The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PD(01-83)

ポスター発表 PD(01-83)

Sun. Oct 8, 2017 10:00 AM - 12:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 AM - 12:00 PM

[PD15] 大学生の心理的成長や学修態度の向上を促すメンタリングについて(2)

メンターがいることで大学生活はどう変わるか?

内山有美1, 中島奈保子2 (1.四国大学, 2.金城学院大学)

Keywords:メンタリング, 大学生, キャリア

目   的
 ここ20年間で大卒者の3年目までの離職率は2009年度卒生を除き,どの年度も30%を超える高い離職率が続いている(厚生労働省,2017)。その原因の一つとして,就職のミスマッチや職業人としてのスキル不足などがあげられる。そこで,大学生が職業選択を行う上で,自らの自分らしさを構築させ,職業人としてのスキルや態度の獲得を見越した将来の見通しを持てるような取り組みが必要と考える。
 青少年の発達支援方略として,メンタリングという概念がある。メンタリングとは成熟したメンターと若年者のプロテジェとが,基本的に1対1で継続的,定期的に交流し,適切な役割モデルの提示と信頼関係の構築を通じてプロテジェの発達支援を目指す関係性(渡辺,2002)であり,情緒的な結びつきによって,プロテジェの全人格的発達を促進するものとされる。本研究では,メンターの有無による大学生活の過ごし方の違いやプロテジェの発達について検討を行う。
方   法
対象者 2大学の大学生401名(男性58名,女性343名,平均年齢18.86歳,標準偏差=.74)。
実施時期 2016年5月~6月
調査内容 (1)メンターの有無(いる,以前はいた,いない) (2)メンターの属性:メンターの性別,年代,関係性,交流頻度 (3)メンタリング尺度(26項目,5件法) (4)多次元自我同一性尺度(20項目,7件法)(谷,2001) (5)キャリア・パースペクティブ(14項目,4件法)(西分・児玉,2014) (6)日常的活動時間(1週間で費やす時間数:a.クラブ・サークル,b.アルバイト,c.ボランティア,d.大学の行事,e.趣味や習い事,資格取得に関する活動,f.遊び・対人関係に関する活動,g.その他) (7)日常的活動に対する熱意((6)と同一の活動に対する熱意,5件法) (8)Active Class Attitude Scale ; ACA(9項目,5件法)(畑野・溝上,2013)
結果と考察
メンターの有無と日常的活動時間
 多くの大学生が両親以外の信頼できる者としてメンターを得ていることが明らかとなった。特に,メンターの年代は10代(55.1%),20代(20.7%)と対象者の年齢に近く,出会いのきっかけは「中学・高校が同じ友人」や「高校の先輩」,「保育所から一緒」など同世代の友人という回答が多かった。また,日常的活動時間においてはメンターの有無による顕著な違いはみられなかった(Table 1)。
メンターの有無とキャリア・パースペクティブとの関係
 キャリア・パースペクティブの下位尺度を従属変数とし,メンターの有無を独立変数とした回帰分析を行った。その結果,「継続の見通し」ではメンターの有無は影響しないが,「見通しの明確性」(β =.15, p<.01)と「見通しの連続性」(β =.12, p<.05)では有意な影響力を持つことが明らかとなった。これによりメンターを持つことで将来へのイメージを描きやすくしたり,現在の行動が将来就きたい職業へと繋がるとする認識が高いことが示唆された。