The 59th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

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ポスター発表 PD(01-83)

ポスター発表 PD(01-83)

Sun. Oct 8, 2017 10:00 AM - 12:00 PM 白鳥ホールB (4号館1階)

10:00 AM - 12:00 PM

[PD52] 貧困に対する意識調査

保育士を目指す学生は貧困をどのように認識しているか

亀山洋光1, 亀山麻衣子#2 (1.ほーぷ株式会社, 2.ほーぷ株式会社)

Keywords:貧困, 保育士, 意識

背景と目的
 保育現場で貧困の問題や課題を感じる場面に遭遇したとき,市町や保育所,保育士によっても,どのように対応するかは違いがある。特に,前提として保育士が貧困をどのように認識するかによって対応が変化すると考える。そのため本研究では従来からある行政や先行研究にある貧困の定義に着目するのではなく,保育士を目指す学生が貧困をどのように認識しているかを明らかにすることによって,保育現場や養成校での教育の一助となることを目的とする。
定   義
 本研究での貧困とは,調査対象者が主観で認識する貧困に着目したものである。よって,行政や多くの先行研究で用いられている絶対的貧困,相対的貧困を指すものではない。
方   法
 2017年5月1日A県B短期大学の学生23人を対象とした。
 調査の方法はアンケート用紙を用いて行った。アンケートは無記名とし,内容は年齢,性別,実習経験の有無とその期間,アルバイト・就職経験の有無とその期間,貧困に対する設問を自由記載,複数回答可として回答を得た。
 自由記載された結果から要因を抽出しKJ法によって小項目,中項目,大項目と分類化した。大項目のカテゴリー名は,選択理論心理学で提唱される,基本的5つの欲求を参考にした。
結   果
 対象者の平均年齢は20歳,性別は女性23人,男性0人,実習経験は経験あり23人,経験なし0人であった。
 設問1の「あなたが考える貧困の条件は」では,小項目69項目,中項目11項目,大項目5項目が抽出された。
 設問2の「貧困が原因だと思われるエピソードがあれば記入してください」では,小項目62項目,中項目9項目,大項目5項目が抽出された。
 設問3の「貧困に対してどの様な制度やサービスがあれば問題が緩和又は解決されると思いますか」では,小項目58項目,中項目7項目,大項目5項目が抽出された。
 大項目の割合について設問1では「生存の欲求」41%,「愛・所属の欲求」12%,「職業仕事の欲求」9%,「経済的欲求」30%,「教育の欲求」9%となった。設問2では「生存の欲求」52%,「愛・所属の欲求」3%,「職業仕事の欲求」3%,「経済的欲求」26%,「教育の欲求」16%となった。設問3では「生存の欲求」22%,「愛・所属の欲求」16%,「職業仕事の欲求」16%,「経済的欲求」29%,「教育の欲求」17%となった。
考   察
 学生が認識する貧困の条件やエピソードでは,「生存の欲求」に関する内容が多く出てくるが,課題解決のために必要な制度やサービスとなると,経済的支援が上位となり,保育現場においては直接的な解決の糸口となりづらいことが明らかになった。また,経済的支援の内容は,給食,教育,医療,保育料等の補助金や無償化といった給付項目が多く,さらに「職業仕事の欲求」の中でも長期的な支援が必要とされやすく,行政や自治体にゆだねなければ対応できない項目もあり,保育士の業務では対応が困難であることが明らかになった。
 これらのことから今後は,保育士を目指す学生が現場で貧困と思われる課題に遭遇したとき保育士としてどのように支援していけるのか,保育士の役割について今後より明らかにしていくことが必要と考えられる。