The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PC(01-83)

ポスター発表 PC(01-83)

Sat. Oct 7, 2017 3:30 PM - 5:30 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

3:30 PM - 5:30 PM

[PC47] 子どもの家庭でのPC利用環境を規定する要因

ケイパビリティ・アプローチの観点から

黒石憲洋1, 斎藤俊則#2 (1.白百合女子大学生涯発達研究教育センター, 2.星槎大学)

Keywords:デジタル・ディバイド, ケイパビリティ・アプローチ

問   題
 情報へのアクセスは社会への参画を規定する側面があり,デジタル・ディバイド(情報通信技術を利用できる者と利用できない者との間に生じる格差)が社会的格差を維持・助長する可能性が指摘されている。子どものデジタル環境は,社会全体に及ぼす影響も考慮して検討されるべき問題である。
 学校教育の中で一定のデジタル環境が与えられている一方で,家庭におけるPCへのアクセス(インターネット・アクセスも含む)は,保護者の意向による部分が大きく,格差が生じやすいと考えられる。本研究では,ケイパビリティ・アプローチ(Sen, 1999)の観点から,子どもの家庭でのPC利用を可能にする要因について検討した。
方   法
 神奈川県A市の教育委員会の協力を得て調査を実施した。すべての市立小学校に通学する3~6年生およそ13,000名の保護者を対象に小学校を通じて質問紙を配布し,郵送により回収をおこなった。1,677名の保護者(母親1,428名,父親222名,その他27名)から回答があったが,母親からの回答のみを分析対象とした(回収数の85.2%)。子どもの性別の内訳は,男子635名,女性:654名,学年の内訳は3年生387名,4年生357名,5年生365名,6年生302名であった。
 家庭における子どものPC利用状況について,「インターネット接続を伴う利用」,「インターネット接続を伴わない利用」,「利用なし」の3件法に依り回答を求めた。親の学習観として,能動的学習観および受動的学習観を表現する各4項目の中から重要と考えるものを3つ選択させた。また,PC利用に対する態度として,PC利用に対する肯定的意見および否定的意見を表現する各4項目の中から重要と考えるものを3つ選択させた。さらに,子どものPC利用に最後に,人口統計学的情報として,保護者自身の学歴および家庭の年収を,子どもの性別,学年,きょうだいの有無を求めた。
結   果
 子どものPC利用状況については,「インターネット接続を伴う利用」を2,「インターネット接続を伴わない利用」を1,「利用なし」を0と得点化し,子どものPC利用容状況得点とした。親の学習観については,能動的学習観項目の選択を+1,受動的学習観項目の選択を-1とした合計を母親の主体的学習観得点とした。PC利用に対する態度については,肯定的意見の選択を+1,否定的意見の選択を-1とした合計をPCへの肯定的態度得点とした(いずれも得点可能範囲:-3~+3)。これらを基準変数とし,人口統計学的情報を説明変数として投入して重回帰分析をおこなった(下表参照)。
考   察
 子どもの男子で学年が低く,母親の学歴が高いほど,母親の主体的学習観が高かった。また,家庭の年収が高いほど,PCへの肯定的態度が高かった。さらに,子どもの学年が高く,母親の主体的学習観が高いほど,子どものPC利用を容認する傾向がみられた。
 本研究では,子どものPC利用を可能にする要因として,母親の学歴および主体的学習観が示唆されたが,父親の学歴や主体的学習観などを含めた総合的な検討が必要である。