10:00 〜 12:00
[PD24] 中学校理科における学習動機と科学的探究活動の関連
キーワード:学習動機, 科学的探究
目 的
中学校理科の主たる目標は,科学的な探究の能力を育成することであるが(文部科学省,2008),近年実施された諸調査の結果を概観すると,決して満足な状況ではない(e.g., 国研, 2015)。この状況を改善する上で理科の学力を底上げすることは当然必要であるが,理科学習における動機づけの側面から科学的探究能力との関連性を調査することは,学校現場における授業改善に役立つと考えた。動機づけ研究の主流として達成目標理論(e.g., Diener & Dweck, 1978)や自己決定理論(e.g., Ryan & Deci, 2000)があるが,中学生を対象とした場合,実際に普段の理科学習に対する認識や信念のレベルで回答を得るためには,市川(1995)が提唱している学習動機の2要因モデルが適していると判断し,理科学習に対する学習動機と科学的探究活動との関連について検討することを目的とした。
方 法
対象者 岩手県内の中学校1校の1年生を対象に調査への協力を依頼した。有効回答数は158名であった。
質問紙 科学的探究活動:先行研究(木下・松浦・清水・寺本・角屋, 2012;小林, 2013)を参考に,下位尺度として仮説の形成と評価,観察実験の計画,結果の解釈の3観点から作成した。20項目,5件法。学習動機尺度:市川(2001)の学習動機尺度を参考に,中学校の理科学習に適用する形式で一部文言を修正して作成した。36項目,5件法。
結果と考察
各下位尺度の平均値,標準偏差,α係数をTable 1に示す。科学的探究活動に関する3つの下位尺度はどれも高い平均値を示した。学習動機に関しては内容関与的動機(充実志向,訓練志向,実用志向)は内容分離的動機(関係志向,自尊志向,報酬志向)に比べてやや高い平均値を示した。α係数は全体的に高い値を示した。
科学的探究活動(仮説の形成と評価,観察実験の計画,結果の解釈)と理科の学習動機(充実志向,訓練志向,実用志向,関係志向,自尊志向,報酬志向)の関連を検討するために重回帰分析を行った(Table 2)。はじめに仮説の形成と評価を従属変数として分析を行った結果,訓練志向が正の関連を示した。次に観察実験の計画を従属変数として分析を行った結果,訓練志向が正の関連を,報酬志向が負の関連を示した。最後に結果の解釈を従属変数として分析を行った結果,訓練志向が正の関連を示した。
分析の結果,科学的探究活動のすべての下位尺度に訓練志向が正の関連を示した。内発的動機づけに最も近い概念は充実志向であるが,その充実志向よりも知力を鍛えるためというような訓練志向をもつことが科学的探究能力を高める上で重要である可能性が示唆された。これは理科固有の学びの性質が関係している可能性がある。この結果を信頼すれば,教師の働きかけや支援の在り方について今後,改善の方向性が具体的に検討できるのではないだろうか。
中学校理科の主たる目標は,科学的な探究の能力を育成することであるが(文部科学省,2008),近年実施された諸調査の結果を概観すると,決して満足な状況ではない(e.g., 国研, 2015)。この状況を改善する上で理科の学力を底上げすることは当然必要であるが,理科学習における動機づけの側面から科学的探究能力との関連性を調査することは,学校現場における授業改善に役立つと考えた。動機づけ研究の主流として達成目標理論(e.g., Diener & Dweck, 1978)や自己決定理論(e.g., Ryan & Deci, 2000)があるが,中学生を対象とした場合,実際に普段の理科学習に対する認識や信念のレベルで回答を得るためには,市川(1995)が提唱している学習動機の2要因モデルが適していると判断し,理科学習に対する学習動機と科学的探究活動との関連について検討することを目的とした。
方 法
対象者 岩手県内の中学校1校の1年生を対象に調査への協力を依頼した。有効回答数は158名であった。
質問紙 科学的探究活動:先行研究(木下・松浦・清水・寺本・角屋, 2012;小林, 2013)を参考に,下位尺度として仮説の形成と評価,観察実験の計画,結果の解釈の3観点から作成した。20項目,5件法。学習動機尺度:市川(2001)の学習動機尺度を参考に,中学校の理科学習に適用する形式で一部文言を修正して作成した。36項目,5件法。
結果と考察
各下位尺度の平均値,標準偏差,α係数をTable 1に示す。科学的探究活動に関する3つの下位尺度はどれも高い平均値を示した。学習動機に関しては内容関与的動機(充実志向,訓練志向,実用志向)は内容分離的動機(関係志向,自尊志向,報酬志向)に比べてやや高い平均値を示した。α係数は全体的に高い値を示した。
科学的探究活動(仮説の形成と評価,観察実験の計画,結果の解釈)と理科の学習動機(充実志向,訓練志向,実用志向,関係志向,自尊志向,報酬志向)の関連を検討するために重回帰分析を行った(Table 2)。はじめに仮説の形成と評価を従属変数として分析を行った結果,訓練志向が正の関連を示した。次に観察実験の計画を従属変数として分析を行った結果,訓練志向が正の関連を,報酬志向が負の関連を示した。最後に結果の解釈を従属変数として分析を行った結果,訓練志向が正の関連を示した。
分析の結果,科学的探究活動のすべての下位尺度に訓練志向が正の関連を示した。内発的動機づけに最も近い概念は充実志向であるが,その充実志向よりも知力を鍛えるためというような訓練志向をもつことが科学的探究能力を高める上で重要である可能性が示唆された。これは理科固有の学びの性質が関係している可能性がある。この結果を信頼すれば,教師の働きかけや支援の在り方について今後,改善の方向性が具体的に検討できるのではないだろうか。