10:00 AM - 12:00 PM
[PD39] バランスのとれた基本的心理欲求充足の検討
Keywords:自己決定理論, 基本的心理欲求,
問題と目的
Deci&Ryanの自己決定理論(以後SDT)においては,3つの基本的心理欲求(関係性の欲求,自律性の欲求,コンピテンスの欲求)の充足が,well-beingや自律的な動機づけを促進するとされている。Sheldon & Niemic(2006)は3つの基本的心理欲求充足の間でバランスがとれていることも重要であると考え,バランスのとれた欲求充足とwell-beingの関連を検討した。その結果,各基本的心理欲求の充足と同じく,バランスのとれた基本的心理欲求の充足も重要であることを示した。またDysvik et al.(2013)はバランスのとれた基本的心理欲求の充足が労働動機づけへ及ぼす影響を検討したが,バランスのとれた欲求充足が動機づけに及ぼす影響に一貫した結果は見られなかった。一方Mouratidis et al.(2015)は,バランスのとれた基本的心理欲求の充足が自律的な体育動機づけへ影響を及ぼすことを示した。本邦では,バランスのとれた基本的心理欲求充足ついて検討した研究はまだ公開されていない。本研究は,バランスのとれた基本的心理欲求充足がwell-beingと動機づけに及ぼす影響の検討を目的とする。
方 法
調査実施時期及び調査対象者 2016年4月,A大学教育学部2,3年生381名。
尺度の構成 1:BPNS-SL。Deci & Ryan(2000)の“The Basic Need Satisfaction in Life Scale”の大久保他(2003)による翻訳版を元に,西村・櫻井(2015)が作成した尺度。中学生用を大学生用に一部語句を改めた。(a)有能感4項目,(b)関係性4項目,(c)自律性4項目,計12項目4件法。2:教職学習動機づけ尺度(以下動機づけ尺度)。安藤(2005)の大学での学習動機づけ尺度14項目+「教員免許を取得しなければならないから」の計15項目,5件法。3:主観的幸福感尺度。伊藤他(2003)がSUBIをもとに作成した,主観的幸福感(well-being)を測定する尺度。全12項目4件法。
バランスのとれた欲求充足得点算出方法 Sheldon & Niemiec(2006)の算出方法を用いた。初めに3つの欲求でペアをつくり,各ペアの差の絶対値を合計しこれをAとする。次に標本中最大のAから各個人のAを引く。この値をバランスのとれた欲求充足得点する。
結果と考察
BPNS-SLは西村・櫻井(2015)の下位因子より,各下位因子項目の総和を下位因子得点とした。主観的幸福感は反転項目の処理の後,項目の総和を主観的幸福感得点とした。動機づけ尺度は因子分析(最尤法promax回転)を行い,項目1「授業の内容がおもしろそうだから」のみいずれの因子に対しても因子寄与率.30に満たないため,これを除き,再度因子分析(最尤法promax回転)を行い3因子解が適当であると判断した(累積寄与率54.72%)。SDTの動機づけの調整段階を参考に,第1因子は内的調整,第2因子は同一化的調整,第3因子は統制的調整と命名した。従属変数に,主観的幸福感と3つの動機づけ下位因子,独立変数にStep1として3つの欲求得点,Step2としてStep1に加えてバランス得点を投入した階層的重回帰分析を行った(table1)。結果バランス得点の影響はwell-beingにはみられず,動機づけの内的調整にのみ見られた。本研究において,バランスのとれた基本的心理欲求充足は一貫した影響力をもたない可能性が示唆された。
本研究はJSPS科研費16K04449の助成を受けた。
Deci&Ryanの自己決定理論(以後SDT)においては,3つの基本的心理欲求(関係性の欲求,自律性の欲求,コンピテンスの欲求)の充足が,well-beingや自律的な動機づけを促進するとされている。Sheldon & Niemic(2006)は3つの基本的心理欲求充足の間でバランスがとれていることも重要であると考え,バランスのとれた欲求充足とwell-beingの関連を検討した。その結果,各基本的心理欲求の充足と同じく,バランスのとれた基本的心理欲求の充足も重要であることを示した。またDysvik et al.(2013)はバランスのとれた基本的心理欲求の充足が労働動機づけへ及ぼす影響を検討したが,バランスのとれた欲求充足が動機づけに及ぼす影響に一貫した結果は見られなかった。一方Mouratidis et al.(2015)は,バランスのとれた基本的心理欲求の充足が自律的な体育動機づけへ影響を及ぼすことを示した。本邦では,バランスのとれた基本的心理欲求充足ついて検討した研究はまだ公開されていない。本研究は,バランスのとれた基本的心理欲求充足がwell-beingと動機づけに及ぼす影響の検討を目的とする。
方 法
調査実施時期及び調査対象者 2016年4月,A大学教育学部2,3年生381名。
尺度の構成 1:BPNS-SL。Deci & Ryan(2000)の“The Basic Need Satisfaction in Life Scale”の大久保他(2003)による翻訳版を元に,西村・櫻井(2015)が作成した尺度。中学生用を大学生用に一部語句を改めた。(a)有能感4項目,(b)関係性4項目,(c)自律性4項目,計12項目4件法。2:教職学習動機づけ尺度(以下動機づけ尺度)。安藤(2005)の大学での学習動機づけ尺度14項目+「教員免許を取得しなければならないから」の計15項目,5件法。3:主観的幸福感尺度。伊藤他(2003)がSUBIをもとに作成した,主観的幸福感(well-being)を測定する尺度。全12項目4件法。
バランスのとれた欲求充足得点算出方法 Sheldon & Niemiec(2006)の算出方法を用いた。初めに3つの欲求でペアをつくり,各ペアの差の絶対値を合計しこれをAとする。次に標本中最大のAから各個人のAを引く。この値をバランスのとれた欲求充足得点する。
結果と考察
BPNS-SLは西村・櫻井(2015)の下位因子より,各下位因子項目の総和を下位因子得点とした。主観的幸福感は反転項目の処理の後,項目の総和を主観的幸福感得点とした。動機づけ尺度は因子分析(最尤法promax回転)を行い,項目1「授業の内容がおもしろそうだから」のみいずれの因子に対しても因子寄与率.30に満たないため,これを除き,再度因子分析(最尤法promax回転)を行い3因子解が適当であると判断した(累積寄与率54.72%)。SDTの動機づけの調整段階を参考に,第1因子は内的調整,第2因子は同一化的調整,第3因子は統制的調整と命名した。従属変数に,主観的幸福感と3つの動機づけ下位因子,独立変数にStep1として3つの欲求得点,Step2としてStep1に加えてバランス得点を投入した階層的重回帰分析を行った(table1)。結果バランス得点の影響はwell-beingにはみられず,動機づけの内的調整にのみ見られた。本研究において,バランスのとれた基本的心理欲求充足は一貫した影響力をもたない可能性が示唆された。
本研究はJSPS科研費16K04449の助成を受けた。