10:00 AM - 12:00 PM
[PD14] 大学生の心理的成長や学修態度の向上を促すメンタリングについて(1)
ピア・メンターと自我同一性の検討
Keywords:ピア・メンター, メンタリング, 自我同一性
目 的
近年注目される青少年の発達支援方略にメンタリングがある。これは成熟したメンターと若年者のプロテジェとの全人格的交流により,双方の心理的発達を促進するものである。近年わが国でもメンタリングによる様々な効果の検討がなされているが(例えば児玉,2016),その多くは特定の職業場面などに限定的なものである。また,日本ではメンターとして自分の両親を挙げる学生が多く,次いで同年齢の友人をメンターとすることが多いが(中島,2017),ピアと年長者では提供するメンタリングが異なることが指摘されている(Kram,1988)。しかし,ピア・メンターの役割についてはこれまであまり検討されていないため,本研究では特にピア・メンターに注目し,メンタリングがもたらす効果のうち,文脈を限定しない自我同一性との関連について検討する。
方 法
対象者:大学生401名(男性58名,女性343名),平均年齢18.86歳(SD=0.74)。
調査実施時期 2016年5月~6月
質問紙 (1)メンターの有無の確認:「あなたの両親以外で,あなたが悩んだり困ったときに支援してくれたり,夢や目標を明確にするための助言をしてくれるなど,人間として,また学生としての発達・成長を支えてくれるような人はいますか」とたずねた(いる,以前はいた,いない)。 (2)メンターの属性:メンターの性別,年代,関係性,交流頻度 (3) メンタリング尺度:「動機づけ・励まし」(10項目,α= .88),「受容・保護」(9項目,α= .90)。「友好・相談」(6項目,α= .82)の3つの下位尺度からなる(5件法)。 (4)多次元自我同一性尺度(20項目,7件法)(谷,2001)。
結果と考察
分析はメンターと現在交流がないもの,個別の交流がないもの,メンターとの関係性の記述に不備があるもの,自分の親をメンターとしてあげたものを除外した303名について行った。
メンターの属性と機能:最も多く挙げられたメンターは中・高からの友人で,これを含めた同年齢のピア・メンターを挙げたのは227名(74.92%)であったが,親以外にも青年は多様なメンターを持つことが示唆された(Table1)。年上のメンターとピア・メンターの機能の違いを検討するため,ピア・メンター群と年上メンター群でメンタリング下位尺度得点を比較したところ,「動機づけ・励まし」は年上のメンターが(t(293)=2.37,p<.05: ピア 3.91,年上4.13),「友好・相談」はピア・メンターが有意に高かった(t(296)=6.42,p< .001: ピア 4.78,年上 4.33)が,「受容・保護」については有意差がみられなかった(t(299)=1.02,n.s.: ピア 4.50,年上 4.43)。
ピア・メンターと自我同一性の関連:ピア・メンターと年上メンターの機能の違いにより自我同一性の状態が異なるかどうか検討するため,メンターがピアか否かを独立変数,自我同一性の各下位尺度を従属変数とするt検定を行ったが,いずれの下位尺度においても有意差はみられなかった。メンターの機能的特徴に差異があっても自我同一性には差異がみられなかったが,今後メンターとプロテジェの交流期間の長さや具体的な関係性についても考慮し詳細を明らかにしたい。
近年注目される青少年の発達支援方略にメンタリングがある。これは成熟したメンターと若年者のプロテジェとの全人格的交流により,双方の心理的発達を促進するものである。近年わが国でもメンタリングによる様々な効果の検討がなされているが(例えば児玉,2016),その多くは特定の職業場面などに限定的なものである。また,日本ではメンターとして自分の両親を挙げる学生が多く,次いで同年齢の友人をメンターとすることが多いが(中島,2017),ピアと年長者では提供するメンタリングが異なることが指摘されている(Kram,1988)。しかし,ピア・メンターの役割についてはこれまであまり検討されていないため,本研究では特にピア・メンターに注目し,メンタリングがもたらす効果のうち,文脈を限定しない自我同一性との関連について検討する。
方 法
対象者:大学生401名(男性58名,女性343名),平均年齢18.86歳(SD=0.74)。
調査実施時期 2016年5月~6月
質問紙 (1)メンターの有無の確認:「あなたの両親以外で,あなたが悩んだり困ったときに支援してくれたり,夢や目標を明確にするための助言をしてくれるなど,人間として,また学生としての発達・成長を支えてくれるような人はいますか」とたずねた(いる,以前はいた,いない)。 (2)メンターの属性:メンターの性別,年代,関係性,交流頻度 (3) メンタリング尺度:「動機づけ・励まし」(10項目,α= .88),「受容・保護」(9項目,α= .90)。「友好・相談」(6項目,α= .82)の3つの下位尺度からなる(5件法)。 (4)多次元自我同一性尺度(20項目,7件法)(谷,2001)。
結果と考察
分析はメンターと現在交流がないもの,個別の交流がないもの,メンターとの関係性の記述に不備があるもの,自分の親をメンターとしてあげたものを除外した303名について行った。
メンターの属性と機能:最も多く挙げられたメンターは中・高からの友人で,これを含めた同年齢のピア・メンターを挙げたのは227名(74.92%)であったが,親以外にも青年は多様なメンターを持つことが示唆された(Table1)。年上のメンターとピア・メンターの機能の違いを検討するため,ピア・メンター群と年上メンター群でメンタリング下位尺度得点を比較したところ,「動機づけ・励まし」は年上のメンターが(t(293)=2.37,p<.05: ピア 3.91,年上4.13),「友好・相談」はピア・メンターが有意に高かった(t(296)=6.42,p< .001: ピア 4.78,年上 4.33)が,「受容・保護」については有意差がみられなかった(t(299)=1.02,n.s.: ピア 4.50,年上 4.43)。
ピア・メンターと自我同一性の関連:ピア・メンターと年上メンターの機能の違いにより自我同一性の状態が異なるかどうか検討するため,メンターがピアか否かを独立変数,自我同一性の各下位尺度を従属変数とするt検定を行ったが,いずれの下位尺度においても有意差はみられなかった。メンターの機能的特徴に差異があっても自我同一性には差異がみられなかったが,今後メンターとプロテジェの交流期間の長さや具体的な関係性についても考慮し詳細を明らかにしたい。