日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PD(01-83)

ポスター発表 PD(01-83)

2017年10月8日(日) 10:00 〜 12:00 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 〜 12:00

[PD16] 大学生の未来の明るさの評価に影響を与える要因の検討

日潟淳子 (姫路大学)

キーワード:未来展望, 正課外活動, 人生積極的態度

問題と目的
 青年期には社会人になる準備段階として,現実的な自分の人生に対する見通しを立てることが求められる。しかしながら,内閣府(2013)が行った「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」では,日本の青少年は他国よりも著しく将来を明るいととらえる割合が低かった。
 このような状況を踏まえ,日本の大学生の未来展望の明るさのとらえ方に影響を与える要因を検討した。要因として,大学までの正課外活動等の外的要因,未来展望の視野の広がり,人生に対する積極的態度をとりあげ,それらが未来展望の明るさの評価に与える影響を検討した。
方   法
(1)調査対象者
 兵庫県下の私立大学1校。1年生18名(男性9名,女性9名),2年生26名(男性12名,女性14名),3年生23名(男性13名,女性10名),4年生29名(男性12名,女性16名,不明1名)。平均年齢20.57歳,SD=1.38(18-23歳)。調査に際して姫路大学の研究倫理審査を得ている。
(2)調査時期
2016年11月-12月
(3)調査内容
 ① 未来展望の明るさ:「とても明るい」(7点)から「とても明るくない」(1点)の7件法。②未来展望の視野の広がり:日潟(2015)の58項目。「とても重要」(7点)から「全く重要でない」(1点)の7件法。下位尺度は「社会的評価(15項目)」「社会貢献(14項目)」「自己実現(11項目)」「自分らしさ(8項目)」「自己成長(5項目)」「他者とのつながり(5項目)」。③人生に対する積極的態度尺度(海老根,2010):25項目,5件法で実施し,点数が高いほど人生に対して積極的な態度を示す。下位尺度は「目標・夢(5項目)」「向上心(4項目)」「肯定的(7項目)」「時間重視(6項目)」「自分らしさ(以下,「自分らしさ(積)」とする)(3項目)」。④フェイス項目:学年,性別,年齢,中学校・高等学校・大学でのクラブ・サークル等の所属状況,高等学校・大学での自主的なボランティア活動の体験の有無,目標とする人の有無,職業の選択状況。
結果と考察
(1) フェイス項目の分布統計量
 分析に使用したフェイス項目の分布統計量をTable 1に示す。ボランティア活動は学校からの強制ではなく自主的に行ったものを示す。
(2)未来の明るさに影響を与える要因の検討
 未来の視野の広がりが人生への積極的な態度を生じさせ,それが未来の明るさに影響を与えることを仮定し,また,フェイス項目とそれらとの関連を検討するためにAmos22を使ってパス解析を行った。その結果をFigure 1に示す。未来の明るさは人生に対するポジティブな態度と目標とする人の存在から得られていることが示された。その態度は自主的なボランティア活動の体験による自己実現の思いや,未来に対して他者とのつながりを大切にしようという意識,大学でのボランティア活動が関連していた。したがって,このような要因へのアプローチが未来の評価をポジティブにさせる可能性があることが示唆された。
海老根理絵(2010).青年期における人生に対する積極的態度に関する研究 東京大学大学院教育学研究科紀要,50,149-158.
日潟淳子(2015).大学生の未来展望の視野の広がりとその関連要因の検討 近大姫路大学教育学部紀要,8,109-114.
内閣府青少年企画(2013).我が国と諸外国の若者の意識に関する調査 内閣府