10:00 AM - 12:00 PM
[PD50] 接近・回避コミットメントの特異項目機能および関係継続に対する予測力の検討
Keywords:コミットメント, 恋愛関係
問 題
「関係を維持しようとする動機づけ」であるコミットメントは,恋愛関係の維持を強く予測する要因である(Le et al., 2010)。近年では,従来一次元として扱われてきたコミットメントを複数の次元から捉える実証研究が増えてきている(e.g., Johnson, 1999; Knopp et al., 2015)。コミットメントの次元分類に関しては様々な枠組みが提案されているが,その中の一つに接近・回避コミットメントがある。接近・回避コミットメントは,コミットメントを「関係継続と関連する報酬への接近目標」である接近コミットメントと「関係崩壊と関連する罰からの回避目標」である回避コミットメントに分類する枠組みであり,分類の理論的基盤を有していることや動機づけ理論や目標理論との親和性が高いことが評価されている(Rusbult et al., 2006)。接近・回避コミットメントの尺度は古村(2014)によって開発され,妥当性検証が行われている。しかし,その項目内容が恋人に特化しているため,恋愛以外の関係性(夫婦,友人など)に適用できないことや関係維持に対する予測的証拠が検討されていないことが問題点として存在する。そこで本研究は,古村他(2016)などで用いられている改訂版接近・回避コミットメント尺度の妥当性検証を行うため,性別による特異項目機能(以下,DIF)と関係継続に対する予測力を検討する。
方 法
質問紙調査およびwebパネル調査で回答が得られた,調査実施時点で恋人のいた1135名(平均年齢23.2歳,SD=3.87,男性508名,女性627名)を分析対象とした。分析対象のうち,461名(維持426名,崩壊35名)は3ヶ月後に関係が維持されているかの回答が得られた。
結 果
特異項目機能の検討 性別を下位集団とし,DIFが存在するかを検討するため,段階応答モデルを採用した項目反応理論による分析を行った(Table 1)。分析にはEasyDIF(熊谷, 2012)を使用した。その結果,全項目で指標Kが熊谷(2003)によって提案された(カテゴリ数-1)×0.1(本研究では0.6)を下回っていた。したがって,本研究において,性別によるDIFは存在しないと考えられる。なお,接近コミットメントおよび回避コミットメントの男女の得点差を検討した結果,接近コミットメントは,男性よりも女性の得点が高かったものの,その効果量はCohenの基準に照らし合わせれば小さいものであった(t (1127) = 2.97, p =.00, d = 0.18, 95%CI[0.06, 0.29])。一方,回避コミットメントに男女の得点差は示されなかった(t (1127) =-1.58, p=.11, d=-0.09, 95%CI[-0.21, 0.02])。コミットメントの得点が女性の方が高いことは先行研究でも指摘されており(e.g., Adams & Jones, 1999),本研究の結果もそれに整合するものもであった。
関係継続に対する予測力 接近コミットメントおよび回避コミットメントが3ヶ月後の関係維持を予測できるかを検討するため,関係維持(維持=1,崩壊=0)を目的変数としたロジスティック回帰分析を行った。この際,性別と交際期間を統制変数として投入した。その結果,接近コミットメントは有意に関係維持を予測したものの,回避コミットメントは予測しなかった。したがって,接近コミットメントのみが関係維持に対する予測力を有することが明らかになった。ただし,本研究のサンプルは関係が維持されていた人に偏っている点には留意が必要である。また,回避コミットメントは関係の危機的状況や転換期(進学や就職など)といったタイミングで関係維持を予測する可能性(Lydon et al., 1997)がある。この点について,さらなる検討が必要である。
「関係を維持しようとする動機づけ」であるコミットメントは,恋愛関係の維持を強く予測する要因である(Le et al., 2010)。近年では,従来一次元として扱われてきたコミットメントを複数の次元から捉える実証研究が増えてきている(e.g., Johnson, 1999; Knopp et al., 2015)。コミットメントの次元分類に関しては様々な枠組みが提案されているが,その中の一つに接近・回避コミットメントがある。接近・回避コミットメントは,コミットメントを「関係継続と関連する報酬への接近目標」である接近コミットメントと「関係崩壊と関連する罰からの回避目標」である回避コミットメントに分類する枠組みであり,分類の理論的基盤を有していることや動機づけ理論や目標理論との親和性が高いことが評価されている(Rusbult et al., 2006)。接近・回避コミットメントの尺度は古村(2014)によって開発され,妥当性検証が行われている。しかし,その項目内容が恋人に特化しているため,恋愛以外の関係性(夫婦,友人など)に適用できないことや関係維持に対する予測的証拠が検討されていないことが問題点として存在する。そこで本研究は,古村他(2016)などで用いられている改訂版接近・回避コミットメント尺度の妥当性検証を行うため,性別による特異項目機能(以下,DIF)と関係継続に対する予測力を検討する。
方 法
質問紙調査およびwebパネル調査で回答が得られた,調査実施時点で恋人のいた1135名(平均年齢23.2歳,SD=3.87,男性508名,女性627名)を分析対象とした。分析対象のうち,461名(維持426名,崩壊35名)は3ヶ月後に関係が維持されているかの回答が得られた。
結 果
特異項目機能の検討 性別を下位集団とし,DIFが存在するかを検討するため,段階応答モデルを採用した項目反応理論による分析を行った(Table 1)。分析にはEasyDIF(熊谷, 2012)を使用した。その結果,全項目で指標Kが熊谷(2003)によって提案された(カテゴリ数-1)×0.1(本研究では0.6)を下回っていた。したがって,本研究において,性別によるDIFは存在しないと考えられる。なお,接近コミットメントおよび回避コミットメントの男女の得点差を検討した結果,接近コミットメントは,男性よりも女性の得点が高かったものの,その効果量はCohenの基準に照らし合わせれば小さいものであった(t (1127) = 2.97, p =.00, d = 0.18, 95%CI[0.06, 0.29])。一方,回避コミットメントに男女の得点差は示されなかった(t (1127) =-1.58, p=.11, d=-0.09, 95%CI[-0.21, 0.02])。コミットメントの得点が女性の方が高いことは先行研究でも指摘されており(e.g., Adams & Jones, 1999),本研究の結果もそれに整合するものもであった。
関係継続に対する予測力 接近コミットメントおよび回避コミットメントが3ヶ月後の関係維持を予測できるかを検討するため,関係維持(維持=1,崩壊=0)を目的変数としたロジスティック回帰分析を行った。この際,性別と交際期間を統制変数として投入した。その結果,接近コミットメントは有意に関係維持を予測したものの,回避コミットメントは予測しなかった。したがって,接近コミットメントのみが関係維持に対する予測力を有することが明らかになった。ただし,本研究のサンプルは関係が維持されていた人に偏っている点には留意が必要である。また,回避コミットメントは関係の危機的状況や転換期(進学や就職など)といったタイミングで関係維持を予測する可能性(Lydon et al., 1997)がある。この点について,さらなる検討が必要である。