3:30 PM - 5:30 PM
[PC52] 保育者の離職意思に影響する要因
業務困難感,昇進不希望,ならびに個人要因による検討
Keywords:保育者, 退職・離職, キャリア
問題と目的
筆者らによる退職決定者やその周辺関係者を対象とした一連のインタビュー調査(e.g.坂井・山本,2016)から,保育者退職の主要因として①介護・子育て・健康不安を主とした個人要因,②業務困難,③昇進(不安)の3つが示唆された。本研究では,保育者の離職意思の要因を,業務困難感,個人要因,昇進不希望の3つに焦点を当て検討することを目的とする。
方 法
対象 保育所・こども園の保育職員。
手続き S県内の公私立101園にアンケート票を送付した。個別に封筒が添えられ,回答者自身による封詰めの後,園責任者により回収され,調査者のもとに送られた。実施期間は2016年9~12月。
分析対象者 他職種を除いた1854名。
本研究分析対象質問事項 昇進等希望,介護・子や孫の世話・自身の健康に関する負担や不安,17種の業務に対する困難感,離職や異動の意向9項目),その他フェースシート。
結果と考察
困難感を感じる業務17項目の因子分析 最尤法(プロマックス回転)を用い,因子固有値1.0,因子負荷量.40以上を基準に3因子を見出した。第1因子は「行事の準備」「行事の企画」「個々の子どもの記録」などの項目で「園やクラスの企画・事務」と命名した(α=.89)。第2因子は「園の外での会議や打ち合わせ」「園外研修」「園内研修」などで「会議や研修」とした(α=.86)。第3因子は「後輩との関係」「同僚(調理師や看護師などを含む園職員)との関係」「実習生との関係」などで「人間関係」とした(α=.82)。第1・3因子の両方に負荷量の高かった「子どもとの関係」は因子分析では除き後続の分析では単独で用いることとした。また,公立園において,これらが役職によって差がみられるかを検討した(Figure1)。
離職等意向9項目の因子分析 最尤法(プロマックス回転)を用い,因子の固有値1.0,因子負荷量.40以上を基準に2因子を見出した。第1因子には保育職と職業そのものに関する6項目が該当(α=.83),第2因子には園に関する3項目が該当した(α=.82)。本研究では以後,第1因子を「離職意思」として分析に用いることとした。この尺度得点に関して,公立園における役職による有意差はみられなかった(F(3,810)=2.50,n.s.)。
離職意思の要因を検討する重回帰分析 離職意思を従属変数とし3ステップからなる階層的重回帰分析を行った。公立園の正規職員に関する分析結果をTable1に示した。結果から「園やクラスの企画・事務」に対する困難感と「昇進不希望」が離職意思の重大促進因であることが示唆された。
「園やクラスの企画・事務」は保育職の基幹となる業務である。また,「会議や研修」「人間関係」に対して副園長や園長の感じている困難感は高く,それを周囲の保育者が見て「昇進は辛いもの」と認識することが昇進不希望の要因となっている可能性がある。いずれも,養成・採用・研修の各過程で見直しや注力が検討されるべきであろう。
筆者らによる退職決定者やその周辺関係者を対象とした一連のインタビュー調査(e.g.坂井・山本,2016)から,保育者退職の主要因として①介護・子育て・健康不安を主とした個人要因,②業務困難,③昇進(不安)の3つが示唆された。本研究では,保育者の離職意思の要因を,業務困難感,個人要因,昇進不希望の3つに焦点を当て検討することを目的とする。
方 法
対象 保育所・こども園の保育職員。
手続き S県内の公私立101園にアンケート票を送付した。個別に封筒が添えられ,回答者自身による封詰めの後,園責任者により回収され,調査者のもとに送られた。実施期間は2016年9~12月。
分析対象者 他職種を除いた1854名。
本研究分析対象質問事項 昇進等希望,介護・子や孫の世話・自身の健康に関する負担や不安,17種の業務に対する困難感,離職や異動の意向9項目),その他フェースシート。
結果と考察
困難感を感じる業務17項目の因子分析 最尤法(プロマックス回転)を用い,因子固有値1.0,因子負荷量.40以上を基準に3因子を見出した。第1因子は「行事の準備」「行事の企画」「個々の子どもの記録」などの項目で「園やクラスの企画・事務」と命名した(α=.89)。第2因子は「園の外での会議や打ち合わせ」「園外研修」「園内研修」などで「会議や研修」とした(α=.86)。第3因子は「後輩との関係」「同僚(調理師や看護師などを含む園職員)との関係」「実習生との関係」などで「人間関係」とした(α=.82)。第1・3因子の両方に負荷量の高かった「子どもとの関係」は因子分析では除き後続の分析では単独で用いることとした。また,公立園において,これらが役職によって差がみられるかを検討した(Figure1)。
離職等意向9項目の因子分析 最尤法(プロマックス回転)を用い,因子の固有値1.0,因子負荷量.40以上を基準に2因子を見出した。第1因子には保育職と職業そのものに関する6項目が該当(α=.83),第2因子には園に関する3項目が該当した(α=.82)。本研究では以後,第1因子を「離職意思」として分析に用いることとした。この尺度得点に関して,公立園における役職による有意差はみられなかった(F(3,810)=2.50,n.s.)。
離職意思の要因を検討する重回帰分析 離職意思を従属変数とし3ステップからなる階層的重回帰分析を行った。公立園の正規職員に関する分析結果をTable1に示した。結果から「園やクラスの企画・事務」に対する困難感と「昇進不希望」が離職意思の重大促進因であることが示唆された。
「園やクラスの企画・事務」は保育職の基幹となる業務である。また,「会議や研修」「人間関係」に対して副園長や園長の感じている困難感は高く,それを周囲の保育者が見て「昇進は辛いもの」と認識することが昇進不希望の要因となっている可能性がある。いずれも,養成・採用・研修の各過程で見直しや注力が検討されるべきであろう。