報処理負担を軽減しながら行う情報検索教育方法を策定することである。本実験では, 特に検索結果閲覧過程に焦点を当てる。検索結果を閲覧する際に,サイト内容を吟味し, 適切な情報を選択することは重要であるが, 大学生でも情報源の信頼性評価スキルが不充分な者がいることも報告されている(後藤, 2006)。このような問題を考慮し, ここでは検索結果の模擬閲覧課題実施過程における教示が学生のサイト評価に影響をもたらすか検討を行った。
方 法
参加者:大学生51名(男性36:女性15,平均年齢19.59, SD1.3)
要因:教示提示方法(遂次提示群25名,一括提示群26名)
手続と課題:実験者が実験手順を説明し,練習課題を行った後,参加者は画面のインストラクションを読みながら4つの模擬閲覧課題を一人で行った。検索目的は全て「授業で課題として出されたレポート作成のための調べもの」であった。各課題の検索結果として,実在するサイトを8つ提示した。課題2のみ,サイト閲覧前後に参加者に行った教示提示方法が群により異なった。遂次提示群には,情報収集を行う際の注意点を,一部質問形式を用いながらサイト閲覧時に逐次的に提示した。一括提示群には,同一の教示を検索結果一覧が表示される前にまとめて読ませた。他の課題は全ての参加者が同一条件で実施した。
課題1,2…緑茶orコーヒーの健康への影響
課題3…グルコサミンの健康への影響
課題4…建物に太陽光発電設備を設ける是非
(課題4は必ず3サイト閲覧, 他は3サイトまで閲覧可)
各課題のサイト閲覧終了後,参加者は内容を閲覧していないもの(サイト要約内容などは確認可能)も含め有用と思われる順にサイトを並べ替えるなどの事後質問に回答した。全ての課題終了後,課題4に関する質問紙を実施した。
結果と考察
ここでは, 各課題のサイト閲覧後に実験参加者が行ったサイトの有用性の順位づけを元に分析を行った。参加者の順位づけに基づいて1位(8点)~8位(1点)の得点を与え, Friedman検定により各群内でサイトの評価傾向に差が見られるかどうか検討を行った。結果として, 課題2において逐次提示群のみ有意差が見られたが,
(χ2=15.82051, df=7, p<.05), 多重比較(Wilcoxonの符号付順位和検定, Bonferroni法による調整)において有意差は見いだされなかった。数値的には大学サイトや官公庁サイト2をより高く, Q&Aサイトをより低く評価していた。また課題4においても逐次提示群のみ有意差が見られた (χ2=19.07692, df=7, p<.01)。多重比較の結果, まとめサイト1を団体サイトよりも有用と判断していた。まとめサイト1と協会サイトの間には5%水準での有意差は見出されなかった。
教示の中にはサイト属性などに注目させる内容が含まれており, 逐次提示群では,課題2でサイト閲覧時に合わせて教示を行ったため,サイトの内容により注意を払い, 官公庁のような信頼性が高いサイトと, Q&Aサイトのような信頼性が保証されないサイトを区別する傾向にあったと考えられる。
その一方で, 課題4において逐次提示群は,官公庁と関連のある団体サイトを低く評価し,まとめサイトを高く評価した。課題2では, 課題1とサイトの類似性も高く,まとめサイトも知名度が高いサイトを取り上げ参加者にとって見慣れたものであることが想定されるが, 課題4では団体サイトもまとめサイトも比較的知名度が低く,信頼性の評価が困難だった可能性が考えられる。この点については今後, より詳細な検証が必要である。
この結果から, 教示の逐次提示による一定の効果があったことが示唆される。その一方で新たに接するサイトにおいて適切な情報の信頼性評価を行うことができる教示条件を今後検討する必要がある。
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本研究は科学研究費補助金(挑戦的萌芽研究16K13475)による助成を受けて行った。
本研究の目的は,情報検索に習熟していない学生に対して,検索過程の認知的な情報処理負担を軽減しながら行う情報検索教育方法を策定することである。本実験では, 特に検索結果閲覧過程に焦点を当てる。検索結果を閲覧する際に,サイト内容を吟味し, 適切な情報を選択することは重要であるが, 大学生でも情報源の信頼性評価スキルが不充分な者がいることも報告されている(後藤, 2006)。このような問題を考慮し, ここでは検索結果の模擬閲覧課題実施過程における教示が学生のサイト評価に影響をもたらすか検討を行った。
方 法
参加者:大学生51名(男性36:女性15,平均年齢19.59, SD1.3)
要因:教示提示方法(遂次提示群25名,一括提示群26名)
手続と課題:実験者が実験手順を説明し,練習課題を行った後,参加者は画面のインストラクションを読みながら4つの模擬閲覧課題を一人で行った。検索目的は全て「授業で課題として出されたレポート作成のための調べもの」であった。各課題の検索結果として,実在するサイトを8つ提示した。課題2のみ,サイト閲覧前後に参加者に行った教示提示方法が群により異なった。遂次提示群には,情報収集を行う際の注意点を,一部質問形式を用いながらサイト閲覧時に逐次的に提示した。一括提示群には,同一の教示を検索結果一覧が表示される前にまとめて読ませた。他の課題は全ての参加者が同一条件で実施した。
課題1,2…緑茶orコーヒーの健康への影響
課題3…グルコサミンの健康への影響
課題4…建物に太陽光発電設備を設ける是非
(課題4は必ず3サイト閲覧, 他は3サイトまで閲覧可)
各課題のサイト閲覧終了後,参加者は内容を閲覧していないもの(サイト要約内容などは確認可能)も含め有用と思われる順にサイトを並べ替えるなどの事後質問に回答した。全ての課題終了後,課題4に関する質問紙を実施した。
結果と考察
ここでは, 各課題のサイト閲覧後に実験参加者が行ったサイトの有用性の順位づけを元に分析を行った。参加者の順位づけに基づいて1位(8点)~8位(1点)の得点を与え, Friedman検定により各群内でサイトの評価傾向に差が見られるかどうか検討を行った。結果として, 課題2において逐次提示群のみ有意差が見られたが,
(χ2=15.82051, df=7, p<.05), 多重比較(Wilcoxonの符号付順位和検定, Bonferroni法による調整)において有意差は見いだされなかった。数値的には大学サイトや官公庁サイト2をより高く, Q&Aサイトをより低く評価していた。また課題4においても逐次提示群のみ有意差が見られた (χ2=19.07692, df=7, p<.01)。多重比較の結果, まとめサイト1を団体サイトよりも有用と判断していた。まとめサイト1と協会サイトの間には5%水準での有意差は見出されなかった。
教示の中にはサイト属性などに注目させる内容が含まれており, 逐次提示群では,課題2でサイト閲覧時に合わせて教示を行ったため,サイトの内容により注意を払い, 官公庁のような信頼性が高いサイトと, Q&Aサイトのような信頼性が保証されないサイトを区別する傾向にあったと考えられる。
その一方で, 課題4において逐次提示群は,官公庁と関連のある団体サイトを低く評価し,まとめサイトを高く評価した。課題2では, 課題1とサイトの類似性も高く,まとめサイトも知名度が高いサイトを取り上げ参加者にとって見慣れたものであることが想定されるが, 課題4では団体サイトもまとめサイトも比較的知名度が低く,信頼性の評価が困難だった可能性が考えられる。この点については今後, より詳細な検証が必要である。
この結果から, 教示の逐次提示による一定の効果があったことが示唆される。その一方で新たに接するサイトにおいて適切な情報の信頼性評価を行うことができる教示条件を今後検討する必要がある。
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本研究は科学研究費補助金(挑戦的萌芽研究16K13475)による助成を受けて行った。