10:00 AM - 12:00 PM
[PD47] 目的養成学部における学生の進路選択と大学環境への適応
Keywords:適応, 進路選択, 目的養成
問題と目的
教員養成学部や医学部等の目的養成学部は,教職や医療職に向けて計画的に養成するためのカリキュラムが構成されており,大学進学が就職と強く結びついている。この特殊性から,目的養成学部の学生の意識に関する研究は数多く行われており,こうした研究では教員志望率の向上や看護学生の看護に対する意欲向上が課題となっている(大久保・有馬・柳澤・山岸・野崎・松井・山下・山下・大西, 2012 ; 野村・森田・山村, 2013)。ただし,これらの研究は学生の教職や医療職への志望率を上げるという大学側からの視点であり,学生の意識をあまり考慮していないといえる。
目的養成学部の学生の進路選択に関する研究では,進路決定プロセス(本多・落合, 2004)の違いや大学卒業後の進路の未決定や決定の遅延(若松, 2001 ; 若松, 2004),教職の選択・棄却(若松, 2013)に焦点が当てられ,進路を選択している者は進路決定者としてひとくくりになっていた。選択した進路に実際になりたいと思っているかについては考慮されておらず,皆がなりたいと思って進路を選択していることが前提となっているが,目的養成学部には周囲の影響や進路変更の困難さ等から,その専門職になりたくないと思っていても就く者が多いことが想定される。そこで本研究では,専門職になりたいかなりたくないかという「専門職への希望の有無」と,専門職になるかならないかという「専門職の選択・棄却」との2つの軸から4群に分類して検討を行うこととした。
以上を踏まえ,本研究では,目的養成学部の学生における専門職への希望の有無および専門職の選択・棄却による進路選択の方法と心理的欲求充足,大学環境への適応感,抑うつとの関連を検討することを目的とする。
方 法
調査対象者 教育学部教員養成課程の学生151名,医学部医学科の学生132名,医学部看護学科の学生82名。教員養成課程及び看護学科の学生は3,4年生,医学科は5,6年生を対象とした。
質問紙の構成 ①フェイスシート:性別,年齢,学年,学部,学科および課程を尋ねた。②専門職への希望の有無と専門職の選択・棄却による進路選択方法:課程・学科ごとに専門職に「なりたくてなる」,「なりたくないけどなる」,「なりたいけどならない」,「なりたくなくてならない」のうち最も近いと思う項目を選択するよう求めた。③大学環境における心理的欲求充足:大久保・長沼・青柳(2003)の心理的欲求充足尺度を用いた。④大学環境への適応感:大久保・青柳(2003)の大学生用適応感尺度を用いた。⑤抑うつ:福田・小林(1973)のSDS自己評価式抑うつ尺度を用いた。
結果と考察
課程・学科による進路選択方法の検討 課程・学科ごとの進路選択方法の割合を検討するため,カイ二乗検定を行った。なお,非選択群にあてはまる者は調査対象者の中で5名しかいなかったため,分析対象から除外した。カイ二乗検定の結果,有意差(χ2=86.029, p<.001)が認められたので,残差分析を行ったところ,教職課程では進路変更群が多く,医学科では進路適合群が多く,看護学科では非希望群が多いことが明らかとなった。
進路選択方法による心理的欲求充足,大学環境への適応感,抑うつの検討 進路選択方法を独立変数とした1要因の分散分析を行った。関係性への欲求充足,自律性への欲求充足,コンピテンスへの欲求充足,居心地の良さの感覚,被信頼感・受容感,課題・目的の存在得点,抑うつ得点において有意差が認められたのでTukey法による多重比較を行った。その結果,概して,心理的欲求充足および大学環境への適応感において,進路適合群が最も高く,次いで進路変更群,非希望群の順に高いことが明らかとなった。また,抑うつにおいて,非希望群と進路変更群が進路適合群よりも高いことが明らかとなった。
進路選択方法による心理的欲求充足,大学環境への適応感,抑うつの関連の検討 心理的欲求充足が大学環境への適応感,抑うつに及ぼす影響について,進路選択方法(進路適合群,非希望群,進路変更群)ごとに検討するため,パス解析を行った。その結果,進路適合群においては, 心理的欲求充足の3因子全てから課題・目的の存在に正の影響を与え,課題・目的の存在から抑うつに負の影響を与えていた。非希望群においては,心理的欲求充足や大学環境への適応感から抑うつに影響を与えていなかった。進路変更群においては,関係性への欲求充足から拒絶感の無さに正の影響を与え,拒絶感の無さから抑うつに負の影響を与えていた。以上の結果から,進路選択方法によって心理的欲求充足から適応,抑うつへの影響が異なることが明らかとなった。
教員養成学部や医学部等の目的養成学部は,教職や医療職に向けて計画的に養成するためのカリキュラムが構成されており,大学進学が就職と強く結びついている。この特殊性から,目的養成学部の学生の意識に関する研究は数多く行われており,こうした研究では教員志望率の向上や看護学生の看護に対する意欲向上が課題となっている(大久保・有馬・柳澤・山岸・野崎・松井・山下・山下・大西, 2012 ; 野村・森田・山村, 2013)。ただし,これらの研究は学生の教職や医療職への志望率を上げるという大学側からの視点であり,学生の意識をあまり考慮していないといえる。
目的養成学部の学生の進路選択に関する研究では,進路決定プロセス(本多・落合, 2004)の違いや大学卒業後の進路の未決定や決定の遅延(若松, 2001 ; 若松, 2004),教職の選択・棄却(若松, 2013)に焦点が当てられ,進路を選択している者は進路決定者としてひとくくりになっていた。選択した進路に実際になりたいと思っているかについては考慮されておらず,皆がなりたいと思って進路を選択していることが前提となっているが,目的養成学部には周囲の影響や進路変更の困難さ等から,その専門職になりたくないと思っていても就く者が多いことが想定される。そこで本研究では,専門職になりたいかなりたくないかという「専門職への希望の有無」と,専門職になるかならないかという「専門職の選択・棄却」との2つの軸から4群に分類して検討を行うこととした。
以上を踏まえ,本研究では,目的養成学部の学生における専門職への希望の有無および専門職の選択・棄却による進路選択の方法と心理的欲求充足,大学環境への適応感,抑うつとの関連を検討することを目的とする。
方 法
調査対象者 教育学部教員養成課程の学生151名,医学部医学科の学生132名,医学部看護学科の学生82名。教員養成課程及び看護学科の学生は3,4年生,医学科は5,6年生を対象とした。
質問紙の構成 ①フェイスシート:性別,年齢,学年,学部,学科および課程を尋ねた。②専門職への希望の有無と専門職の選択・棄却による進路選択方法:課程・学科ごとに専門職に「なりたくてなる」,「なりたくないけどなる」,「なりたいけどならない」,「なりたくなくてならない」のうち最も近いと思う項目を選択するよう求めた。③大学環境における心理的欲求充足:大久保・長沼・青柳(2003)の心理的欲求充足尺度を用いた。④大学環境への適応感:大久保・青柳(2003)の大学生用適応感尺度を用いた。⑤抑うつ:福田・小林(1973)のSDS自己評価式抑うつ尺度を用いた。
結果と考察
課程・学科による進路選択方法の検討 課程・学科ごとの進路選択方法の割合を検討するため,カイ二乗検定を行った。なお,非選択群にあてはまる者は調査対象者の中で5名しかいなかったため,分析対象から除外した。カイ二乗検定の結果,有意差(χ2=86.029, p<.001)が認められたので,残差分析を行ったところ,教職課程では進路変更群が多く,医学科では進路適合群が多く,看護学科では非希望群が多いことが明らかとなった。
進路選択方法による心理的欲求充足,大学環境への適応感,抑うつの検討 進路選択方法を独立変数とした1要因の分散分析を行った。関係性への欲求充足,自律性への欲求充足,コンピテンスへの欲求充足,居心地の良さの感覚,被信頼感・受容感,課題・目的の存在得点,抑うつ得点において有意差が認められたのでTukey法による多重比較を行った。その結果,概して,心理的欲求充足および大学環境への適応感において,進路適合群が最も高く,次いで進路変更群,非希望群の順に高いことが明らかとなった。また,抑うつにおいて,非希望群と進路変更群が進路適合群よりも高いことが明らかとなった。
進路選択方法による心理的欲求充足,大学環境への適応感,抑うつの関連の検討 心理的欲求充足が大学環境への適応感,抑うつに及ぼす影響について,進路選択方法(進路適合群,非希望群,進路変更群)ごとに検討するため,パス解析を行った。その結果,進路適合群においては, 心理的欲求充足の3因子全てから課題・目的の存在に正の影響を与え,課題・目的の存在から抑うつに負の影響を与えていた。非希望群においては,心理的欲求充足や大学環境への適応感から抑うつに影響を与えていなかった。進路変更群においては,関係性への欲求充足から拒絶感の無さに正の影響を与え,拒絶感の無さから抑うつに負の影響を与えていた。以上の結果から,進路選択方法によって心理的欲求充足から適応,抑うつへの影響が異なることが明らかとなった。