The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PC(01-83)

ポスター発表 PC(01-83)

Sat. Oct 7, 2017 3:30 PM - 5:30 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

3:30 PM - 5:30 PM

[PC74] 模擬ケース会議短縮版の検討

多職種理解に焦点を当てて

荊木まき子1, 森田英嗣2 (1.就実短期大学, 2.大阪教育大学)

Keywords:模擬ケース会議, 短縮版, 多職種連携教育

問題と目的
 これまで多職種連携教育の一環として,多職種が支援を検討する機会である模擬ケース会議の検討を行い,その効果が確認されてきた(荊木・森田・鈴木,1025・2016)。しかしこれらの演習は,3限分が必要ということもあり,より簡便な方法での実施が期待されてきた。
 従って本研究では,従来の模擬ケース会議(荊木・森田・鈴木,2015)の短縮版を開発し,その効果を検証した。
方   法
対象:養護教諭養成課程学生
時期:2016年7月
実施講義:A)事前に研究で使用することを説明し,許可を得た。その後,質問紙にて養護教諭,担任,管理職,SC,SSWの専門知識や支援の内容を質問し,自由記述で回答を求めた。5人班を作り,養護教諭,担任,校長,SC,SSWの役割を与えた。
B)情報カード実習(柳原,1976)により,中学2年女子のリストカット事例による模擬ケース会議を行った。ランダムに,2つの作業班に分けた。一方の班は6枚の情報カードをもとに,ワークシートに情報を整理し,状況を確認した(以後,情報整理班と示す)。他方の班は,まとめた情報が書かれたカンファレンスシート(大阪府教育委員会,2006)を渡し,A子を支援する支援計画を考えてもらった(以後,支援計画立案班と示す)。両班にはケース会議の説明を記した指示書,各役割に対し6枚の情報カード,各自の専門性を書いた役割カードを渡し,口頭のやり取りを指示した。
C)情報整理班がケース会議の経緯を説明し,支援計画立案班が,「アセスメントの結果明らかになったこと」「確認すべきこと」「長期的な支援計画」「短期的な支援計画」「課題にあった役割分担」を発表した。
E)発表終了後に2回目の質問紙調査を実施した。
分析方法:a)2回の質問紙調査について,教材作成時に各専門領域として想定した部分と,受講生が考えた部分を分けて,キーワードを書き出した。
b)各回でのキーワードの頻出度数を累積で換算した。無回答は,回毎の換算とした。
c)3限分実施した結果(荊木・森田・鈴木,2016)を通常版,本研究の結果を短縮版としてpre・postを比較し,質問紙調査の実施回毎にχ2検定,少ない度数は直接確率検定にて検討した。
d)情報整理班と支援計画立案班を比較し,回毎にχ2検定,少ない度数は直接確率検定にて検討した。
結果と考察
 演習の事前・事後における各専門性でのキーワードの頻出数において,短縮版で多く見られたものは,事前での養護教諭の【養護】,管理職の【学校運営】,事後での養護教諭の【中立的存在】であった。通常版で多く見られたものは,事後での管理職の【警察との連携や提案】,SCの【A子の置かれている状況を判断】,SSWの【DV支援の現況確認】,【福祉面接設定の指示】,【心理的支援】であった。担任の専門性理解は,差がなかった。
 通常版と短縮版の比較では,短縮版は自分の専門領域について専門性理解は可能であるが,他の専門性は通常版と比較して,より深い理解とはなりづらい可能性が考えられた。そのため,短縮版の使用では,これらの不足する理解をどのように補足するかが今後の課題になると考えられた。
 会議手法の比較より差を見たところ,情報整理班で多く見られた専門性は,事後での養護教諭の【健康相談】,支援計画立案班で多く見られたのは,事前でのSCの【児童生徒面接】,SSWの無回答,事後でのSCの【児童生徒面接】であった。管理職・担任の専門性は,両群に差は見られなかった。
 会議手法の比較について,情報整理班は養護教諭が本会議の話題提供者としてケース会議を始めていることが印象に残った可能性がある。支援計画立案班では,事前事後とも数値に有意な差が見られないため,変化がなかったと考えられた。会議手法の種別の違いが上述の差に留まった理由として,発表の機会を設けたことで,相互の体験できなかった部分を共有し,体験の不足を補ったと考えられた。また受講者の感想から,連携や情報の共有を実感した記述が見られ,実施について一定の意義はあると考えられた。
 これらのことから短縮版の使用は通常版と比較して,専門性の理解については課題が見られたが,多職種協働の意義については同程度の理解が見いだせた。専門性理解の不足を補完するには,各専門性に関する補足資料等での講義が必要になると考えられた。