The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PD(01-83)

ポスター発表 PD(01-83)

Sun. Oct 8, 2017 10:00 AM - 12:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 AM - 12:00 PM

[PD28] 小学生への英語指導のための理論

柿原直美 (法政大学)

Keywords:英語指導, 年齢

はじめに
小学生が学校で英語に触れる機会と内容は公立小学校と私立小学校では異なっている場合が多い。原則としてクラスの担任が外国語活動として子どもに英語に触れさせている公立小学校と,専門知識を持った英語担当教師が英語指導を行って,なおかつ評価もしている私立小学校では教える内容が異なるのは必然かもしれない。しかし,義務教育である中学,そしてほとんどの生徒が進学する高校では勿論のこと,専攻する領域が異なっても大学では必修として英語を学習する場合は多い。中学以降の英語学習に確実につながる理論に向けて諸要素について検討する。
言語習得の始まり
ピアジェが示した子どもの認知発達の実態のひとつに「物の永続性」と呼ばれるものある。ある対象が目の前から見えなくなっても,存在していると認識するという「物の永続性」はカナダの発達心理学者のベイツによると,目に見えないものについて,意味や考えを受け取るための起点になっているという。このことは,母語であれ,外国語であれ「聞く」「話す」という行為は目に見えない言語を操るということであり,「読み」「書き」はそれらを文字という記号に置き換えているという段階が加わることを実感させられる。さらに難なく会話している兄弟の「読み」「書き」能力の差に注目したことから生まれたというカミンズのBICS(日常生活に必要な言語)とCALP(学校生活に必要な言語)の区別も容易に受け入れられる。具体例のひとつとして,2016年教育心理学会56回総会で示したように,同じ問題で,学習時間に差がない状況でも,5年生と6年生は小文字から大文字に変換する問題の正解数は年齢によって差が生じている。
母語と外国語
母語の獲得と外国語習得が同じか異なっているのかという論議については,小学生と赤ん坊を比べると認知発達の差があることは明らかなので,まったく同じとは言えない。しかし,実践の結果,聞いて理解することとの容易さに比べ,読み書きは理解した内容を文字という記号に置き換えるという段階を伴うため時間を要する。このことはかなり自由に母語で会話ができる幼児が同じ内容を文字化するのが困難であることで明らかである。
理論化のための要素
いわゆる言語の4領域は到達する目標点(十分にコミュニケーションが可能になる)までの発達に時間差がある。特に,「話す」「書く」という語の産出を伴う領域は大学生でも十分に到達していない場合もある。原因のひとつは言語の諸要素(音声,単語,文法)の何に,いつ焦点をあてるのかが曖昧だからなのだろうか。いつもすべての要素に焦点を当てるのではなく,学習する時点でできない事柄を明確にして授業を計画する必要がある。言語発達は一般的な認知発達と同種の学習メカニズムに依存している(Goswami,2008)という認識も大切で,従来の第二言語習得理論に加えて,子どもの認知発達理論からの示唆を忘れてはいけないと考える