日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PD(01-83)

ポスター発表 PD(01-83)

2017年10月8日(日) 10:00 〜 12:00 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 〜 12:00

[PD46] 制御適合はパフォーマンスを高めるのか?

日常場面の学業パフォーマンスに焦点を当てて

外山美樹1, 長峯聖人2, 湯立3, 三和秀平4, 黒住嶺5, 相川充6 (1.筑波大学, 2.筑波大学大学院・日本学術振興会, 3.筑波大学大学院, 4.筑波大学大学院 ・ 日本学術振興会, 5.筑波大学大学院, 6.筑波大学)

キーワード:制御適合, 制御焦点, パフォーマンス

 Higgins(2000)の制御適合理論によると,自己制御の志向性(制御焦点)を維持するような目標追求の方略を用いる時,人は制御適合(regulatory fit)を経験するという。先行研究(Shah et al., 1998)より,制御適合が生じると高いパフォーマンスにつながることが示されている。
 本研究では,制御焦点と学習方略が適合した時に,高い学業パフォーマンスを収めるのかどうかを検討した。促進焦点の傾向が高い人は,熱望方略の学習方略(マクロ理解方略,拡散学習方略)を用いた場合に,防止焦点の傾向が高い人は,警戒方略の学習方略(ミクロ理解方略)を用いた場合に,高い学業成績を示すという仮説を立てた。
方   法
調査対象者 大学生100名(男子49名,女子51名)。
質問紙 (1) 制御焦点尺度:尾崎・唐沢(2011)のPromotion/prevention focus scale邦訳版16項目(7件法)を用いた。促進焦点得点から防止焦点得点を減算した相対的制御焦点得点を分析に使用した。 (2) 学習方略尺度:「マクロ理解方略」,「ミクロ理解方略」,「拡散学習方略」,「暗記方略」の下位尺度から成る学習方略尺度12項目(5件法)を使用した。(3) 学習時間:授業外での学習時間を11件法で回答を求めた。(4) 学業成績の重要性:学業成績の重要性を5件法で回答を求めた。
学業成績 学期末に実施された教育心理学のテストの点数(空所補充型テスト46点満点,記述式テスト54点満点)を用いた(テストの点数を用いることは調査対象者の承諾を得た)。
結果と考察
 空所補充型テストと記述式テストの点数を各々目的変数とする階層的重回帰分析を行った。まず,第1ステップで学業成績の重要性と学習時間を統制変数として回帰式に投入した。続いて第2ステップで相対的制御焦点と学習方略の下位尺度を帰式に投入し,最後に,第3ステップで相対的制御焦点と各学習方略の交互作用項を投入した。
空所補充型テスト 第3ステップの決定係数の増分が有意であり,相対的制御焦点とミクロ理解方略の交互作用が学業成績に負の影響を及ぼしていた。単純傾斜分析の結果(Figure 1),相対的に防止焦点の傾向が高い場合には,ミクロ理解方略が学業成績に正の影響を及ぼしていた(b=1.28, β=.50, p=.00)。
記述式テスト 第3ステップの決定係数の増分が有意であり,相対的制御焦点とマクロ理解方略の交互作用が学業成績に正の影響を及ぼしていた。単純傾斜分析の結果,相対的に防止焦点の傾向が高い場合には,マクロ理解方略が学業成績に負の影響を及ぼすが(b=-0.86, β=-.29, p=.04),相対的に促進焦点の傾向が高い場合には,マクロ理解方略が学業成績に正の影響を及ぼしていた(b=1.34, β=.45, p=.02)。
 本研究の結果より,促進焦点の傾向が高い人は,マクロ理解方略を多く使用している場合に記述式テストにおいて高い学業成績を収め,防止焦点の傾向が高い人は,ミクロ理解方略を多く使用している場合に空所補充型テストにおいて高い学業成績を収めていることが示された。