The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PC(01-83)

ポスター発表 PC(01-83)

Sat. Oct 7, 2017 3:30 PM - 5:30 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

3:30 PM - 5:30 PM

[PC78] 大学生の抑うつ傾向に対する介入効果の検討(5)

性別によるLAC法の特徴

松本麻友子1, 中島奈保子2 (1.神戸親和女子大学, 2.金城学院大学)

Keywords:生活分析的カウンセリング法(LAC法), 抑うつ, 性差

問題と目的
 大学生を対象とした生活分析的カウンセリング法(LAC法)は抑うつの悪化への予防に役立つことが示唆されている(中島・松本,2014)。LAC法を用いることにより,日常生活を見直し,目標を細分化し,小さな目標を達成する体験を積み重ねながら最終目標に近づいていくことは,学生の自己効力感を高め,ひいては抑うつの予防・軽減につながると考えられる。しかし,これまでの研究では調査対象者の性別に偏りがあり,LAC法の効果に性差がみられるのかについてはまだ十分に検討されていない。今後,LAC法の有効性をさらに高め,効果的に活用するためには効果の差異を検討し,介入方法の改訂を行う必要があると考えられる。そこで,本研究ではLAC法の効果に性差があるかどうか詳細に検討することを目的とする。

方   法
調査対象者 
 心理学関係の講義を受講する大学生を対象とした。講義は選択科目でガイダンス時に講義にそった内容でLAC法を行うことを説明し同意を得た上で実施した。また,結果や回答の有無は講義の成績とは無関係であることを伝えた。本研究ではデータのそろった63名(男性19名,女性44名,平均年齢20.10歳,SD=1.01)を分析対象とした。
質問紙の構成 
 抑うつ 島・鹿野・北村・浅井(1985)によるCES-Dの日本語版を用いた(20項目,4件法)。
手続き 
 LAC法実施前に1回目の質問紙調査(Time1)を行い,続いて1回目のLAC法を実施した。さらに,1か月後に2回目の質問紙調査(Time2)と2回目のLAC法を行い,Time2から1か月後に3回目の質問紙調査(Time3)を実施した。なお,本研究のLAC法は中島・松本(2014)を参考にした。LAC法の手続きとして,1回目のLAC表作成時は,対象者に1か月間の目標として「現在やらなければならないこと」や「やりたいこと」を黄色の付箋紙に書き出してもらい,2回目のLAC表作成時には「現在やらなければならないこと」を青色の付箋紙,「やりたいこと」をピンク色の付箋紙に書き出してもらった。

結果と考察
LAC法による抑うつ低減効果と性差 
 抑うつ得点について性別×時期の2要因分散分析を行った。その結果,抑うつについて主効果および交互作用は有意でなかった(時期:F(2,122)= 1.91,ns;性別:F(1,61)= 0.29,ns;交互作用:F(2,122)= 2.75,ns)。
LAC法の性差
 目標数(付箋紙の枚数) まず,1回目のLAC法において目標数に性差があるかを検討するためにt 検定を行った。その結果,目標数は女性の方が男性より有意に多いことが示された(t (26.44)= 2.42,p<.05)。続いて,Time2からTime1の得点を引いた抑うつの変化量得点を算出し,目標数との関連を男女ごとに検討したところ有意な関連は示されなかった(男性:r =-.21,ns;女性:r = .01, ns)。続いて,2回目のLAC法における目標数(やらなければならないこと(青色の付箋紙)・やりたいこと(ピンク色の付箋紙))とその割合(ピンク/青)について検討したところ,有意な差は示されなかった(青:t (61) = 1.24,ns;ピンク:t (61)= 1.51,ns;割合:t (61) = 0.32,ns)。続いて,Time3からTime2の得点を引いた抑うつの変化量得点を算出し,目標数や割合との関連を男女ごとに検討したところ男性のみピンク色の付箋紙の枚数と抑うつの変化量に有意な負の相関が示された(r = -.48, p<.05)。
 目標達成の割合 1回目のLAC法で記載した目標の達成の程度について性差があるかどうか検討したところ,有意な差はみられなかった(t (61) = 0.98,ns)。続いて,Time2からTime1の得点を引いた抑うつの変化量得点と目標達成との関連を調べたところ,有意な関連は示されなかった(男性:r =-.18,ns;女性:r =-.23,ns)。
 LAC法には男女で効果に有意な差は認められなかった。初回の目標数や目標達成の程度と抑うつの変化量に有意な関連が示されなかったことから,今後はLAC法による介入を行う際に,目標数や目標達成に焦点化せず,目標を明確化できるように促していく必要がある。

謝   辞
本研究はJSPS科研費 JP16K21523の助成を受けたものである。