The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PC(01-83)

ポスター発表 PC(01-83)

Sat. Oct 7, 2017 3:30 PM - 5:30 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

3:30 PM - 5:30 PM

[PC63] 健診時要フォロー児の適応状況に関する教師と保護者の認識

就学前の健診から小学校高学年までの縦断調査から

若林紀乃1, 福元理英#2, 野邑健二#3 (1.名古屋大学, 2.名古屋大学, 3.名古屋大学)

Keywords:発達障害, 健診, 学校適応

問題と目的
 我が国において,発達障害児に対する早期発見・支援に関する知見は数多く蓄積されているものの,支援を受けた児の長期的な適応状況を追跡した研究は未だ少ない。さらに,学校と家庭の適応状況の違いを縦断的に検討した研究はほとんどみられない。そこで,本発表では,小学1年時点と小学5年時点における児童の適応状況について教師と保護者の評定の違いを縦断的に検討するとともに,健診時要フォロー状況との関連を探る。
方   法
<対象>平成17年度にA県B町にて出生した全ての子どもを対象に,3歳児健診(241名受診),5歳児健診(258名受診),小学1年学校適応調査(対象児276名),小学5年学校適応調査(対象児254名)を行ない保護者の同意を得て分析した。本研究では4時点全てにおいてデータが得られた児童183名のうちデータに欠損のない児童164名を対象とした。
<手続き>1)健診でのフォロー状況:164名の児童について要フォローとなった健診に基づき3群(3健群(38名):3歳児健診のみ,5健群(6名):5歳児健診のみ,両健群(31名):両方の健診)に,両方の健診ともフォローされなかった児を無し群(89名)にそれぞれ分類した。 2)適応状況:本研究の対象児を小学1年時点で調査・分析した岡田ら(2016)に準じ,SDQを用いて小学5年時点の子どもの適応状況を教師と保護者にたずねた。全般的困難度(TDS)を算出後,岡田ら(2016)の評定基準に従い,High NeedとSome Need,Low Needに分類した。なお,分析に際しては,同論文で示されたカットオフに従いHigh NeedとSome Needを同群に分類しLow Needと2群にて行った。(詳しい質問項目・基準については発表時に提示予定) 3)倫理的配慮:本研究は第一発表者が所属する機関の倫理審査委員会による承認を得て,保護者の同意のもとに実施された。
結   果
<SDQの教師評定と保護者評定の関連>小学5年時点での教師評定SDQと保護者評定SDQとの相関係数を算出したところ,TDSにおいて中程度の正の相関がみられた(r=.45)。さらに,教師評定SDQ(Mean=6.31, SD=5.28)と保護者評定SDQ(Mean=8.16, SD=5.36)についてt検定を行ったところ有意差が認められた(t=4.25,p<.001)。なお,小学1年時点でも同様の結果が得られている(岡田ら,2016)。また,SDQの小学1年時点から小学5年時点への評定の変化を検討するため,各時点でLow Need であったかHigh Need・Some Needであったかについてそれぞれの人数を求めた。164名中,2時点ともにLow Need であった児童は教師評定124名(75.6%)・保護者評定116名(70.7%),2時点ともにHigh Need・Some Needであった児童は教師評定12名(7.3%)・保護者評定21名(12.8%)であった。なお,2時点で評定が変化した児童は教師評定28名(17.1%)・保護者評定27名(16.5%)であり,教師評定と保護者評定との間に評定の変化における大きな違いはみられなかった。
<健診時要フォロー状況とSDQの関連>健診時要フォロー状況別に小学1年時点および小学5年時点でのSDQを検討したところ,2時点で継続してHigh Need・Some Needであった児童は,3健群の38名中,教師評定0名・保護者評定5名,5健群の6名中,教師評定0名・保護者評定1名,両健群の31名中,教師評定8名・保護者評定9名,なし群の89名中,教師評定3名・保護者評定6名であった。そのうち,教師と保護者が一致して2時点でHigh Need・Some Needと評定した児童は両健群の6名のみであった。
考   察
 以上の結果から,教師より保護者の方が児童のTDSを高く評定しがちであるが,教師と保護者の適応状況に対する認識に大きな違いはみられず,継続して適応困難と評定される児童は学校,家庭ともに全体の1割程度であることが窺われた。また,健診時のフォロー状況との関連を検討したところ,小学校の2時点で継続してHigh NeedまたはSome Needであった児童は,両健群に比較的多く,かつ教師と保護者が一致して継続した適応困難を認識している児童は両健群のみであったことから,学校と家庭が連携して就学前から児童期への継続的な支援を行なうことが重要であると考えられる。
引用文献
岡田香織・柴田由己・能島頼子・小島里美・福元理英・野邑健二 (2016). 教師による児童の適応状況のStrengths and Difficulties Questionnaire(SDQ)を用いた評価-臨床評価,保護者による評価との関連 児童青年精神医学とその近接領域,57,310-322.