10:00 〜 12:00
[PD27] 小グループ学習時における教師による学習者への働きかけの特徴
キーワード:小グループ, 教師, 教授行為
問題と目的
小グループでの学習時,教師は単に学習者に話しかけ,フィードバックを行う等の支援を行うのみならず,学習者のやりとりに耳を傾け,観察することも重要な役割とされている(Cohen & Lotan, 2014; Kaendler et al., 2015)。しかし,先行研究では具体的な授業の中でどのような働きかけをどのような頻度で教師が行っているのか,非言語的な支援を含めた検討はなされていない。そこで,本研究は小グループでの学習時において,教師が行う働きかけにはどのようなヴァリエーションがあるのかを検討し,小グループでの学習過程に即した教師の働きかけの特徴を明らかにすることを目的とする。
方 法
協力者 N県内の小・中学校教諭8名
手続き 1)観察 協力者の教室にて,小グループでの学習を含む授業をそれぞれ1時間ずつ観察した。教室側方と後方から2台のビデオカメラで教室全体が映るように撮影し,あわせて筆者が表情や雰囲気をメモした。また,協力者の胸元にICレコーダーを装着してもらい,音声を録音した。 2)教授行為の分析 得られた授業中の教師の映像および音声データから,小グループでの学習時における教師による学習者への働きかけを,高木(2011)を参考に,10秒を単位として抽出,分類した(10秒間に複数の働きかけが観察された場合は,該当するすべての働きかけを抽出した)。そして,人間同士が直接やり取りする,プロセス的性格を持った社会相互作用に関わる研究に適しているとされるM-GTA(木下, 2002)の手法を参考に,教師の働きかけを抽出して概念を作成し,次に複数の概念間の関係を解釈的にまとめた。
結果と考察
39 の概念からの3個のカテゴリー(7個の下位カテゴリー)を抽出した。以下【】 はカテゴリー名,[]は下位カテゴリー名,〈〉は概念名を示す。
【非言語的支援】 分析の結果,直接話しかけることなくなされる非言語的な支援として,教師は[観察]と[環境整備]により間接的に小グループでの学習時,子どもの学習を支援していることが示された。[観察]において,教師は子どもから少し離れた場所から<全体の観察>を行い,俯瞰するのとあわせて,小グループ間を<移動しながらの観察>を行い,子どもたちの学習状況を見取っていた。そして,時に立ち止まりながら<グループの観察>や<個人の観察>を行なっていた。中には,子どもの注意をひかないようあえて視線を外し,<グループのやり取りの聴取>のみ行う場合もあった。
一方,[環境整備]において,教師は小グループ内で関わりを促すために<机の整理>をしたり,<机上の整理>を行なっていた。また,子どもの学習状況に応じて必要な<教材配付>や<教材提示>を行なっていた。
こうした非言語的支援に割かれた時間は,平均して小グループでの学習時全体の4割以上だった。
【言語的支援】 小グループでの学習時,教師は[全体への声かけ][グループへの声かけ][子ども個人への声かけ]と異なるレベルで働きかけを行なっていた。
全体に対して,教師は取り組む内容や方法を<教示>するだけでなく,特定の子どもの考えを<紹介>したり,学習状況を<確認>したりしていた。また,グループや個人に対して,教師は進み具合や理解などの学習状況を<確認>しつつ,一方的に話しかけるのではなく子どもからの質問や発言に対して<応答>していた。その中で,時に教師から<質問>したり,必要な<説明>を行なっていた。さらには,グループや個人に対して<関わりの促し>を行い,やりとりを活発にしようとしていた。
【授業遂行】 小グループでの学習時,教師は授業の遂行に関わる行為も行なっていた。
教師は小グループでの問題解決の開始や終了の指示を行うのとあわせて,小グループでの学習時に時計を見て<時間の確認>を行なったり,子どもの学習状況に応じて時間延長の必要性を子どもに確認するなど<時間調整>を行なっていた。
一方,子どもたちが小グループで問題に取り組んでいる間に<板書>を行なったり<教材整理>を行なったりしていた。こうしたことから,授業のその後の展開に向けて準備としても時間を利用していることがうかがえた。
総合考察
本研究では,小グループでの学習時における教師の働きかけとして,従来指摘されてきた学習者への言語的な働きかけのみではなく,非言語的な支援のヴァリエーションも示された。ただし,個人による相違も示唆されたことから,今後より個別の授業の文脈に即した,教師の働きかけを検討する必要がある。
小グループでの学習時,教師は単に学習者に話しかけ,フィードバックを行う等の支援を行うのみならず,学習者のやりとりに耳を傾け,観察することも重要な役割とされている(Cohen & Lotan, 2014; Kaendler et al., 2015)。しかし,先行研究では具体的な授業の中でどのような働きかけをどのような頻度で教師が行っているのか,非言語的な支援を含めた検討はなされていない。そこで,本研究は小グループでの学習時において,教師が行う働きかけにはどのようなヴァリエーションがあるのかを検討し,小グループでの学習過程に即した教師の働きかけの特徴を明らかにすることを目的とする。
方 法
協力者 N県内の小・中学校教諭8名
手続き 1)観察 協力者の教室にて,小グループでの学習を含む授業をそれぞれ1時間ずつ観察した。教室側方と後方から2台のビデオカメラで教室全体が映るように撮影し,あわせて筆者が表情や雰囲気をメモした。また,協力者の胸元にICレコーダーを装着してもらい,音声を録音した。 2)教授行為の分析 得られた授業中の教師の映像および音声データから,小グループでの学習時における教師による学習者への働きかけを,高木(2011)を参考に,10秒を単位として抽出,分類した(10秒間に複数の働きかけが観察された場合は,該当するすべての働きかけを抽出した)。そして,人間同士が直接やり取りする,プロセス的性格を持った社会相互作用に関わる研究に適しているとされるM-GTA(木下, 2002)の手法を参考に,教師の働きかけを抽出して概念を作成し,次に複数の概念間の関係を解釈的にまとめた。
結果と考察
39 の概念からの3個のカテゴリー(7個の下位カテゴリー)を抽出した。以下【】 はカテゴリー名,[]は下位カテゴリー名,〈〉は概念名を示す。
【非言語的支援】 分析の結果,直接話しかけることなくなされる非言語的な支援として,教師は[観察]と[環境整備]により間接的に小グループでの学習時,子どもの学習を支援していることが示された。[観察]において,教師は子どもから少し離れた場所から<全体の観察>を行い,俯瞰するのとあわせて,小グループ間を<移動しながらの観察>を行い,子どもたちの学習状況を見取っていた。そして,時に立ち止まりながら<グループの観察>や<個人の観察>を行なっていた。中には,子どもの注意をひかないようあえて視線を外し,<グループのやり取りの聴取>のみ行う場合もあった。
一方,[環境整備]において,教師は小グループ内で関わりを促すために<机の整理>をしたり,<机上の整理>を行なっていた。また,子どもの学習状況に応じて必要な<教材配付>や<教材提示>を行なっていた。
こうした非言語的支援に割かれた時間は,平均して小グループでの学習時全体の4割以上だった。
【言語的支援】 小グループでの学習時,教師は[全体への声かけ][グループへの声かけ][子ども個人への声かけ]と異なるレベルで働きかけを行なっていた。
全体に対して,教師は取り組む内容や方法を<教示>するだけでなく,特定の子どもの考えを<紹介>したり,学習状況を<確認>したりしていた。また,グループや個人に対して,教師は進み具合や理解などの学習状況を<確認>しつつ,一方的に話しかけるのではなく子どもからの質問や発言に対して<応答>していた。その中で,時に教師から<質問>したり,必要な<説明>を行なっていた。さらには,グループや個人に対して<関わりの促し>を行い,やりとりを活発にしようとしていた。
【授業遂行】 小グループでの学習時,教師は授業の遂行に関わる行為も行なっていた。
教師は小グループでの問題解決の開始や終了の指示を行うのとあわせて,小グループでの学習時に時計を見て<時間の確認>を行なったり,子どもの学習状況に応じて時間延長の必要性を子どもに確認するなど<時間調整>を行なっていた。
一方,子どもたちが小グループで問題に取り組んでいる間に<板書>を行なったり<教材整理>を行なったりしていた。こうしたことから,授業のその後の展開に向けて準備としても時間を利用していることがうかがえた。
総合考察
本研究では,小グループでの学習時における教師の働きかけとして,従来指摘されてきた学習者への言語的な働きかけのみではなく,非言語的な支援のヴァリエーションも示された。ただし,個人による相違も示唆されたことから,今後より個別の授業の文脈に即した,教師の働きかけを検討する必要がある。