The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PD(01-83)

ポスター発表 PD(01-83)

Sun. Oct 8, 2017 10:00 AM - 12:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 AM - 12:00 PM

[PD19] 漢字の書字練習量とテスト得点の時系列分析(4)

長澤誠 (早稲田大学)

Keywords:学習, 意欲

目   的
 本研究では,漢字の書字練習量と漢字テスト得点の2変数の一年間の変動を見る時系列分析モデルを構成し,両者の関係について分析する。具体的には,ある回(n回目)の練習量とテスト得点が前回までの練習量とテスト得点からどのような影響を受けているか,VARモデルを用いて分析する。
方   法
対象者 2015-2016年までの公立小学校5-6年生。
課題 児童に漢字ドリルを配布し,ドリルに載っている漢字問題(「ちちとこうたいする」「じょうけいをあらわすことば」などの下線部を漢字に直す問題)を指定したノートに書き込みの練習をさせた。テストはいずれの年も毎週金曜日,指定範囲の漢字について行った。年間のテスト回数はそれぞれ42回。テストまでに練習した漢字の字数(書字練習量)と正解数/出題字数で定義したテスト得点を求め,さらに両変数の回毎のクラス平均を求めた。さらに年間全ての回(約10か月)の書字練習量,テストについて時間軸上での標準得点を求めた。尚,漢字テストの範囲指定は回毎に異なり,間違えた漢字に対してはテスト返却後,一定数の書き取り練習をする事後課題を与えた。
結   果
 書字練習量とテスト得点を標準得点化したものを時系列で示したものがFigure1である。
 標準得点化した書字練習量とテスト得点について,VARモデルの推定を行った。VARモデルの結果を示したものがFigure2である。回帰係数の高いものに着目すると,1)2015年の書字練習量は前回の書字練習量の影響を受け(回帰係数0.3),2)2015年のテスト得点は前回のテスト得点の影響を受け(回帰係数0.3),3)2016年の書字練習量は,前回のテスト得点の影響を受ける(回帰係数0.37)ことが示された。
考   察
 結果1) 書字練習量は,前回の書字練習量との関係が係数に表れた。これは,n-1回目で書字練習量が高かった場合は,n回目においても高い書字練習量を持続させていたためと考えられる。結果2)  前回のテスト得点が高いと感じれば,動機付けが高まり,前回のテスト得点が低いと感じれば,逆のことが起こると考えられる。結果3) 前回のテスト得点が高いと感じれば,動機付けが高まり,それに影響を受けて次回のテスト得点も高く,前回のテスト得点が低いと感じれば,逆のことが起こると考えられる。
 年度毎の回帰係数について
 2015-2016年の児童はそれぞれ同じ児童である。長澤(2016)では2年間計測した児童では,n-1回目やn-2回目の回帰係数に影響を受け,翌年度はn-1回目の回帰係数のみに影響を受けていることで,初年度で始めた学習習慣が次年度で定着してきたと考えた。今回は初年度もn-1回目の回帰係数のみ影響を受けている。1年間継続して「書字練習-テスト-固定時期のテスト返却-事後練習」というサイクルは長澤(2016)と同じだが,本研究では初年度から安定した学習意欲の維持が早く定着し,翌年度でテスト得点のみを意識していくというさらに集中力の高い学習意欲の維持を図れた可能性が示唆される。