The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PC(01-83)

ポスター発表 PC(01-83)

Sat. Oct 7, 2017 3:30 PM - 5:30 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

3:30 PM - 5:30 PM

[PC72] 就職が決定したことにかかる自己の選択に対する自己評価分類の試み

就職内定後のインタビュー調査から

大谷哲弘1, 山本奬2, 竹下浩3 (1.岩手大学大学院, 2.岩手大学大学院, 3.職業能力開発総合大学校)

Keywords:高校生, 就職, 納得

問題と目的
 「その会社に行きたい」と納得することは,実際に組織の中に入って,その中でキャリアを形成していく上で必要なことと指摘されている(仙田, 1995)。つまり,進路選択における自己評価を検討する上で,「納得」は重要な観点であると考える。先行研究では,この納得に関して仙田(1995)や若松(2013)で検討されている。しかし,いずれも1項目によるもので,質的に検討する余地が残されていると考える。そこで本研究では,就職が決定したことにかかる自己の選択に対する自己評価の内容にはどんなものがあるかを検討し,納得度による差を明らかにすることを目的とする。
方   法
調査対象者:A県内の高等学校7校の校長に,研究の目的,方法,個人情報の取り扱い等を説明し,許可を得た。その上で,各校の進路指導担当教員に,企業から内定を得ている者の中で①入学時から一貫して就職を希望していた者,②進学から就職に志望変更があった者で,さらに,①および②の者で,③一度目の受験で内定した者と④複数の受験の後に内定した者を選定の基準として依頼した。その結果,3年生の就職内定者30人(男子22人,女子8人;工業科11人,商業科12人,普通科7人)から協力が得られた。
調査時期と手続き:データ収集は,半構造化面接を用いて,すべて第一筆者が実施した。データを収集した時期は,2017年1月~2月であった。インタビュー開始時に,改めて本研究の目的や情報の取り扱い,倫理的配慮(回答の中止や拒否の権利について)を口頭と用紙提示により説明した。また,内容の研究目的使用とICレコーダーによる録音について同意を得た。インタビューのガイドラインは,内定に至るプロセスと,①進路選択に対する自己評価,②選択に対する納得度(10段階評価)であった。
結果と考察
 インタビューデータについて,心理学の専門家2人で内容分析を行った。まず,インタビューデータを内定に関する自己評価に関して語っている188個を抽出した。その188個のデータをカテゴリーに分類し,各カテゴリーの内容に適したカテゴリー名をつけた。その結果,【覚悟】【条件の評価】【決定への肯定的評価】【現実との折り合い】【上手なあきらめ】【妥協】【後悔】【自己決定】【自己決定のための方略】【成長感】【自己実現】【就業上の不安】【将来の不安】【就職までの生活】【就業上の見通し】【将来の展望】【被承認感】【有意味性】【安心感】【楽観的】の20カテゴリーが生成された。
 次に,データを時制(未来/現在/過去)と評価(肯定的/否定的)の観点で分類し,その分類ごとに納得度(M=7.51)について,8~10を納得度高群(以下;高群),7以下を納得度低群(以下;低群)とした(Table1)。時制ごとに,Fisher の直接確率検定を行ったところ,過去において度数に有意な差があった。具体的には,肯定的評価は高群,否定的評価は低群の度数が有意に多かった。このことから,高校生の評価は過去にのみ焦点を当てていると考えられた。また,未来と現在については意図的に検討しないと高校生の反応をとらえることが難しいことが考えられた。