10:00 AM - 12:00 PM
[PD05] 保育士による担当クラス集団の認識と保育の困難さに関する研究 2
子ども同士の関係作りの困難さに着目して
Keywords:保育, クラス集団, 保育の困難さ
問題と目的
保育の場では,子どもたちへの個別的かかわりと同時に,子どもたちの発達を促す集団づくりが求められる。本研究では,質問紙調査を通して,保育士がとらえるクラスの状態と,クラス内の子ども同士,及び障害児や「気になる」子どもと他児との関係づくりの困難さとの関連を検討する。
方 法
Ⅰ.調査日 2016年4月下旬~5月上旬
Ⅱ.調査協力者 調査時に3歳以上児クラスの担当経験のある,S市内の私立保育園の女性保育士10名(在職年数:平均:15.40年,SD:7.17年)。
Ⅲ.質問紙の内容 1)クラスへの保育の困難さ 調査時もしくは,過去担当していた場合は5・6月ごろを想起してもらい,保育者のクラスに対するかかわりを示す6項目(1.クラスでの集会や朝のお集まりの進行,2.クラス全体で集団遊びやルール遊びを行うこと,3.コーナー遊びや自由遊びの中で子ども同士の関わりを促すこと,4.個々の発達や特徴に応じたかかわり,5.クラスの子どもたち同士の関係づくり,6.障害児や「気になる」子と他児との関係づくり)それぞれについて,どの程度困難さを感じているかを5件法で尋ねた。本研究では,項目5と項目6についての回答とクラスの状態についての回答について検討を行う。
2)クラスの状態 集団活動での子どもたちの様子や態度14項目と,他児との関わり15項目それぞれについて,項目に示す子どもたちの姿がクラスの中でどの程度見られるかを5件法(「1.まったく見られない」~「5.よく見られる」)で尋ねた。
なお,本調査での対象となったのは3歳児クラス4ケース,4歳児クラス1ケース,5歳児クラス5ケースであった。
結果と考察
Ⅰ.子ども同士の関係作りの困難さとクラスの状態との関連 クラスの状態に関する項目の中で,子ども同士の関係作りの困難さにおける回答と有意な相関が見られた項目をTable 1に示した。集団活動での様子や態度では,活動の切り替えや準備の円滑さ,及び集団での遊びや役割を楽しむ子どもの姿が多いほど,保育者にとって子ども同士の関係作りを意図した関わりがより容易になることが示唆された。また,他児との関係では,他児に対して肯定的な関心や態度を示す姿が多く見られるほど,保育者にとって子ども同士の関係作りがより容易になる一方で,遊びなどの際に子ども同士でかかわるメンバーが比較的固定している際に,子ども同士の関係作りがより困難になることが示唆された。
Ⅱ.障害児や「気になる」子と他児との関係づくりの困難さとクラスの状態との関連 クラスの状態に関する項目の中で,障害児や「気になる」子と他児との関係づくりの困難さにおける回答との間で有意な相関が見られた項目は,「活動の合間や次の活動の準備の際にトラブルや逸脱を起こす」の1項目みであった(r=.647,p<.05)。年度の初期においては,子どもたちが集団活動に円滑に入っていくための保育の工夫が,障害児や「気になる」子と他児との関係づくりにおいても重要になることが示唆された。今後,障害児や「気になる」子どもの特徴を考慮しながら詳細に検討する必要があると考えられる。
保育の場では,子どもたちへの個別的かかわりと同時に,子どもたちの発達を促す集団づくりが求められる。本研究では,質問紙調査を通して,保育士がとらえるクラスの状態と,クラス内の子ども同士,及び障害児や「気になる」子どもと他児との関係づくりの困難さとの関連を検討する。
方 法
Ⅰ.調査日 2016年4月下旬~5月上旬
Ⅱ.調査協力者 調査時に3歳以上児クラスの担当経験のある,S市内の私立保育園の女性保育士10名(在職年数:平均:15.40年,SD:7.17年)。
Ⅲ.質問紙の内容 1)クラスへの保育の困難さ 調査時もしくは,過去担当していた場合は5・6月ごろを想起してもらい,保育者のクラスに対するかかわりを示す6項目(1.クラスでの集会や朝のお集まりの進行,2.クラス全体で集団遊びやルール遊びを行うこと,3.コーナー遊びや自由遊びの中で子ども同士の関わりを促すこと,4.個々の発達や特徴に応じたかかわり,5.クラスの子どもたち同士の関係づくり,6.障害児や「気になる」子と他児との関係づくり)それぞれについて,どの程度困難さを感じているかを5件法で尋ねた。本研究では,項目5と項目6についての回答とクラスの状態についての回答について検討を行う。
2)クラスの状態 集団活動での子どもたちの様子や態度14項目と,他児との関わり15項目それぞれについて,項目に示す子どもたちの姿がクラスの中でどの程度見られるかを5件法(「1.まったく見られない」~「5.よく見られる」)で尋ねた。
なお,本調査での対象となったのは3歳児クラス4ケース,4歳児クラス1ケース,5歳児クラス5ケースであった。
結果と考察
Ⅰ.子ども同士の関係作りの困難さとクラスの状態との関連 クラスの状態に関する項目の中で,子ども同士の関係作りの困難さにおける回答と有意な相関が見られた項目をTable 1に示した。集団活動での様子や態度では,活動の切り替えや準備の円滑さ,及び集団での遊びや役割を楽しむ子どもの姿が多いほど,保育者にとって子ども同士の関係作りを意図した関わりがより容易になることが示唆された。また,他児との関係では,他児に対して肯定的な関心や態度を示す姿が多く見られるほど,保育者にとって子ども同士の関係作りがより容易になる一方で,遊びなどの際に子ども同士でかかわるメンバーが比較的固定している際に,子ども同士の関係作りがより困難になることが示唆された。
Ⅱ.障害児や「気になる」子と他児との関係づくりの困難さとクラスの状態との関連 クラスの状態に関する項目の中で,障害児や「気になる」子と他児との関係づくりの困難さにおける回答との間で有意な相関が見られた項目は,「活動の合間や次の活動の準備の際にトラブルや逸脱を起こす」の1項目みであった(r=.647,p<.05)。年度の初期においては,子どもたちが集団活動に円滑に入っていくための保育の工夫が,障害児や「気になる」子と他児との関係づくりにおいても重要になることが示唆された。今後,障害児や「気になる」子どもの特徴を考慮しながら詳細に検討する必要があると考えられる。