The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PD(01-83)

ポスター発表 PD(01-83)

Sun. Oct 8, 2017 10:00 AM - 12:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 AM - 12:00 PM

[PD02] 中学生のいじめ場面における援助不安と共感性の関連

石川隆行1, 中村真#2, 米山正文#3, 清水奈名子#4, 澤田匡人5 (1.宇都宮大学, 2.宇都宮大学, 3.宇都宮大学, 4.宇都宮大学, 5.宇都宮大学)

Keywords:中学生, いじめ場面, 援助不安

問題と目的
 学校現場が抱える課題として,いじめがあげられ,依然として深刻な問題であることは周知の事実である。これまで多くの心理学的アプローチが,いじめ問題の解決に貢献しているなかで,さらなる新たな知見を提供することが重要である。そこで,本調査では,中学校1年生と中学校3年生を対象として,いじめをうけた際にどのような行動をするのかを測定し,援助不安と共感性の関連を検討することを目的とした。
方   法
調査対象者 中学校1年生353名(男子179名,女子174名),中学校3年生352名(男子170名,女子182名)の計705名。
測定尺度 いじめ場面の行動:4つのいじめ場面(殴る,悪口,仲間外れ,メールでの悪口)において,自身が被害をうけた際にどのような行動をするのか回答を求めた。場面例と測定項目は以下の通り。殴る場面 ある日,日ごろ仲良くしているクラスのお友だちCくんたちから,あなたが殴られてしまいました。あなたなら,どうしますか。測定項目 一人で我慢する,気にしないようにする,自分からやめてと言う,友だちに相談する,身近な大人に相談する。なお,測定項目について,「する」(4点)から「しない」(1点)で評定した。
 援助不安の測定:阿部・水野・石隈(2006)が用いた言語的援助要請スキル尺度,友人に対する援助不安尺度および教師に対する援助不安尺度の計19項目を使用した。評定は5段階で実施した。
 共感性の測定:登張(2003)が用いた青年期用の多次元的共感性尺度を使用した。下位尺度は共感的関心,個人的苦痛,ファンタジーおよび気持ちの想像であり,評定は5段階で実施した。
結   果
 いじめ場面において測定された行動について,主因子法による因子分析を行った。その結果,2因子が抽出され,消極的行動(一人で我慢する,気にしないようにする),積極的行動(自分からやめてと言う,友だちに相談する,身近な大人に相談する)と命名した。なお,α係数は消極的行動がα=.68,積極的行動がα=.66であった。また,援助不安,共感性について因子分析を行い,先行研究と同様の因子構造を確認した。
基本統計量
 いじめ場面の消極的行動について,各場面において学年と性別の平均値を算出し,2要因分散分析を実施した。その結果,仲間外れ場面において性別の主効果が有意であり,女子が男子よりも得点が高かった(p<.05)。一方,積極的行動について,同様の分析を実施したところ,メールでの悪口場面において,学年の主効果が認められ,中学校1年生が中学校3年生よりも得点が高かった(p<.05)。また,殴る,悪口の両場面において性別の主効果が認められ,女子の得点が男子の得点よりも高いことが明らかになった(p<.05)。
 援助不安と共感性について,学年と性別の2要因分散分析を行った。その結果,教師に対する援助不安において中学校1年生が中学校3年生よりも得点が高かった。また言語的援助要請スキルでは女子が男子よりも,友人に対する援助不安では男子が女子よりも得点が高かった。なお,共感性についてはすべての下位尺度で女子が高かった。
いじめ場面での行動と援助不安と共感性の関連
 男女別に相関分析を行った。その結果,男子において消極的行動は,友人と教師に対する援助不安(r=.11, p<.05;r=.16, p<.01),また共感性の個人的苦痛(r=.20, p<.001)と正の相関関係が認められた。さらに積極的行動は言語的援助要請スキルと正の相関関係がみられた(r=.51, p<.001)。一方,女子においては,消極的行動と言語的援助要請スキルが有意な負の相関関係(r=-.31, p<.001)を示したが,共感性の下位尺度とは関連は認められなかった。また,積極的行動が言語的援助要請スキルと有意な正の相関関係(r=.41, p<.001),友人と教師に対する援助不安と有意な負の相関関係を認めた(r=-.21,-.23, p<.001)。
考   察
 本調査の結果より,いじめ場面での行動に援助不安と共感性が関連することが明らかになった。また,その関連は男女によって差異が示された。これにより中学生では,性別によっていじめ指導を行うことが重要であることが示唆できよう。さらに,中学生でいじめを抑制するには,共感性を育むと同時に,援助を求めることができる環境を構築することが必要であろう。
(本調査は平成28~30年度科学研究費補助金(挑戦的萌芽研究課題領域番号16K13456)の助成を受けた。)