日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PD(01-83)

ポスター発表 PD(01-83)

2017年10月8日(日) 10:00 〜 12:00 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 〜 12:00

[PD12] 感謝生起場面における認知と行動を左右する個人特性(1)

青年期の共感性に注目して

村上達也1, 藤原健志2 (1.高知工科大学, 2.埼玉学園大学)

キーワード:感謝, 共感性, 青年期

問題と目的
 返報行動や第三者への向社会的行動などの感謝行動をもたらす要因として,個人が置かれた状況の認知や感情体験の関連が指摘されている(蔵永・樋口, 2011, 2013)。このうち特性感謝と共感性の関連は多くの先行研究で指摘されているが(藤原他, 2014; McCullough et al., 2002),共感性が感謝生起状況においてどのように認知や行動に影響を与えているのかについて,そのプロセスの詳細は明らかとなっていない。本研究の目的は,青年期の感謝表明を左右する個人変数として共感性に注目し,状況評価の観点を加えた検討を行うことである。
方   法
調査対象者 首都圏の私立大学に通う大学生149名を対象とした。
質問紙の構成 次の(1)と(2)について回答を求めた。(1)共感性尺度:登張(2003)の共感性尺度を用いた。共感的関心(13項目),気持ちの想像(5項目),ファンタジー(4項目),個人的苦痛(6項目)について,5件法で尋ねた。(2)感謝生起状況における状況評価と行動:蔵永・樋口(2011, 2013)が用いた5つの状況のうち,被援助,贈物受領,他者負担の3状況について,状況評価及びその後の行動について尋ねた。状況評価尺度については,恩恵の受領(9項目),他者のコスト(4項目)ならびに起こったことの当然さ(3項目)を5件法で,その後の行動については,感謝表現(ありがとう型 / すみません型),返礼行動,向社会的行動について,いずれも1項目,5件法で尋ねた。
調査時期 2017年1月であった。
結果と考察
 共感性を第一水準,感謝生起状況における状況評価を第二水準,同行動を第三水準に配置し,重回帰分析の繰り返しによるパス解析を行った(Figure)。その結果,全ての重回帰式が有意となった。
 共感的関心から恩恵受領(β=.36, p<.01)を介し,感謝表明に有意な正のパス(β=.50, p<.01)が認められたほか,直接の正のパスも有意となり(β=.18, p<.05),感謝の言明は他者からの恩恵受領の認知に強く影響を受け,その背景としては共感的関心の高さがうかがえる。個人的苦痛は他者が払ったコストの認知を高めることで(β=.19, p<.05),各種感謝行動を促進させることが明らかとなった。共感性は自己の利益と他者の払ったコストの認知を促進させることを介して,謝罪や返報行動を動機づけることが示された。